健康・医療

専門家が回答。食物繊維が“大人のダイエット”に必須の理由

腸内環境や血糖値の調整をしたり、脂質の排出を助けたり、と体に多くの有益な働きをもたらす食物繊維。個人差はあるが、1日に必要な量は女性で18g以上、男性で20g以上と言われている。しかし、必要量の70%程度しか摂ることができていない人が多いのだとか。

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写真左が、総合内科専門医の池谷敏郎さん。右が、「大人のダイエット研究所」代表理事の岸村康代さん
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そこで、「大人のダイエット研究所」代表理事で管理栄養士の岸村康代さんは、食物繊維をもっと摂ろうという提案をするべく、2016年10月6日(木)に東京都・銀座の「リストランテ アルケントーレ」で“繊活”イベントを開催。“繊活”とは、「日本人に不足している食物繊維をおいしく摂って、体の内側からのキレイと健康を目指す活動」だとか。

同イベントで岸村さんは、『老けない血管になる腸内フローラの育て方』(青春出版社)や『ダイエットの新習慣』(朝日出版社)といった著書をもつ、総合内科専門医の池谷敏郎さんとともに、食物繊維の健康とダイエットへの効果について説明をした。その内容を抜粋して、ご紹介。

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そもそも食物繊維ってなに?

炭水化物の中で、人間の酵素では消化できないものが、食物繊維。水に溶ける「水溶性」と水に溶けにくい「不溶性」の2種類に分かれる。

水溶性の食物繊維には、血糖値の急激な上昇を抑制したり、短鎖脂肪酸を生み出して腸内環境を改善したりする効果が。また、脂質や悪玉といわれる「LDLコレステロール」を吸着し、体外に排出するのを助ける。そのため、食物繊維をしっかり摂取することは、動脈硬化や脳卒中などの予防にも役立つ。

食物繊維はいかにダイエットに役立つ?

水溶性の食物繊維は、胃から腸へ移動するのに時間がかかる。一方、不溶性の食物繊維は、胃腸で水分を吸収して膨らむ。そのため、食物繊維を含む野菜を食事の最初に食べる“ベジファースト”を実行すると、食べ過ぎ防止につながることに。

また、腸内で細菌が食物繊維を食べて、短鎖脂肪酸を作る。これが血液中に流れ出ると、脂肪細胞が脂肪を溜め込むのを抑えてくれる。この過程で交感神経が働くため、心拍数を上げたり、体温を上げたりとエネルギーを消費して代謝がアップ。結果として太りにくい体質につながるのだとか。

食物繊維はどんな食べ物に含まれるの?

きびやひえなどの雑穀は全般的に食物繊維を多く含む。特に、いま話題の大麦には精白米の17倍以上の食物繊維が。水溶性と不溶性のバランスがよいのも◎。

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おからパウダーや乾燥ヨーグルトも食物繊維が豊富で、岸村さんオススメの食品
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大豆は特に皮の部分に食物繊維を含むので、丸ごと食べるか、おからや納豆などの皮も含む食品で摂るのがオススメ。同じ豆類では、小豆にも不溶性の食物繊維がたっぷり入っている。

野菜ではこれから旬を迎えるキノコ類、レンコンやゴボウなどの根菜に食物繊維が含まれる。外食しがちな人は居酒屋の定番メニューで、「枝豆」や「切り干し大根」などを頼むと、食物繊維をしっかり摂ることができる。

食物繊維を摂るときに、注意すべき点は?

今まで便秘だった人が急激に大量の食物繊維を摂取するのは危険。その場合には、腸内で分解しやすいように、加熱して温かい状態でよく噛んで食べることが大事。また、胃腸が弱っているときは、摂取量を控え目にするのがベター。

岸村康代(きしむら・やすよ)

大人のダイエット研究所理事。2000人以上の健康的なダイエットを指導してきた経験をもつ。また、管理栄養士やフードプランナーとして、おいしく食べながら健康的になる食の提案をしている。最新刊に『10日間でやせ体質に生まれ変わる野菜レシピ』(アスコム)

池谷敏郎(いけたに・としろう)

1962年、東京都生まれ。池谷医院院長、医学博士。専門は内科・循環器科。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医としても活動。テレビ番組でのわかりやすい医学解説が好評を博している

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