
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第9話:「闇雀荘 アイソ」の話【前編】
「医者になって家を継ぐ気はあるの?」
当時中学3年生だったシヅの弟が答える。
「絶対に医者にはなりたくない」
──結婚は無理か。
期待とは違う答えに克弥は半ば諦めかけたが、シヅはむしろムキになった。
「あなたが病院を継がなければ家は途絶えるのよ! それでもいいの?」
「だったら姉ちゃんが継げばいいじゃん」
「男が継ぐのが相場って決まってんのよ!」
シヅが机を叩く音が山に響いた。
この後、シヅは弟に3年間に及ぶ徹底的な圧力をかけ続けた。この脅迫と洗脳のおかげで、何の罪もない弟はついに心が折れて医学部に入学した。久々に会った弟の顔が別人のように変わり果てていたのを見て、克弥は思い知ったのである。
──シヅさんには決して逆らってはいけない。

こうして障害を取り払った二人は大学卒業とともに結婚した。名古屋市内でも一色町でも盛大な式を挙げた後、東京に戻って来ると克弥は一枚の絵をシヅに渡した。シヅの肖像画である。
「これ、結婚の記念に。生まれて初めて描いた肖像画なんだ」
シヅは自分だという絵をじっと見て、一言言った。
「似てないわね」
「だよねー」
──シヅさんには決して逆らってはいけない。
克弥は学びをすぐに活かした。
* * *
国家試験に合格した二人は医師となり、克弥は大学院に進み、シヅは昭和医大病院で産婦人科医として働き始めた。大学の目の前にマンションを借り、やがてシヅは妊娠した。
身重の体で勤務していると、そこに克弥の同僚の医局員がやってきて「高須はどこか?」と聞かれる。雀荘にいることは100%なのだが、それを言う訳にもいかない。シヅにとってはえらく迷惑な話である。
克弥は当時、特注のスタンドカラーのジャケットを着ていた。表は普通だが裏返すと白衣になるリバーシブルタイプで、いつでもすぐに医者になれる。これで雀荘と医局を行き来していたのだが、流石にシヅに「迷惑だ」と言われては続けられない。
──病院内に麻雀ルームがあれば最高なんだけどな。音が漏れない、いい所ないかな?(中編につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年8月13日号