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《「大人の発達障害」最新事情》“安易な自己診断”や“疑似発達障害”に注意 重要なのは特性をなくすことではなく「特性を認めたうえでどう生きづらさを減らせるか」

安易な自己診断や疑似発達障害には注意が必要だ(写真/PIXTA)
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 落ち着きがない、忘れ物が多い、マルチタスクがこなせない、周囲となじめない──そんな生きづらさや対人トラブルの背景には、発達障害という特性が隠れているのかもしれない。かつては子供の疾患として捉えられてきたが、近年ようやく認められてきた「大人の発達障害」。急速に進む研究で明らかになってきたその“正体”とは。最新事情を追った。【全3回の第3回。第1回から読む

根治しない発達障害も環境と工夫で「生きやすく」なる

 大人の発達障害の認知が進むのは好ましい半面、安易な自己診断が広がるデメリットが指摘されている。司馬クリニック院長の司馬理英子さんが語る。

「発達障害の要因は複雑で、チェックリストで簡単に自己診断できるものではありません。“発達障害ではない”と自己診断すると本来必要な治療を受けられないかもしれず、逆に“発達障害だ”と思い込むと過剰反応で心身の負担が増す。双方とも生きづらさが強まってしまいます。チェックリストではADHDという結果でも、実際に医師が診断すると統合失調症や人格障害だったというケースもあります」

 チェックリストはあくまで「きっかけ」のひとつ。発達障害が疑われる場合は、精神科などで診断を受けることを心がけたい。

 一般的に発達障害の診断では幼少時を中心に患者の状況を聞き取り、適宜、発達検査やカウンセリングなどを行って当人の特性を理解し、共有していく。注意したいのは「疑似発達障害」だ。岡田クリニック院長で精神科医の岡田尊司さんが語る。

「虐待を受けたり、親に見捨てられたりなどの不適切な養育要因によって人との絆をつくる愛着形成が破綻すると、対人関係や情緒面、社会的発達に問題が生じます。『愛着障害』と呼ばれるこうした状態は発達障害と症状が似ていて混同されやすいのですが、原因が異なるので対処法が異なります。子供の頃は発達に問題がないのに大人になってから症状が出る場合、愛着障害が混じっていることがかなり多い。医師の間でも理解が進んでおらず、誤って発達障害と診断されているケースも多いのが実情です」

 誤診や不適切な処置を避けるには医師選びが肝心。多くの専門家は、患者の話を丁寧に聞き、信頼関係が築けそうな医師をすすめる。山口大学名誉教授で臨床心理士の木谷秀勝さんが語る。

「医師によってはゆっくり話を聞かず、根本的な発達障害を見過ごして、目に見える症状だけにフォーカスし、薬のみを処方するような事例も聞きます。

 患者の話をしっかり聞き、寄り添って今後の治療方法を考えてくれる医師を見つけましょう」

 発達障害の治療法は多岐にわたるが、ADHDには治療薬もある。

「覚醒作用があり注意力や集中力を上げるタイプ、脳の前頭葉の機能を高めるタイプ、多動や衝動性を抑えるタイプの3種類の薬が使われます。

 根本的に治すことはできませんが、症状を抑えて生活上の支障を減らすのに効果的です」(岡田さん) 

 薬物療法のほかに、発達障害に由来する自分の特性に応じて「環境」を調整することでも症状を改善できる。

「発達障害の特性のひとつは聴覚過敏で、脳による調整が効かず耳がさまざまな騒音や雑音を拾ってしまって生活に困難が生じます。この場合、ノイズキャンセリングイヤホンをつけて音を遮断するなどの工夫で生活しやすくなります」(司馬さん)

自らの特性を理解し、周囲の協力のもと環境を調整することが重要(写真/PIXTA)
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 記憶力を維持するのが苦手なら「ToDoリスト」を部屋の目につくところに貼り、スマホのリマインダー機能を使ってスケジュールを調整する。しゃべり言葉のコミュニケーションで情報をうまくキャッチできなければメールでのやり取りを主体にするなど、さまざまなライフハックを駆使しながら受診やカウンセリングを並行すると、心身の負担を軽減できる。

 司馬さんの知るADHDの患者は、職場を変えることで回復への道を歩んだ。

「ADHDは集中力が継続せず、脳内で複数の情報を処理することが苦手で、どの作業を先に進めればいいかわかりません。このかたはさまざまな仕事を同時進行する部署で失敗が多く暗澹としていましたが、マルチタスクを求められない業務の会社に転職すると仕事が楽しくなったそう。このように特性があっても自分の能力を発揮できる仕事や生き方を見つけることが大切です」(司馬さん)

 発達障害の治療効果には個人差があり、もともと脳機能の問題ゆえ完治はない。重要なのは、その人がいかに社会に適応して生きられるかを模索することだ。昭和医科大学烏山病院発達障害医療研究所所長の太田晴久さんが指摘する。

「発達障害の診療の究極の目的は特性をなくすことではなく、特性を認めたうえでどう生きづらさを減らせるのかを探ることです。コミュニケーションが苦手でもひとつのことには徹底的に打ち込めるなど、発達障害の特性はマイナスだけでなくプラスの面もある。そうした特性を生かして自分なりのコミュニケーションの取り方を身につけ、自己評価を下げることなく社会とうまく折り合うことが大切です」

 2024年にASDとADHDを公表したお笑いタレントのエハラマサヒロさん(44才)は誤解されることも多い中で、「最初の一言」を心がけているという。

「自分は落ち着きがなく態度を悪くみられて印象も悪いことがわかっているので、最初から『ごめん、おれめっちゃ多動やねん』と周囲に声をかけています。発達障害の特性を受け入れ、それを周囲に伝えることで、だいぶストレスが軽減されています」(エハラさん)

 発達障害と共存する第一歩は“己を知って受け入れる”こと。それには周囲の協力が欠かせない。

「自分の特性を受け止め、どのような環境なら無理しすぎることなく生きられるかを考えて、実際に環境を調整することが大切です。ただし本人がその特性に気づかず頑張りすぎるなどで二次障害を引き起こすケースも多いので、家族や友人、同僚が気づいてサポートすることが重要です。そのうえで適切な治療につなげて、本人が少しでも生きやすくなることが理想でしょう」(太田さん)

 本人と周囲が特性を理解し、受け入れること。それが「生きづらさ」を和らげる一歩となる。

主な発達障害の症状
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過剰適応の3段階
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(第1回から読む)

※女性セブン2026年6月18日号