
加齢とともに髪のボリュームダウンや、分け目の広がり、生え際の後退などの悩みが増える中、注目されているのが頭皮アートメイクだ。ウィッグや植毛で“髪の量を増やす”のではなく、地肌を目立たなくして“透け感”をなくす施術の実力をリアルレポート。
広がる分け目や生え際の救世主
これまで加齢に伴う髪の悩みを解決するのはウィッグなどが一般的だったが、アートメイクは頭皮に毛根のような点を描いて、密度を補う新たな治療だ。
生え際の薄さが気になり始めた記者(50代)が訪れたのは、症例数8000件以上を誇る「新宿クレアクリニック」。カウンセリングシートを記入し、看護師資格のあるスタッフによるカウンセリングを受け、仕上がりのイメージを見ながら行う部位を決めていく。
来院者は40~50代が多く、ホルモンバランスの変化で薄毛が気になり出す人も多いという。記者もご多分にもれず、生え際の後退が予想以上に進んでいたため、5×5cm(25平方センチメートル)の範囲をすすめられた。料金は3回で11万8000円と少々高め…。
思い切って施術を希望すると、クリニック院長の佐上徹さんの診察に進む。
「既往歴や内服薬、アレルギー歴、皮膚の状態を確認し、施術を行っていい状態かどうかを判断します。治療中の病気があるかたは、保険診療を優先していただくケースもあります」(佐上さん・以下同)
最近は美容サロンで頭皮アートメイクを行うところもあるが、「深く入りすぎてにじんでしまった」「数日で色が抜ける」といったトラブルも報告されている。
こうした深度の管理ミスや色抜けのトラブルを避けるためにも、医療環境での施術が安心だ。
「肌の新陳代謝により個人差はありますが、3回の施術が終われば2~3年程度持続します。時間が経つと薄くなるので、回数を重ねるかたが多いですね」
初診時の流れを見ていこう!
【1】カウンセリングシートに記入

薄毛の悩みや気になる箇所、生活習慣などを記入する。
【2】看護師のカウンセリング
注意点の確認や、症例写真で仕上がりのイメージを共有。

【3】シートで施術部位を測る
定規とマス目で範囲を測定し、施術部位を決める。

【4】医師のカウンセリング
既往歴や皮膚の状態などを確認し、施術の可否を判断。

【5】いざ施術!
生え際は浅く、分け目はやや深めに入れるなど部位ごとに微調整。施術の感覚はボールペンで軽くトントンされる程度で、痛みはほぼない。

頭皮のすき間を自然にぼかす精密技術とは?
多くの医療アートメイクのクリニックが使用するのは、専用の医療機器「FIXER」。アートメイク先進国である韓国で開発され、均一なドットを打てる精度の高さが特長だ。新宿クレアクリニックの施術担当看護師・玉木佑奈さんが説明する。
「このマシンにはストッパー機能があり、針は設定した深さ以上に入らないよう、色素は表皮の真皮上層(0.55~1.5mm程度)にとどまるよう制御されています。真皮より下に入るとにじみや変色の原因になりますが、FIXERなら毎回同じ深さで色素が入るため定着がよく、にじみや変色のリスクも少ない。スピーディーに着色できて痛みもほとんどありません。また、針先が非常に細いため、微細なドットを重ねて毛根の質感をグラデーションで再現でき、自然な仕上がりになりやすいのです。生え際も線(ヘアストローク)ではなく、点を重ねていきます。線は深く入りやすく、にじみの原因になるため用いません」
FIXERは針が上下に安定して動くため、 均一なドットを打ちやすく、 密度のムラも出にくい。
施術は、色を入れる頭皮の部位の最終確認から始まり、部位ごとに適した深さで色素を入れていく。
「生え際は深さ0.55~0.6mmほどの浅い位置で毛流れを生かしながら細かく点を重ねていきます。分け目は0.9~1mm、頭頂部とつむじは1~1.5mmほどと細かな調整によって、部位ごとの毛穴の見え方を自然に再現できるので、密度のムラが出にくい仕上がりになります」(玉木さん・以下同)
針は太さの異なる、一本針(0.4mm)と三本針(0.25mm×3)を使い分け、生え際など細かい調整が必要な部位は一本針、頭頂部やつむじなど広い範囲は、三本針で面を均一に整えながら入れていく。
「初回の色の定着率は30~40%ほどで、2回目は70~80%、3回目で90~100%となります。密度を上げて一度に濃くすると、ドットがシミのような“面”に見えてしまうため、薄く重ねて段階的に密度を整えることが重要です」
施術時間は、生え際(5×5cmの両サイド)であれば1時間半程度、頭頂部は2時間~2時間半、分け目も同程度だ。料金は、10平方センチメートルであれば2回で4万8000円が目安となり、施すサイズや回数によって異なる。
「色素はブラック単色ですが、細かい点を重ねて密度を上げるため、茶髪でも浮くことはありません。至近距離でも“描いた感”が出ず、既存の毛穴になじむ質感になるんです。
施術直後は薄く感じますが、2~3日で発色してくるため、地肌の白さが和らぎ、髪の間にほんのり影が生まれます」

髪の薄さをどう補う?
髪のボリューム感を補う方法には、頭皮アートメイクのほか、植毛、ウィッグなどがある。「見た目のナチュラルさ」「即効性」「費用」「ダウンタイム」「メンテナンス」の5つの観点から比較してみよう。
植毛
自分の毛を移植する医療行為。後頭部などの毛を採取し、薄い部分に植え付ける方法。定着すれば自分の髪として生え続けるため、見た目が自然な仕上がりに。
ウィッグ
装着するだけでボリュームがでる。手軽だが日常的なメンテナンスが必要で、装着方法により浮くこともある。製品の質や固定の仕方などにより自然さに差が出やすい。

頭頂部の薄さが自然にカバーできました
産後に頭頂部の薄さが気になり始めて、思いきってチャレンジしました。施術直後でも分け目が不自然に濃くならず、回数を重ねるごとに濃くなるため人目も気になりません。翌日から髪も洗え、朝のスタイリングも時短になって助かっています。(Yさん・30代)

1回目、225平方センチメートルという広範囲を施術。頭頂部の印象を整える。2回目、分け目から見える地肌の範囲が狭くなった。3回目、頭頂部全体の濃さが均一に。毛量も増えた印象だ。

上から見られても気にならない
人に会う機会が多いため、薄毛が気になり始めた40代後半はフルウィッグを使用していたのですが、違和感が気になり、頭皮アートメイクを決意。施術中に痛みを感じることもなく、寝てしまうほど。施術直後はつむじまわりがやや濃く見えたものの、数日で自然になじみました。(Tさん・50代)

1回目、施術範囲は50平方センチメートル。つむじまわりの密度を調整する。2回目、まだ薄さが気になるが、気になる範囲が小さくなった。3回目、つむじの薄毛がほぼ気にならない状態に。

治療では補えない部分が整った
20代で薄毛が気になり始め、発毛治療を続けてきましたが効果を感じられず、毎日パウダーや帽子で隠していました。頭皮アートメイク後は分け目が自然にカバーされ、パウダーも不要に。3回目の1週間後にはパーマをかけて、ヘアアレンジも楽しめています。(Wさん・40代)


1回目、施術範囲は100平方センチメートル。目立つ分け目部分にドットを入れる。2回目、施術中の痛みはなく、うとうとしているうちに終わる。3回目、至近距離で見ないとわからないほどナチュラル。
頭皮アートメイクの素朴な疑問
Q.白髪や金髪でもできますか?
A.「白髪や金髪は黒の色素とコントラストが強く出るため難しいですが、茶髪やグレーヘアは影として自然になじみます」(玉木さん・以下同)
Q.発毛に悪影響はありますか?
A.「針を刺す位置は皮膚の真皮上層まで。毛根がある深い層(皮下組織付近)までは届かないため、発毛への影響はありません」
Q.MRI検査は受けられますか?
A.「色素はオーガニックインクで、成分はグリセリン、精製水、カーボン、酸化鉄。酸化鉄は多いとMRIで反応する可能性がありますが、含有量は0.9%以下のため安全に受けられます」
Q.美容院で気づかれませんか?
A.「至近距離でじっくり見れば気づく場合もありますが、通常ではほとんどわかりません」
Q.クリニックはどう選べばいい?
A.「医師が在籍し、看護師資格を持つ施術者がいること。衛生管理が整い、症例数が多いことも重要です。設定料金が極端に安い施設は技術が不足している可能性も」
◆教えてくれたのは:新宿クレアクリニック
頭皮アートメイクは医師の監督下、専門のトレーニングを行った看護師が施術。症例数は8000件以上。東京都渋谷区代々木2-13-5 KT新宿ビル7F
取材・文/藤岡加奈子 撮影/浅野剛(取材分)
※女性セブン2026年8月13日号