「伸ばすとちょっと痛いのがストレッチの醍醐味」は、間違っていた! 脳の癖を利用すれば、驚くほど伸びるのに、まるで痛くない。毎日続ければ、やせ体質になり、体の不調も改善できる。しかも驚くほど簡単で、介護やリハビリの現場でも実践されている。脳科学ストレッチ(R)なら、快適に肉体改造できるんです。
よくあるストレッチは、硬くなった筋肉をいきなり伸ばすため、痛みを伴うことも。しかし脳には痛みを感じると筋肉を縮ませる習性があり、せっかくのストレッチが逆効果になってしまうと、パーソナルトレーナーのNATSUKIさんは言う。
「伸ばす前に硬くなった筋肉をこすり、事前に“伸ばしますよ”と脳に伝えてストレッチをすると、伸びやすく痛みを感じることはありません。こすることは準備運動にあたる“プレストレッチ”。風船を引っ張っておくと、膨らませやすくなるのと同じです」(NATSUKIさん)
この、“脳の原理”を生かしたのが『脳科学ストレッチ(R)』。医学博士で脳のスペシャリスト・加藤俊徳さんによると、この方法だと効率的に筋肉を伸ばせるという。
「こする動作は、指で皮膚を触る。すると、脳の感覚系統(感情系)に伝わります。実は感覚系統と伸ばす動作に使われる運動系統は、向かい合わせの位置関係にあって、連動しやすいのです。
こすって“今からここを動かすよ”と脳に伝えれば、脳から筋肉にも“動かす”という刺激が届く。こする動作が加わると、筋肉が伸びやすくなるのです」(加藤さん)
“部位+方向+効果音”の3セットで脳にイメージさせる
しかし、「肩の力を抜いて」と言われても、力の抜き方がわからない人が多い。結果、むしろ肩が上がって、力が入った状態になってしまう。
「そこで、“肩(部位)を下(方向)にダラ~ン(効果音)”と言う。すると不思議と力が抜けます。“力を抜く”という動作のイメージができないのに“力を抜かなければ”と、理解しようとすればするほど、脳にストレスが生じ、全身の筋肉が緊張して縮んでしまうのです」(NATSUKIさん)
前出・加藤さんによると、脳の運動系統では、どうやって動かすか(=運動計画)の指令を出す場所と、実際に筋肉を動かす指令を出す場所は異なっているそう。だからこそ、脳が明確に理解して動かす指令を出しやすくするには、具体的な言葉が必要なのだ。
「ストレッチで痛みを伴うと、“痛い運動計画”と脳にインプットされてしまう。反対に“肩をダラ~ン”というイメージが優位に立てば、記憶は置き換えられます。そのためには継続が必須。日々少しずつストレッチのやり方を改善していくと、体が柔軟になります。この過程は脳トレにも効果的。マンネリ脳やボケ防止にもなります」(加藤さん)
自分の気になるパーツを1つから、“ながら運動”でもOK。朝昼晩の1日3回行うのが理想だが、体がいちばん硬くなっている朝にほぐして。
【基本】「大きな筋肉」から動かして代謝UP!
「大きな筋肉には毛細血管が多く、動かすと全身へ効率よく血流が流れます。体が温まって筋肉が伸びやすくなり、代謝も脂肪の燃焼量も増えます」(NATSUKIさん。以下同)
【足】まずは歩く、走る、階段の上り下りなど、日常生活で最も動かすパーツから始める。
≪太もも前≫
1.両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。左腰骨の横の筋肉を、左手の親指の付け根で上下に5回こする。
2.左手で左足の甲を持ち、ふぅーっと息を吐きながら、かかとをお尻にスーッと寄せる。10秒キープしたら、反対の足も同様に行う。
※かかとがお尻につけばベストだが、初めは無理につけようとしなくてもOK。片足立ちでバランスのとりづらい人は、壁に手をつき体を安定させよう。
これはNG!→上げた足のひざが軸足のひざより前に出ると筋肉が伸びづらい。ひざは斜め後ろに引く感じで行うのが正解。
≪太もも後ろ≫
1.両足を閉じて立つ。左太ももの真ん中から下を、左手の指の腹で上下に5回こする。こすりづらい人はひざを曲げても可。
2.ふぅーっと息を吐きながら、上半身を下にダラ~ンと倒す。10秒キープする。
これはNG!→ひざが曲がると筋肉が伸びないので、ひざはしっかり伸ばして上体を倒す。
【背中】普段、意識して伸ばさない背中は気づけば肉がつきやすい。
1.両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。左腰骨の横の筋肉を、左手の親指の付け根で上下に5回こする。
2.左手を上げ、ふぅーっと息を吐きながら、上半身を右斜め前にダラ~ンと倒す。10秒キープしたら、反対の背中も同様に行う。
これはNG!→倒すときは手だけでなく、腰から上体を倒して伸ばす。
【大胸筋】姿勢の悪さが、筋肉を硬くする原因に。猫背の解消にも効果的。
1.右手を肩の高さで直角に曲げて壁につけ、両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。右の鎖骨の下の筋肉を、左手の指の腹で上下に5回こする。
2.ふぅーっと息を吐きながら、上半身を左にスーッとひねる。10秒キープしたら、反対の胸も同様に行う。
これはNG!→頭と背中が丸まってしまうと大胸筋が縮むので伸ばしづらい。
【引き締め】筋肉がよく動けば「やせ体質」に変わる!
「筋肉が柔らかくなれば、歩幅が広がる、肩甲骨周りの動きがスムーズになるなど、日常の動作の一つひとつが大きくなります。1日の消費エネルギーも上がり、気がつけばやせやすい体に」(NATSUKIさん)
【ぽっこりお腹】姿勢が整い内臓が正しい位置に引き上がればお腹スッキリ。
1.床にうつぶせになり、両手は顔の横に置く。目線は床に。
2.顔を正面に向け、ふぅーっと息を吐きながら、両腕を伸ばして体を反らし、お腹を下にダラ~ンと落とす。そのまま10秒キープ。
これはNG!→頭が下がると背中が丸まりお腹が伸びない。反りすぎは腰に負担がかかり痛める原因に。
【老け顔二重あご】上を向く動作であごのたるみを解消して若顔&小顔に。
1.両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。首の後ろにフェイスタオルをかけて両端を持つ。
2.ふぅーっと息を吐きながら、タオルを斜め上に軽く引っぱり、頭を後ろにダラ~ンと倒す。10秒キープする。
【ゆれる二の腕】ひじ曲げが筋肉を伸ばすカギ。目指すは細くしなやかな二の腕。
1.両足を閉じて立つ。右手を後ろに曲げて、右手の二の腕裏側の真ん中を、左手の指の腹で上下に5回こする。
2.左手で右ひじを軽く持ち、ふぅーっと息を吐きながら、左手で軽く右ひじを押し、右手首を下にダラ~ン。10秒キープしたら、反対の二の腕も同様に。
これはNG!→ひじを押しただけで手が下がっていなければ効果はない。
【垂れて広がったお尻】座りっぱなしでこり固まったガッチリ尻をほぐして小尻に
1.両足を前に出して床に座る。右手を床に置き、右ひざの上側に左足をのせる。お尻の左上部分の筋肉を、左手の親指の付け根で上下に5回こする。
2.左手も床に置き、ふぅーっと息を吐きながら、右足を胸にスーッと近づける。10秒キープしたら、反対のお尻も同様に行う。
※足を動かすスピードが速いとブレーキをかけようと筋肉が縮むので、ゆっくり動かして。
これはNG!→頭と背中が丸まると筋肉は伸びない。
【お悩み:腰痛】丁寧に伸ばして深部のこりまでほぐす
1.両足を出して床に座り、両手を後ろに置く。左ひざを立てて右ひざにかける。
2.ふぅーっと息を吐きながら、右手を左ひざにかけ、上体を左にスーッとひねる。
3.ふぅーっと息を吐きながら、顔を左にスーッとひねる。
4.ふぅーっと息を吐きながら、さらに、目線を左にスーッと向ける。10秒キープしたら、反対の腰も同様に行う。
★POINT!:体→頭→目線と徐々に動かす。ゆっくり動かすことで、脳は「痛くない」と認識する。
【お悩み:つまずく】ふくらはぎの柔軟で歩幅も広がり転倒防止
「小指重心で親指が浮いている状態で歩くと、すり足になり段差のない場所でもつまずきやすい。足裏全体に重心がのれば、歩幅も広がるので自然につま先も上がります」
1.左足のふくらはぎの真ん中を、左手の指の腹で上下に5回こする。
2.壁に両手をつき、右足を前にして前後に開く。つま先は正面に向け、かかとは床につける。ふぅーっと息を吐きながら、上体を壁にあずけて、左足のかかとをダラ~ンと床に落とす。10秒キープしたら、反対のふくらはぎも同様に行う。
これはNG!→つま先に重心がのると、ふくらはぎに力が入り筋肉が縮む。
【お悩み:眠りが浅い】首・肩こりを解消して良質な睡眠を!
1.両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。頭を少し右に倒し、右手で首の左側を指の腹で上下に5回こする。
2.左手の甲は背中の真ん中付近に、右手は頭に置き、ふぅーっと息を吐きながら、頭を右にダラ~ン。10秒キープしたら、反対の首も同様に行う。
※頭を曲げた時に、連動して肩が上がらないように片手は背中に固定
【お悩み:ひざ痛】ひざの曲げ伸ばしが楽になり足の疲れ軽減
1.床に両足を前に出して座り、左手で左ひざの皿をつかむ。
2.ふーっと息を吐きながら、左足は下(床)にダラ~ン。皿を左右に10回軽く動かしたら、反対のひざも同様に行う。
【美姿勢の作り方】お腹を軽く前に出しそのままお腹を凹ませる
「お腹を出すと目線と胸が正面を向き、凹ませることで胸と内臓の位置が引き上がります。横から見て、耳、肩、腰、くるぶしが一直線になればパーフェクト!」
教えてくれたのは:パーソナルトレーナー・NATSUKIさん
『B3ストレッチサロン』を主宰する傍ら、老若男女の健康促進のため全国で脳科学ストレッチに関するセミナーや講演を開催。プロのアスリートから介護スタッフや利用者向けのストレッチまで幅広く展開している。
撮影/菅井淳子
※女性セブン2018年9月6日号
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