ボディケア

マスクで口臭が気になる人が増加!臭いがわかる方法や舌磨きなどの対策を医師が指南

家に帰ってマスクを取り、「ただいま」と言ったとたん家族が顔をしかめてこちらを見る、なんて経験はないだろうか。気がつかないうちに、あなたの口がイヤな臭いに侵されているかもしれない──。

新宿の街をマスクを着けて歩く女性たち
当たり前になったマスク生活も、口臭を悪化させる一因に(時事通信フォト)
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マスク着用時に「口臭が気になる」人が増加

新型コロナウイルスの影響で、マスク生活が“ニューノーマル”になってから、もう半年以上。鼻と口を覆うマスクは私たちをウイルスから守ってくれる心強い存在だが、一方で新たな悩みも生んでいる。

第一三共ヘルスケアが今年6月に行った調査によると、マスク着用時に「口臭が気になる」と答えた人が6割近くにのぼっているのだ。歯学博士の照山裕子さんが言う。

◆虫歯や歯周病によって口臭がさらに悪化

「マスクを着用することによって口呼吸が習慣になると、口の中が乾燥し、唾液によって汚れが流れなくなるので、たしかに口臭は強くなりやすい。虫歯や歯周病のリスクも上がるので、それらが原因で口臭がさらに悪化してしまう可能性もあります」

リモートワークや外出自粛で“家ごもり”が広まったことも、口臭の悩みの一因になっているようだ。

「人と会う前には、エチケットとして歯を磨く習慣がありますが、それがなくなると、“まあいいや”と、ケアを怠りがちになってしまう」(東京医科歯科大学名誉教授の川口陽子さん)

そもそも口臭の原因とは?

口臭を気にする女性
ホルモンバランスの乱れも影響(写真/アフロ)
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そもそも口臭とは、何が原因で起きるのか。

「口臭のもととなるガスは3種類あります。1つは『硫化水素』。歯磨き不足などによる口腔内の汚れが原因で発生するもので、“腐卵臭”が特徴です。2つ目の『メチルメルカプタン』は歯肉の炎症で菌が繁殖するときに出るガスで、“銀杏臭”。歯周病の場合、このにおいがします。

最後の1つは『ジメチルサルファイド』で、消化器系の内臓が弱っているときに生じるガスで、割合からいうと、このケースはかなり少ない」(照山さん)

◆ホルモンバランスも影響する

女性の場合、ホルモンバランスも口臭に影響する。

「女性は生理の前後で唾液が出にくくなり、口臭が強くなることがある。更年期によるホルモンバランスの乱れや、ストレスも影響します」(きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さん)

実際、口臭に悩んでいる女性は男性よりも多い。

ブレス・ハザードプロジェクトがまとめた『口臭白書2019』では、専用の装置で男女214人の口臭を測定し、「口臭レベルの実態」を調査している。その結果は、基準値を超えた比率は女性が17.9%、男性が8.3%。女性の方が男性より2倍以上も「口が臭い人が多い」というショッキングなものだった。特に40代以上の女性では24.1%が基準値を超えていた。

自分の口臭に気づくための方法

「夫やほかのオジサンよりも自分の方が口が臭いかも…」、そう思うとますます口臭が心配になるが、実はどんなに口臭がひどくても、自分で気づくのは難しいと、川口さんは指摘する。

「周囲の人にとって鼻が曲がるほど臭くても、本人は気づいていないことが多い。“嗅覚の順応反応”といって、長時間嗅いでいるとどんなにおいも自分の鼻は慣れてしまうのです」(川口さん)

自分の口臭が気になるときは手で口と鼻を覆ってハーッと息を吐いたり、コップや袋に息を吐いてにおいを嗅いだりするが、それは口臭の“確認”にはならない。

◆他人に確認してもらうしかない

「自分ではなく他人に確認してもらうしかありません。病院で口臭の診察をするときは機械などで測定するだけではなく、『官能検査』といって、患者さんにスクリーン越しに息を吐いてもらい、それを直接嗅いで判断します。

家族に“におうよ”と言われたら、それは事実です。ハアッと吐いた他人の息を嗅ぐのは、特にいまは避けた方がいいので、普通の距離で話しているときに“不快なにおいがしたら教えて”と家族に頼むといいでしょう」(川口さん)

以上のように自分では気がつかずにイヤなにおいをまき散らしている可能性もあるということ。 いますぐにおいを撃退し、口臭予防をするために、名医たちが実践する方法を取材した。

歯磨きや舌磨き用アイテムの選び方

まずは道具をそろえよう。歯ブラシやデンタルフロスは、さまざまな種類のものが売られているが、どんなものを選べばいいのか。

歯ブラシは、「面」を磨く用と歯茎用の歯ブラシがあるので、複数を使い分けるのが理想的だ。

◆舌ブラシは柔らかめのものを

東陽町歯科医院院長の大谷直さんが使うべきケアグッズとそのポイントを解説する。

「歯ブラシは、硬すぎず柔らかすぎないものを選んでください。『DENT.EX systema』シリーズは品質もよく、おすすめです。デンタルフロスなら、『DENT.E–floss』がいい。使っているうちに糸がスポンジのように膨らんで、歯と歯の間の汚れをよく落としてくれます。

舌はとても繊細なところなので、舌ブラシは柔らかめのものを。硬いものは刺激が強く、舌を傷つけてしまいかねません。シリコン素材の舌ブラシは舌への刺激が少ないのでいいでしょう。また、舌磨きは泡が舌に密着して殺菌と口臭予防をしてくれる『薬用ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ』(花王)を使うのも効果的です」(大谷さん)

歯ブラシをグー握りするのはNG

小刻みに磨くのがポイント(写真/アフロ)
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口臭解消の基本は、なんといっても毎日の歯磨きだ。ただし、歯の汚れを落とそうとゴシゴシ磨くのは逆効果。

「過度な力をかけて歯ブラシでこすってしまうと、歯の表面やデリケートな根元を傷めます。硬い毛先のものは要注意。歯肉をこすりすぎることで粘膜の病気にもなりかねないので注意してほしい。適切なブラシ圧で磨いているときは、ゴシゴシ音はしないものです」(照山さん)

◆歯を磨くときのポイントと注意点

握り方も重要だ。歯ブラシは“グー握り”だと力が入りすぎるので、親指と人さし指と中指でペンのように持ち、大きく動かさず、小刻みに1~2本ずつ磨いていく。

また、大切なのは歯の「面」よりも、歯と歯肉の境目を丁寧に磨くこと。歯ブラシを45度くらいの角度で当て、汚れをかき出すようにしよう。歯ブラシ以上に忘れてはならないのがデンタルフロス。

「においの原因のほとんどは“隙間汚れ”なので、デンタルフロスや歯間ブラシを使って最低1日1回は歯と歯の間の汚れを取る心がけを」(照山さん)

舌磨きの頻度はどれぐらいが理想?

歯垢と呼ばれる歯の汚れだけではなく、舌についた舌苔も口臭の原因になる。そこで歯磨きとともに習慣づけたいのが、舌磨きだ。

「ただし、硬い歯ブラシを使って強く磨くと、舌の粘膜を傷つけてしまう。重症になると味がわからない“味盲症”になる可能性もあります。専用の舌ブラシや、柔らかい歯ブラシを使って、奥の方から前の方に優しく磨きましょう。

歯は毎食後に磨きますが、舌磨きは舌苔がいちばん多く、口臭も強い朝に1回行いましょう。起床時、朝食の前にきれいにすれば、1回で充分です。舌をきれいにしてから食事をすると、味蕾を覆っていた舌苔が取れているので、繊細な味もわかるようになりますよ」(川口さん)

歯磨き後は毒出しうがいを行う

歯磨き、舌磨きと併せて、照山さんが推奨するのが、「毒出しうがい」。30ml程度の水を含み、まず上の歯に向けて、強く速く10回ぶつけて、水を吐き出す。鼻の下が膨らむくらいの勢いで行うのがコツだ。

同じように「下の歯」「右の歯」「左の歯」も行っていく。

「洗車をするように、歯に強い水圧をかけることで汚れやばい菌を除去します。虫歯や歯周病を予防し、口臭の解消にもつながります。当てる部分のほっぺたを膨らませて、ぶくぶくと音を立てながら、1秒間に3回の速さで行ってください」(照山さん)

◆口臭を洗い流す「毒出しうがい」のやり方

口に含んだ水を上の歯全体に向けてぶつける女性の顔イラスト
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【1】水を30mlほど口に含み、上の歯全体に向けて鼻の下が膨らむほど強く水を10回ぶつけた後、吐き出す。

口に含んだ水を下の歯全体に向けてぶつける女性の顔イラスト
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【2】同じように水を口に含み、下の歯全体に向けて唇の下が膨らむくらい強く水を10回ぶつけ、吐き出す。

口に水を含み右の頰を膨らませた女性の顔イラスト
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【3】口に含んだ水を今度は右の頰が膨らむくらい強く、右の歯全体に10回ぶつけて吐き出す。

口に水を含み左の頰を膨らませた女性の顔イラスト
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【4】最後は左の歯。口に含んだ水を左の頰が膨らむくらい強く、左の歯全体に10回ぶつけて吐き出す。

食後に歯磨きをする時間がないときや、間食した後には、このうがいで汚れを洗い落とすだけでも、口臭を抑える効果はある。

やってはいけない口臭対策

口臭対策としてマウスウオッシュを使っている人も多いが、川口さんは「使いすぎ」に注意を促す。

「腸内細菌と同じように、口の中には虫歯や歯周病を起こす菌だけでなく、食べかすを分解してくれるよい細菌もいる。頻繁にマウスウオッシュでうがいをすると、善玉菌まで減らしてしまう恐れがあります」(川口さん)

◆マウスウォッシュ、うがい薬は使いすぎに注意

吉村洋文大阪府知事が「コロナ対策に有効」と発表し、逆に非難が殺到してしまったイソジンをはじめとする「ポビドンヨード」のうがい薬も同様だ。

「刺激が強すぎるので、やはり善玉の常在菌まで殺してしまう。口臭対策のサプリメントも、根本的な原因の解消にはなりません。サプリメントのにおいと口臭が入り交じり、かえって不快なにおいになることもあります」(大谷さん)

イラスト/飛鳥幸子

※女性セブン2020年9月17日号

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