医師・薬剤師が警鐘“サプリメントのリスク” コラーゲン、酵素、ヒアルロン酸など…医学的な効果が証明されていないものが多数 「天然由来だから安心」の過信も禁物

ドラッグストアやコンビニで誰でも気軽に購入できるサプリメント。しかし、体によかれと思ってのみ続けているサプリの中には、効果が得られないばかりか、かえって健康を損なうものもある。あなたがのんでいるその1粒は、本当に安全だろうか──。
サプリメント・健康食品の市場規模はここ数年、1兆円を超える数字で推移しており、健康長寿を願う人たちの大きな需要がうかがえる。薬とは異なり「誰でも」「手軽に」購入することができるサプリメントは食事だけでは不足しがちな栄養や、体の不調を改善するためなどを目的に老若男女の日常に欠かせないものとなってきている。一方で、市場規模の拡大とともに、副作用や健康被害などの報告も増加。安易な習慣化や、過度な摂取には警鐘が鳴らされ、製造過程の不透明さや添加物など安全性への疑問も指摘されている。
薬剤師の三上彰貴子さんが指摘する。
「これまで『サプリメント』には法的な定義がなく、基本的には一般の食品と同じ扱いでした。そのため製造過程における厳密なルールがなく、メーカーによって品質にばらつきがあった。実際、製造段階で別の製品の成分が混入したり、意図しないカビが発生して有害な化合物が生成されたりするケースも起きています」
これまで企業任せになっていた品質管理に対し、国も対応に動き出した。
7月22日には、厚労省と消費者庁が、サプリの定義を定め、一定の品質を保つ製造規格「GMP(適正製造規範)」の義務化や、健康被害の報告義務など、法改正に向けた原案を食品衛生監視部会に示し、大筋で了承を得たことが注目されている。
だが、米ボストン在住で内科医の大西睦子さんは、GMPだけでは安全性を担保できないと指摘する。
「GMPはあくまで、一定の品質で製造するためのルールです。製造過程での不純物混入リスクを防ぐ効果はあっても、成分自体の有効性や安全性は保証されません。
実際、GMPが義務化されているアメリカでもサプリによる肝障害などの健康被害が報告されており、品質管理だけでは安全とは言い切れないのです」
サプリには有用性が不明なものが少なくない
市場に出回る商品には、有効性が不明なものが少なくない。その代表例が、“栄養を手軽に補える”と人気の「マルチビタミン」だ。
「マルチビタミンの抗酸化作用には、がんや心臓病の予防が期待されていますが、摂取者を20年以上追跡した米国立衛生研究所の研究では、のんでも死亡率が下がらないことがわかっています。アメリカではがんや心臓病の予防目的での摂取は推奨されていません」(大西さん)
「コラーゲン」「酵素」「ヒアルロン酸」「プラセンタ」といった美容系サプリも、明確な効果は証明されていない。ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さんが解説する。
「口から摂取しても体内で消化・分解されるため、そのまま肌や関節には届きません。のんではいけないとまでは言いませんが、医学的な効果は証明されていないので、効果を期待しすぎるのは禁物です」
そもそも法律上は「食品」であるサプリに対して、医薬品のような効果は期待できない。東海大学医学部客員教授で形成外科医の北條元治さんが言う。
「本当に効果が立証されているなら医薬品に分類され、薬機法という法律のもとで品質や安全性が管理されます。食品であるサプリに薬のような効果を期待すること自体が間違いです」

効果がないだけならまだしも、問題なのは安全性に疑問符がつく製品が世の中にあふれていることだ。人工甘味料や保存料といった添加物を多く含む製品もあり、腸内環境に悪影響を与えるなど体を蝕むものも。そもそも医薬品のような臨床試験を経た厳しい承認制度がないため、充分な検証がないまま市場に出て、思わぬ健康被害をもたらすケースが存在する。
大西さんはその一例として、抗酸化物質「β-カロテン」のリスクを挙げる。
「かつてがん予防になるといわれたβ-カロテンですが、大規模な臨床試験の結果、喫煙者がサプリで高用量を長期摂取すると、かえって肺がんの発生率が高くなることが判明しました。
通常量を野菜で摂るなら健康にいい成分ですが、たばこの煙による強い酸化ストレス下で摂ると、逆に体が酸化するなど予期せぬ悪影響が生じたと考えられています」
「天然由来だから安心」という過信も禁物だ。植物成分でも体に強い作用を持つものがあり、過去にはヨーロッパ原産のハーブ「コンフリー」による重篤な肝障害や、葛根湯などの漢方にも使われる植物「エフェドラ(麻黄)」による不整脈・脳卒中など、数々の健康被害が報告されている。
さらに日常的になじみのある必須ビタミンも“有害”になりうると、北條さんは指摘する。
「サプリは特定の成分を濃縮しています。例えばビタミンCは人間の体に必要な栄養素ですが、過剰摂取によって腎結石や尿路結石のリスクを高める可能性があります。食事で同量のビタミンを補おうとすれば食べきれない量になり、摂りすぎることはまずありませんが、サプリならわずか数錠で摂れてしまうのです」
ほかのビタミンも同様だ。
「1日1〜6gのビタミンB6を12〜40か月にわたって継続服用すると、手足の痛みやしびれといった感覚神経障害を引き起こす恐れがあります。1錠100mg程度のビタミンB6が含有されているサプリもあるので、多めにのむと過剰摂取になりかねません」(大西さん)
腸活ブームで増えた「デトックス系」サプリにも気をつけてほしいと話すのは三上さんだ。
「腸内をスッキリさせるとうたう食物繊維系や酵素系のサプリは、効果が実証されていないものが多く、下剤成分が含まれているものも報告されていました。また、肝臓デトックスとしてウコンをのむことも要注意。肝臓が悪い人がウコンにより肝障害が悪化したケースも報告されています」