
暑くて多く汗をかく夏は、体臭が気になりやすい季節だ。なかでもニオイもきつく、気になるワキガについて、漢方薬にも詳しい薬剤師の山形ゆかりさんに原因や対策方法、漢方薬について教えてもらった。
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ワキガの原因
ワキガのニオイは、体の表面にいる雑菌が汗に含まれるたんぱく質や脂質を分解するときに発生します。つまり、汗の成分をえさに雑菌が繁殖することでニオイが生じるのです。
汗腺には「アポクリン腺」と「エクリン腺」があります。エクリン腺から出る汗はサラサラとしており、ほとんどニオイはありませんが、アポクリン腺からはワキガの原因となるたんぱく質や脂質を含んだベタベタした汗が出ます。
アポクリン腺は誰にでもあるものですが、アポクリン腺が発達して数が多くなると汗の分泌量も多くなり、ニオイが強くなります。
アポクリン腺は第二次性徴で発達するため、ワキガのニオイが出始めるのは主に思春期ごろですが、女性ホルモンにアポクリン腺を活性化させる働きがあるため、月経前後や妊娠中にアポクリン腺からの汗の分泌が盛んになることもあります。女性ホルモンの分泌量が低下する更年期になると軽減していきますが、加齢臭が出始めることで「ニオイがきつくなった」と感じる場合もあるでしょう。

さらに、ワキガの原因となる汗が服の繊維に染み込み、繊維についた雑菌が繁殖することでもニオイが発生します。一般的な家庭用の衣類用洗剤では服の繊維にまで染みついたワキガのニオイを取り除くことは難しく、普通に洗濯しても服にニオイが残ってしまうため、洗剤よりも除菌効果の高い酸素系漂白剤を使ったり、消臭効果のある重曹を入れて洗濯したりしましょう。
ワキガの対策方法
ワキガ対策では、ニオイの原因である雑菌の繁殖を抑えることが重要です。こまめに汗を拭いて雑菌を繁殖させないようにするほか、殺菌・消臭効果のある制汗剤や石けん・ボディソープなどの洗浄料を使用することが効果的です。

は汗をかく前に使うことで、汗の発生そのものを抑制します。汗をかいてから使う場合は、先にタオルや汗拭きシートなどで汗を拭き取り、肌を清潔な状態にしてから使いましょう。
また、洗浄料でごしごしと洗いすぎると、摩擦によって皮膚が乾燥しやすくなります。そうすると、乾燥から皮膚を守るために皮脂の分泌が促され、皮脂をエサに雑菌が増殖する可能性があります。しっかり洗浄料を泡立て、優しく肌の表面を滑らせるようにして洗いましょう。
ワキガ対策に役立つ食材
汗の原料である血液は本来弱アルカリ性に保たれており、酸性に偏るとワキガのニオイが強まるためワキガ対策には食事も重要です。酸性に偏るのを防ぐためには、アルカリ性の食材を食べ、体内を中和する必要があります。

アルカリ性の食材には、わかめ、ひじき、もずくなどの海藻類や、きゅうり、アスパラガス、玉ねぎなどの野菜類、梅干しなどがあります。食事に積極的に取り入れていきましょう。
また、唐辛子やにんにく、揚げ物など、ニオイの強い香辛料や脂質の多い食べ物は、アポクリン腺を活発にしたり、分解された成分がアンモニアとなり、毛穴から排出されたりします。すると、ワキガのニオイが強くなる可能性があるため、食べすぎないように意識しましょう。

ワキガ対策には漢方薬も役立つ
ワキガ対策には、「発汗調節機能を改善して過剰な汗を抑える」「体にたまった余分な熱を取り除きニオイの改善に働きかける」などの作用をもつ漢方薬を選びます。

おすすめの漢方薬
・桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
汗腺のしまりをよくすることで発汗調節機能を改善し、過剰な発汗や寝汗に働きかけます。体力が低下している人に向いています。
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
体の余分な熱を取り除き、多汗や体臭の改善に働きかけます。皮脂の過剰分泌で脂ぎってベタつく人に向いています。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付き、薬膳アドバイザーとしても活動する。牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニューを開発。そのほか、症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)で薬剤師を務めている。