太りたくない、でも食べたい…。だったらいかに賢く食べるか。あれこれ深く考えず、「食べる順番」と「食べ始めの5分間」を気にするだけでやせにつながる画期的なダイエット術がついに判明!
食物繊維を先に摂る「ベジファースト」、肉を先に食べてから、という「食べる順番」ダイエットは、昨今、多くの雑誌やテレビで取り上げられるようになった。今いちメカニズムはわからなくても、なんとなくサラダから食べ始める人は増えている。
しかしそれまで、汁物、ご飯、おかずを交互にバランスよく食べる、いわゆる「三角食べ」が主流だった日本人にとって、先に野菜だけをひたすら食べるような「ばっかり食べ」は、正直つらいと感じる人も多いようだ。
ところが、野菜から食べ始め、続けて肉、魚だけを摂るようにすれば、食事開始から5分たった時点で、好きなものを好きな順番で食べてもやせられる、そんなお手軽ダイエット向けの食事法を推奨する研究が最近発表され、話題になっている。
”食べる順番ダイエット”のやり方は?
2019年10月、関西電力医学研究所所長で関西電力病院総長の清野裕さんと、同研究所副所長で岐阜大学大学院医学系研究科教授の矢部大介さんらの研究グループが発表した今回の研究(※)は、健康診断で糖尿病予備群を対象に行ったもの。関西電力職員のなかで、生活習慣の改善が必要として保健指導対象となった人に協力してもらい、食事指導の仕方によって、半年後にどれくらい血糖値や体重の変化に差が出るかを確認した。
【※…2019年10月19日、国際学術雑誌「Journal of Diabetes and Its Complications」(オンライン版)で論文を公開。研究では「従来群」と「食べる順番群」以外に栄養バランスに重点をおいた食事指導の「栄養バランス群」と比較試験を実施】
被験者のうちの11人は、厚生労働省が推奨する従来の食事指導を選択。1日の摂取カロリーがエネルギー消費量より少なくなるように食事を摂り、毎日10分程度ウオーキングを行うというもので、これを「従来群」と呼ぶ。
一方、「食べる順番」指導を選択した「食べる順番群」の18人は、以下のような食事法を実践した。食事開始後まず、野菜・きのこ・海藻・こんにゃくといった食物繊維を含むものを先に口にしてから、肉・魚、豆腐や卵などのたんぱく質、脂質を含むものを食べる。食事開始から5分経ったら、ご飯・パン・麺類・いも類などの炭水化物も一緒に摂る。しかもこの時、主食もおかずも好きな順番で食べて構わない。6か月後に両群を比較すると、食べる順番群の方がやせ効果が高かった。従来群はむしろ体重が増加傾向にあったが、食べる順番群では全員が減少。両者は平均体重ではおよそ1.5㎏の違いが出た。
1日のカロリー摂取量にも変化が見られた。食べる順番群の方が従来群よりも、摂取した熱量は200Kcalほど少なかった。摂取カロリーを気にしていた群より、食べる順番に気をつけていた方が、結果、摂取カロリーを抑えられたということだ。
この結果について研究グループは、「従来行われてきた特定保健指導と比して、減量効果が大きく、継続して実践可能である」と結論づけている。食べる順番を守ることが簡単でやせやすい方法なのだ。
糖尿病予備軍にも効果を発揮
そもそも、「食べる順番」を指導する方法は、生活習慣とも関係の深い2型の糖尿病患者に適した食事法として注目されてきた。食後に血糖値が急激に上昇する「食後高血糖」の状態が頻繁に発生することは、すでに患っている人にとってだけでなく、糖尿病を引き起こす要因の1つとして考えられている。つまり、現在健康な人にとっても、食後高血糖はできる限り起こさないに越したことはない。実際多くの研究が、糖尿病患者や糖尿病予備軍の人たちの「食後高血糖」改善に、「食べる順番」が効くことを示している。
代表的なのは、やはりベジファースト。野菜のあとに摂った炭水化物はゆっくり消化され、食物繊維の効果によって、炭水化物からの糖の吸収が抑えられると考えられている。
同じように、魚や肉などをご飯の前に食べることも効果がある。たんぱく質や脂質が含まれる食品を先に摂ると、「GLP-1」と呼ばれる消化管ホルモンが生じる。これは、胃の動きをゆっくりにして、満腹感を生み出すとともに食後の急激な血糖上昇を改善する。さらに、このホルモンには食欲を抑制する効果もあるため、長期的にみると減量にもつながると考えられている。
このように「食べる順番」法は食後高血糖を予防する効果が高いため、糖尿病の症状を悪化させないだけでなく、未病の段階で糖尿病を防ぐことも期待できる。研究チームは、そこからさらに一歩踏み込み、日常の食べ方に近い「食べる順番」食事法を実践するだけで、食後高血糖だけでなく、長期的に血糖値や過体重を改善できるかを確認しようと考えているという。
続けることでより高い減量効果も
今回の研究は、6か月という短期間の制限があった。より長い期間取り組んだ場合、さらに高い減量効果が期待できるかもしれない。
また、血糖やコレステロールといった値も長期的には改善する可能性が残されている。そうなれば、おいしい食事を楽しみながらダイエットできるだけでなく、糖尿病をはじめとした生活習慣病の予防にもつながるかもしれない。
研究チーム代表の1人である矢部さんは、日本糖尿病学会発行の学会誌『糖尿病』に2016年に発表した論考「食後血糖と栄養素摂取の順番」で、次のように述べている。
《『食べる順番』は、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食の代表といえる会席料理にも通じる。食物繊維の供給源としての先付け(前菜)に続き、タンパク質や脂質の供給源として、向付(刺身)、鉢魚(焼き物)など主に魚料理がふるまわれ、最後に米飯や果物が供される会席は、食後血糖の上昇を抑制するための古来からの創意工夫かもしれない》
日常的に会席料理を食べるのはさすがに難しい。しかし、それに近い「食べる順番」を毎回の食事で意識してみることならできそうだ。ダイエット効果を得るだけでなく、生活習慣病を回避するためにも、ここはひとついにしえの日本人の知恵を拝借してみてはどうだろう。
※女性セブン2020年1月2日・9日号
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