降圧剤は一生やめられないものではない
降圧剤が必要な場合も、漫然とのみ続けてはいけない。特にシニアでは、血圧が下がりすぎる「過降圧」に注意が必要だと坂東さんは指摘する。
「高齢者の場合、めまいや立ちくらみによる転倒から骨折し、そのまま寝たきりになるリスクがあります。血圧を下げすぎることで、腎臓への血流が低下して腎機能が悪化したり、冠動脈への血流が低下して心不全を誘発することもある。
家庭血圧で110mmHg台が時々出るようなら下がりすぎなので、薬の調整が必要です」
降圧剤をのみ始めたら、一生やめられないと思っている人も少なくないが、そうとは限らない。
「家庭血圧が降圧目標を3日以上継続して下回るようなら、薬を減らすことを検討します。血圧は寒いと高く、暖かいと低くなりやすいので、季節ごとの血圧をチェックして薬を調整することも必要です。実際、血圧が上がりやすい冬の期間だけ降圧剤をのんでいる患者さんもいます」(坂東さん・以下同)
薬を減らすためにも、治療の基本となるのが生活習慣の改善だ。
「高血圧治療の前提は、食事、運動、睡眠です。食事の改善や運動、減量によって血圧が下がれば、薬を減らすことができます。実際、食事指導と運動で減量し、薬がいらなくなったケースもあります」

同じ数値まで血圧を下げても、体調への影響には個人差がある。和田さんも降圧によって体調を崩した経験があると話す。
「私自身、血圧が220mmHgを超えていたのを5年以上放置して心不全になったので、降圧剤で血圧を下げる必要がありました。ところが140mmHgまで下げたら頭がふらふらして働かない。そこでいまは生活に支障が出ない170mmHgくらいに調整しています」
“理想の血圧”には個人差があるからこそ、信用できる医師を見極めることが重要だという。
「血圧が120mmHgで元気に過ごせる90才の人もいれば、同じ数値でふらつく人もいます。年齢や数値だけを見るのではなく、家庭血圧を毎日測って自覚症状や体調を確認してほしい。
生活習慣の改善で血圧をコントロールして薬を減らし、最終的に病院を卒業するのが治療のゴールです。患者さんの状態をきちんと把握して個別に応じた判断が必要になるので、問診、視診、聴診、触診をしっかり行い、栄養指導をしてくれるなど、個人に合わせて並走してくれる医療機関を見つけましょう」(坂東さん)
基準値は、ひとつの目安にすぎない。大事なのは日々の血圧と自分の体調を知り、必要な治療を見極めることだ。
※女性セブン2026年10月22日号