歩けば歩くほど健康にいいというイメージがあるけれど、本当に効果が期待できる?
『最高の歩き方』(世界文化社)の著者で、医学博士、信州大学医学部特任教授の能勢博さんによると、筋力をつけるためには、1日1万歩歩いても意味がないのだとか。それよりも、使うべき筋肉を使って歩くことが重要。
能勢さんが提唱する「インターバル速歩」なら、合計で週120分歩くだけでOK。毎日やるなら1日20分程度で筋力や体力アップ、筋肉の減少による不調の改善が期待できるという。
そこで同書から、無駄にたくさん歩くよりも「インターバル速歩」が効果的な理由や、そのやり方を解説する。
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体の衰えの原因は筋肉量の低下
「なんとなく体の衰え」を感じているなら、それは筋肉量の低下が原因。そして最近、それが高血圧症、糖尿病などの生活習慣病だけでなく、うつ病や認知症、がんにいたるまでの病気の根本原因だといわれるように。逆に、筋肉量を増やせばエネルギッシュにはつらつと活動できるようになる!
◆筋肉は30歳前後を境目に衰える
体力は20代早々にピークを迎え、30代前後から顕著に衰え始める。男女差は関係なく、10歳ごとにおよそ10%ずつ低下していく。何もしなければ70歳前後でピーク時の30%まで体力が下がってしまう。この数字は「機能不全閾値(きのうふぜんいきち)」といい、自分の体を支えきれず、トイレにさえ一人で行けなくなってしまうボーダーラインなのです。
◆筋トレは続かない
筋力をあげる筋トレ(無酸素運動)は、瞬間的に大きな力を出す「速筋」を鍛えるためのもの。スポーツジムなどのマシンなら特定の筋肉だけを鍛えられるため、体のアウトラインを整えるのは最適だけれど通うには費用も時間もかかってしまう。一方、腕立て伏せや腹筋運動など、自重で行う負荷トレーニングを強烈な動機もなく、一人黙々と続けられる人は少数派と言える。
「もっとリーズナブルで、健康面で効果の高い方法が欲しい」と思う人は多いはず。「インターバル速歩」なら、筋トレで鍛えることができる「大臀筋(だいでんきん)」「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」「ハムストリングス」にも効果的。
◆1日1万歩にはほとんど効果なし?
「速筋」に対して「遅筋」は、スタミナ=持久力を発揮する筋肉。ある程度の負荷をかけながらジョギングやエアロバイクなどの有酸素運動で鍛えることができる。
厚生労働省は1日1万歩歩くことを推奨しているけれど、能勢さんが行った一般の人200人以上を対象とした5か月の比較実験の結果では、芳しい結果は出なかった。
※太もも前面にある大四頭筋の筋力は、男性はマイナスのままでほぼ同程度。女性は若干筋カアップしている。
※太もも裏にあるハムストリングスは、膝を曲げ、足をうしろへ引き上げる役割を担う。女性は8%程度まで筋力が上がっているが、男性は大差がない。
※疲れにくさの指標で、上へ伸びるほど体力が向上する。しかし、男女ともマイナスのままで、改善しているとはいい難い。
なぜ効果が低かったかというと、運動強度が足りなかったから。「1万歩」と歩数だけを基準にゆっくり歩いても効果がないことが、この実験結果からもわかる。
また、糖と脂肪をエネルギー源とする「遅筋」は運動強度が上がるにつれて、脂肪よりも糖が燃えるようになる。そのため、低い強度の運動を長く行う有酸素運動が一般的には進められるものの、1日に運動できる時間は限られているため、結局痩せられない人が多い。
「インターバル速歩」なら筋力と持久力を同時につけることができる!
筋肉をつけるには無酸素運動、持久力をつけるなら有酸素運動。スポーツジムならマシントレーニングとランやバイクを別々に行う必要がある。しかし、「インターバル速歩」なら、持久力の向上はもちろん、マシントレーニングほどではないものの、筋肉が数%大きくなり筋力もアップ。
◆スクワットと「インターバル速歩」で鍛えられる筋肉
「インターバル速歩」は、スクワットと同じ「全身の約60%の下半身の筋肉」を使って行うこともポイント。共通して働かせることができる筋肉は以下。
・お腹…速歩中は歩く姿勢をキープするため、意識して使うようになる。
・二の腕…意識して引くことで、二の腕のたるみが引き締まる。
・背中…背筋を伸ばすと「脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)」が働く。
・太もも…大股で歩くため、大腿四頭筋やハムストリングスなどをしっかり働かせることができる。
・お尻…スクワットではヒップアップ効果が謳われるが、「インターバル速歩」も同じ。
・ふくらはぎ…「腓腹筋(ひふくきん)」やヒラメ筋などのふくらはぎの筋肉は、インターバル速歩の方がきつく感じる。
◆筋肉が増えると基礎代謝がアップ
筋肉は熱を生み出す器官なので、筋肉がつくと基礎代謝がアップ。実際に体を使うときだけでなく、いつでも動き出せるようにアイドリングをしているため、筋肉は1日中エネルギーを生産し、消費した結果、熱を産生する。それが基礎代謝の大部分を締めている。つまり、筋肉が増えると、エネルギーと熱を作る場所が増えるため、何もしていなくても消費カロリーが増えるというわけ。また、筋肉が太くなるよりも多くの量の脂肪が減るため、筋肉がついて足が太くなる、という心配もない。
「インターバル速歩」のやり方
それでは、いよいよ「インターバル速歩」のやり方を紹介する。歩く際のポイントや注意点をチェックしたら、歩きたいコースを決めてトライしてみて。
◆速歩3分+ゆっくり3分
「インターバル速歩」のルールは、ややきついと感じる速歩で3分、ゆっくり歩きで3分を繰り返す。速歩とゆっくり歩きのどちらから始めてもよく、これを週に120分(毎日歩かなくてもOK)、つまり速足とゆっくり歩きをそれぞれ60分行うだけ。
【速歩3分】息が上がって汗ばむ程度
【ゆっくり3分】普段の速度で歩く
ややきついがどの程度かわからない人は、普段のスピードから少しずつスピードをあげて。2分以上歩いて息が上がるスピードがあれば、そこがややきつい速度。そのペースで3分間歩く。
◆速歩の基本フォーム
・目線は25mくらい前を見る(目安は電柱2本分よりやや手前あたり)
・肩は力まずリラックス
・肘は約90度に曲げ、手のひらは卵を持つように軽く握るか、自然に開いた状態で。
・足の指先で地面を押すように蹴り出す
・かかとから着地する
・歩幅はいつもより3~5cm広く
このポイント通りに歩けるのが理想だけれど、年齢や体調によってできない人も大丈夫。無理せず自分の歩きやすい形で「ややきつい」を続ければOK。
特別な道具などを用意する必要がなく、ウォーキングより時短で筋力アップ、ダイエット効果も期待できる「インターバル速歩」を始めてみて。
教えてくれた人:能勢博さん
医学博士、信州大学医学部特任教授。画期的な効果で、これまでのウォーキングの常識を変えたと言われる「インターバル速歩」を提唱。信州大学、松本市、市民が協力する中高年の健康づくり事業「熟年体育大学」などにおいて、20年余りで8700人に運動指導をしてきた。『ガッテン!』『ラジオ深夜便』(共にNHK)などマスコミ出演も多数。著書に『いくつになっても自分で歩ける!「筋トレ」ウォーキング』(青春出版社)、『ウォーキングの化学』(講談社)など。http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.HUyVuUkh.html
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