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【63歳オバ記者のリアル】「人生って何があるかわからない」と感じたある代議士との出会い

バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。240回目となる今回は、ある代議士との出会いについて。

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関わらないようにしていたのに…

皇居マラソンをしていた7、8年前のこと。マラソンとは名ばかりで、気持ちは走っているけど、実際は恋バナをしながらウォーキングをしている若い女の子に抜かれたりして、カッコ悪いったらありゃしない。

法務省赤れんがの前に立つオバ記者
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そんな私でも、ちょっと速足になるところがあったの。それは桜田門の前の警視庁と、赤レンガの法務省の前を通るとき。前と言っても、マラソンコースからは大きな道を挟ん向こう側だし、“お縄”になるようなことをした覚えはない、と思う。

でも何かイヤ。できれば一生、この建物の中にいる人とは関わりたくないと、そう思っていたんだわ。

しかし、人生って何があるかわからないね。3年前、都内のホテルで旧友のI氏の誕生会があって、少し遅れて「こんばんは~」と、懐かしいイントネーションで入ってきたのが、田所嘉徳衆議院議員。I氏が政治好きなことは知っていたけど、政治家を紹介されたのは初めてだ。

その田所氏が私の実家のある地域が選挙区で、共通の友だちが何人もいて、車をちょっと走らせたら、顔看板があっちにも、こっちにも、の人だったの。

「えーっ、なんだよ、それ! すごいじゃん」と、引き合わせたI氏はそればっか。東京の友だちのI氏は、私が茨城出身ということ以外知らないから、そりゃあ、驚くわよ。それ以上に田所氏も私も驚いた。

偶然の出会いから代議士の元でアルバイト

で、「何か役に立つことがあったら手伝わせて」と、押しかけアルバイトをすることに。それから足かけ3年目の秋、田所氏は法務副大臣に就任した。同時にものすごい数の胡蝶蘭が届いて、何が何だか…。そんなこともあった。

田所氏ってほんと不思議な人。周囲がバタバタしても、「大変でした~」「ご苦労様ですぅ」と、相変わらずの茨城弁で何の飾り気もない。

写真4枚

飾り気がないといえば、政策秘書のN氏もそう。淡々と日常業務をこなしている。そのN氏が、「代議士の法務史料展示室の案内は絶品。ほんと上手ですよ」と言うの。副大臣の前に就いていた政務官時代に、何度も聞いてそのたび感心したんだって。

あの「赤れんが棟」の中に、そんな“面白い”ものがあるなら、いつかは入ってみたいと思っていたら、なんと田所氏が私と友人を案内してくれるというではないの。もちろん飛びついた。

西洋のお城のような赤れんが棟に入ると、「桜田門の変から8年後に新政府ができたとき、最も重視したのは治安です。この赤れんが棟の住所は霞が関1丁目1番地。明治政府がどれだけ治安に力を入れたのか、改めて感じますよね」と、田所氏。

法務史料展示室は創建当時の司法大臣官舎大食堂。史料室に入ってすぐに、展示ケースの中から不敵な男の絵がこちらをにらんでいる。

刑務所で作られているグッズがシャレている

「彼は初代司法卿、今の法務大臣の江藤新平です。西洋の法制度を精力的に導入して、わが国の法制度の近代化を図った人です。また、犯罪者の手配制度も整えたのですが、自分が政府転覆の首謀者として新政府に追われる身になったときに、その精緻な手配手法によりつかまり、さらし首になったというのだから、まさに非業の死を遂げた人です」と、田所氏の案内は、いきなり興味を引く。

『キャピック』で売られているグッズ
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そのほか、板垣退助襲撃事件の捜査資料や、罪人にどんな入れ墨をしたかとか、磔(はりつけ)の絵など、時代劇をリアルにした図が展示されていて、現在の刑事法の原点を見ることができる。

「時代劇の大岡裁きで有名な、大岡越前ゆかりの灯篭と庭石が、赤れんが棟の脇の庭にあって、長い歴史の縮図が今も息づいています」

赤れんが棟を出て、全国の刑務所で作られている商品を販売している売店、『キャピック』に行く。

商品はどれも作りがしっかりしているし、なにしろ安い。それに、けっこうシャレがきいているのよね。監獄の「獄」の一文字がブランド名になっていたり、メモ帳は全用紙に迷路つき。

皮靴は市価の半額ほどで、愛用している田所氏は、「履きやすいから、こればっかり」だって。それらをひとつひとつ商品を手に取って見ていると、“恐ろしい受刑者”というイメージが消えてきて、そうか、人生の迷路の迷い込んだ人たちなのねと、あたたかな気持ちになってくるから不思議。

全国の刑務所で作られた商品は、『キャピック』まで足を運ばなくても、『キャピックショップ ウェブサイト』(https://www.e-capic.com/)でネット販売しているよ。手の込んだ家具や、家庭用品、アウトドア用品まで、刑務所の所在地の産業を生かした商品は、その品数にもビックリするはず。

映画『すばらしき世界』がヒットしていることだし、法と刑に興味が湧いたら、「赤れんが棟」の見学も、ぜひどうぞ。

オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
写真4枚

1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。

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