総務省消防庁の調べによると、今年6月17~23日までの全国の熱中症による救急搬送人員は925人で、昨年同時期に比べ313人上回っている。今年の夏も厳しい暑さが予想され、熱中症の危険性は高まるが、正しい水分補給の方法を知っておけば、予防はできる。夏を元気に乗り切るため、まずは体に水分が足りているかのチェックから始めてみよう!
脱水症とは?水分不足で筋肉にも影響し頭痛などの症状が
「人の体の半分以上は、水と塩分が混ざった体液でできています。その量は年齢によって異なりますが、子供の場合は体重の約80%、同様に成人の約60%、高齢者の約50%を占めています」
こう語るのは、脱水症対策に詳しい医師で済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さんだ。
体液とは、血液やリンパ液、汗や尿などをさし、これが減少した状態を「脱水症」という。つまり脱水症は、水と塩分が失われた状態なのだ。
「脱水症になるとまず血液量が減ります。すると、栄養素や酸素を運んだり、老廃物を排出する機能が低下します。同時に、約80%が水分でできている脳や胃腸などの消化器、筋肉も正常に機能しなくなります」(谷口さん・以下同)
脳や胃腸への水分(血液の供給)が不足すると頭痛やめまい、食欲低下などが起こり、二日酔いに似た症状が出る。筋肉への水分が不足すれば、こむら返りや足の麻痺なども起こる。暑さが原因で起きた、これら脱水症によって引き起こされるさまざまな症状が、熱中症の初期症状だ。
体重50kgの人の場合、体重が3~5%(1.5~2.5kg)減れば軽度の脱水症、6~9%(3~4.5kg)減れば中度の脱水症、10%以上(5kg以上)減れば重度の脱水症だ。1週間以内に体重減少があったり、下のチェックリストのうち、該当するものがあれば、脱水症を疑った方がいい。
誰でもすぐできる脱水症のチェック方法
下記の方法でチェックしてみて、どれか1つでも当てはまったら脱水症かも!
・握手してみる
手が冷たい場合は脱水症のサイン。体内の水分が不足すると、生命を維持するため、重要な臓器に優先的に血液が集まり、体の末端にまで行き渡らなくなるため、手足が冷えてしまう。
・皮膚をつまむ
3秒以上元に戻らなければ要注意。水分が不足した皮膚は弾力性がなくなるため、つまんでも元に戻りにくくなる。
・親指の爪の先を押す
3秒以上赤みが戻らなければ、脱水症のサイン。体内の水分が不足し、ドロドロの血液になると、赤みが戻るのが遅くなる。特に指先の毛細血管は細いので、水分不足の影響が出やすい。
・舌を見る
舌の表面が乾いていたら脱水症のサイン。体内の水分が不足し、口内の唾液が減少するために起こる。
・脇の下を確認する
乾いていたら脱水症のサイン。脇の下は通常湿っているが、脱水症になると汗が出にくくなる。特に高齢者は要注意。
出典/『「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』(日本医療企画)
脱水症になりやすい人は?子供や高齢者は注意
では、脱水症になりやすいのはどんな人だろうか。
「水分は筋肉にためられています。一方、油と水は混ざらないため脂肪に水分はためられません。つまり、脂肪の多い人や筋肉量の少ない高齢者や子供は、脱水症になりやすいといえます」
女性は男性よりも筋肉量が少ないので、男性より女性の方が注意が必要だ。さらに脂肪の多いぽっちゃり体形であれば、より脱水症になりやすい。また、高齢者の場合、筋肉量が少ないうえに、のどが渇いていることに気がつきにくくなっているので、発見が遅れて重症化しやすい。適度な運動で筋力をつけること、そしてのどが渇いたと自覚する前にこまめに水分補給することが、“乾かない体”への近道になるのだ。
脱水症、日常での対策は「のどが渇く前に飲む」
健康な体では、食事や飲料などで体に入る水分量と、排泄や蒸発、汗などで体から出ていく水分量はほぼ同じ。だから、体の水分量はいつも一定に保たれている。しかし、水分を摂る量や食事量が足りないと、体に必要な水分が摂れていないのに、いつもと変わらない量が出てしまい、少しずつ脱水症が進行してしまう。
水分は、食事からだけでも約1L分は摂れるので、意識して水分を摂らなくても、規則正しい食生活を送っているだけで、脱水症対策にはなる。とはいえ、体重50kgの人の場合、水分を1日1.2L程度、食事とは別に摂るのが理想的だ。
「水分補給は、のどの渇きを感じる前に行いましょう。一気に摂っても吸収できないので、1回にコップ1杯150ml程度がおすすめ。こまめに摂るのが効果的です」
夏は、すいかやトマト、きゅうり、セロリなど、水分とミネラル分の多い夏野菜を意識して摂ることでも脱水症対策になる。
1日に摂りたい水分量は体重約50kgの人で1.2L程度。コップ1杯150ml程度の水分を1日8回程度飲むのがおすすめだ。食事や入浴、就寝前などのタイミングで一緒に摂ると忘れにくい。食事前に水を飲むことで胃腸が刺激され、消化を助ける効果もある。飲み物の温度は常温でも冷やしても、飲みやすいものであればOK。
脱水症になったら、水と塩分を同時に補給を!
脱水症の症状が出た時は、すぐに水分と塩分を同時に補給しなければならない。水だけ飲んでも尿などで排出されてしまい、吸収できない。しかも体液が薄まって、意識障害などを引き起こす“水中毒(希釈性低ナトリウム血症)”になることもある。
「脱水症の時は経口補水液がおすすめ。水と塩分がバランスよく配合されているうえ、素早く水分を吸収するために必要な糖分も入っているので、水分が体にとどまりやすいのです」
スポーツドリンクも水に比べれば補水効果は高いが、どちらかというとエネルギー補給を目的にした飲み物なので、塩分よりブドウ糖の量が多い。水分補給として飲むなら、なるべく食塩相当量の多いものを選ぼう。カフェインは利尿作用を高めるので水分補給には不向きと思われがちだが、飲みなれている人にはカフェイン耐性ができているので、そういう人は茶やコーヒーで水分補給をしても問題ない。ただし、アルコールはNG。分解するのに体内の水分を使い、利尿作用もあるため飲まないこと。
手作りできる!経口補水液の作り方
経口補水液は簡単に作れる。水1Lにブドウ糖10〜20gあるいは砂糖20〜40gと塩3gを加える。市販の経口補水液やスポーツドリンクは、適正なバランスで各成分が配合されているため、薄めずにそのまま飲むことが大切だ。
イラスト/坂本直子
※女性セブン2019年7月18日号
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