今年の夏は“災害級”の猛暑続きで、熱中症での救急搬送者も7万人超えと過去最多。そんな猛暑の影響がじんわり体に及ぼすダメージは、時間差でやってくるもの。「もしや夏バテ?」と思ったら、ご自愛メンナンスをお早めに。3人の女性識者に食の回復&予防策について教えてもらった。
今年の夏は国内最高41.1℃を観測するなど猛暑日も多く、連日の暑さにグッタリ。今年はとくに夏バテしている人が多いが、夏バテとは長時間、何日も暑い日が続くことで体調がくずれる状態をさす。
医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんによると、酷暑の影響は、髪や目、肌といった体の表面にとどまらず、脳や心臓、胃、腸、血管といった体の内部や内臓までダメージが及んでいるという(上図参照)。
つまり、私たちが気づかない間に、体の広範囲が暑さや日差しに悲鳴を上げ、満身創痍の状態になっているのが、夏バテの実像だ。
「強烈な紫外線を浴びたことで、肌にはシミ、髪は切れ毛ができやすくなります。さらには皮膚がんや白内障を引き起こす可能性もあります。
また、暑さで汗をかくほど体内の水分やミネラルが失われ、血液はドロドロに。めまいや動悸が起き、これに睡眠不足で血圧上昇が重なると、血栓のリスクも高まります」(福田さん)
意外にも、夏は血管が収縮しやすい冬以上に脳梗塞や心筋梗塞が起きやすい。
熱中症のように、即症状が現れるものもあるが、気づかぬうちに体がダメージを受け、重篤な病気を招くこともある。だからこそ今のうちに、体のケアをしてほしい。
危険な熱中症にもなりやすい、本当は怖い“夏バテ”の正体とは…?
【夏バテの基礎知識】寒暖差と運動不足が不定愁訴の不調を悪化
もともと人の体は汗をかいて放熱し体温調節するようにできているが、近年では、屋内外の寒暖差や食生活、運動不足が夏バテの要因に。酷暑の今夏、とくに知っておきたい夏バテのメカニズムを把握しておこう。
【あなたは大丈夫? 夏バテ自覚症状チェック】
□ 体がだるい・重い
□ 疲れやすい
□ やる気が出ない
□ イライラする
□ 足腰が冷える
□ 肌ツヤがない
□ 肩こり・腰痛がある
□ よく眠れない
□ 食欲がない
□ 便秘・下痢をする
□ 胃もたれ・胃痛がある
□ 大汗をかくor汗をかきにくい
夏バテとは、正式な病名でなく、夏場に起こりがちな体調不良の総称のこと。熱中症は意識障害や命にかかわることもある病気ですぐ手当てが必要だが、夏バテは“体のだるさや重さ”“疲れが取れない”“やる気が出ない”“食欲がない”といった不定愁訴の不調状態をさす。
高温多湿な日本では、体温調節だけで体力を消耗する。さらに、冷たい物を飲み食いして胃腸が冷えると消化不良を引き起こしやすくなる。
熱帯夜にはなかなか寝つけず疲れが残ったり、過度の冷房で体が冷えると、肩こりや頭痛になる。これらが、いわゆる夏バテだ。
かつて夏バテは暑気あたりが主要因だったが、現代は冷房による影響も無視できない。
「室内外で寒暖差が大きすぎると体温調節機能が充分には働かず、自律神経の乱れで胃腸の働きも低下します。これに冷たい物を好む夏の食習慣や、暑いからと買い物にも出ず、ひきこもって運動不足になりがちな生活習慣も、現代の夏バテに拍車をかけています」(前出・福田さん)
自律神経の乱れと冷えで夏にお腹を壊して便秘や下痢になりやすい傾向があるのも、腸の長い日本人の特徴だ。
「自律神経のバランスを整えるには、湯気の立つ温かいみそ汁やスープを夏の食事に取り入れるのも、冷え対策の腸活として有効」(前出・福田さん)
夏バテすると体力が消耗し、熱中症の発症リスクが高まるだけに、自律神経を乱す寒暖差と腸内環境悪化には要注意。では、どうすれば夏バテを解消できるのかをみていこう。
ビタミンB1補給&腸内環境改善がバテを撃破!
食欲減退の夏は冷たい麺やアイスクリームなど、のど越しのいい食べ物を選びがち。しかし偏った糖質の摂取は栄養不足や体力低下を招き、食欲も低下する。そんな負のスパイラルから抜け出すヒントとは?
暑い夏はさっぱりしたそうめんのほか、アイスクリームや清涼飲料水、ビールなどが好まれる。しかし、これが夏バテを増幅させてしまうと管理栄養士の篠原絵里佳さんは話す。
「これらは、まったく異なる見た目ですが、どれも糖質を多く含みます。夏は食欲不振でそうめんだけといった単品メニューになる人が多いですが、こうした食事の繰り返しは、糖質の過剰摂取につながります。
しかも、糖質を代謝するのに必要不可欠なビタミンB1が、これらの食品を食べることの多い夏は体内で消耗しがちになるため、ビタミンB1不足で糖を代謝できません。そこで糖質と一緒にビタミンB1を多く含む豚肉や枝豆、そばなどを努めて摂るようにするのも、夏バテからの回復には非常に有効です」(篠原さん)
その意味では“ビールのおつまみに枝豆”という組み合わせは、実にかしこい選択。
ほかにも、胃腸の働きを助けるネバネバ食材や、食欲増進や疲労回復に効く酸っぱい食材を摂るのもおすすめ。
そのほか、野菜なら抗酸化力の強い色の濃いものやビタミンA・C・Eを含む緑黄色野菜を。
ビタミンB1の吸収をよくするアリシンを含む玉ねぎやにんにくなどの食材を組み合わせるメニューを心がけて。
例えば、豚肉と玉ねぎを炒めた豚しょうが焼き、レバーとにらのレバにら炒めなど。そうめんに豚しゃぶを添えたり、日本そばに長ねぎをたっぷりいれるのもいい。
玄米は糖質でありながら、ビタミンB₁も豊富な完全食といわれているが、すでに夏バテでお腹が弱った状態なら、玄米よりも胚芽米の方が胃腸に優しくおすすめだ。
「そのほか、1日1回はみそ汁や野菜スープなどの温かい汁ものを飲むのが腸活になります。腸内フローラを整えて腸内環境を改善するには、腸まで届くプレバイオティクスのヨーグルトを摂るのもいいですね」(篠原さん)
日本の夏の食事は冷たい物一辺倒になりがち。“温かな一汁三菜”を意識して、夏こそバランスよく食べたい。
バテないための夏の最強食材はこれ!
《糖質の代謝に不可欠な「ビタミンB1」食材》豚肉、うなぎ、胚芽米、枝豆、そば、豆類、レバー
《胃腸の働きを助けてくれる「ネバネバ」食材》モロヘイヤ、オクラ、山いも、納豆、芽かぶ
《食欲増進・疲労回復に効く「酸っぱい」食材》クエン酸を多く含む柑橘類、パイナップル、キウイフルーツ、梅干し、いちご、レモン
《抗酸化力の強い「色の濃い」野菜》トマト、赤ピーマン、ピーマン、ゴーヤー、オクラ、枝豆、かぼちゃ
《ビタミンB1の吸収をよくする「アリシン」を多く含む食材》ねぎ、玉ねぎ、にんにく、にら
中医学の知識“薬膳”で夏バテ解消を!
漢方・薬膳アドバイザーの杏仁美友さんによると、中医学では気・血・水の3つが体内でバランスよく存在する状態が健康とされるという。
「そこから“気”と呼ばれる目には見えない、体を動かすエネルギーのようなものが汗と一緒に体から出てしまうことが、夏バテの原因の1つとされています。それを補ってくれる穀類・いも類・豆類などの補気食材を食べるのが、薬膳における夏バテ対策の1つです」(杏仁さん)
漢方では、食べ物が体に取り込まれた際に「温める・冷やす」の作用が古代からの臨床体験で分類されており、それを5段階で寒熱表にまとめられている。例えば「平」は米やとうもろこしなどの穀類、体を冷やす「寒」や「涼」の食材にはかに、あさりなどの川や海の生き物や夏野菜が。体を温める「熱」の食材には、香辛料が多いのが特徴。薬膳の考え方は、体調に合わせた食材選びのヒントになりそうだ。
【教えてくれたのは…】
医学博士・健康科学アドバイザー
福田千晶さん
専門はリハビリテーション医学、東洋医学、健康スポーツ等。企業の産業医活動、講演、執筆のほか、テレビ・ラジオにも出演多数。
管理栄養士
篠原絵里佳さん
睡眠改善インストラクター、睡眠健康指導士としても活動。食事と睡眠の観点から健康と美容にアプローチする「睡食健美」を提唱。
漢方・薬膳アドバイザー
杏仁美友さん
薬膳コンシェルジュ協会代表理事。国際中医師、中医薬膳師の資格を生かし、身近な食材を使ったカンタン薬膳の普及につとめる。
※女性セブン2018年9月13日号
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