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《女性リーダーは小さく舌打ちした…》オバ記者(69才)がスキマバイトに挑戦「私に肉体労働をする資格はあるか?」実働7時間・報酬1万2千円“引っ越しの梱包作業”一部始終

引っ越しの梱包作業を行ったオバ記者(写真/イメージマート)
写真2枚

 将来への不安から定年後も働く人は増えているが、年齢を重ねると選べる仕事も限られていくる。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏(69才)が、“肉体労働”について綴る。

「いきなり2時間の待機」のハプニング

 こんなに疲れたのはいつ以来かしら……。自分の体であって自分じゃない。一歩足を踏み出すたびに、泥袋のような体がドロ〜ンと後からついてくる感じ。こうなるまで、いったい何をしたか。実は私、7時間ほぼ休みなしで、引っ越しの梱包作業のアルバイトをしたのよ。

 細切れな空き時間でも働けるバイト先を紹介してくれる「タイミー」という“スキマバイト募集サービス”があって、それを体験してみたの。「9時から14時まで5時間で6750円」に飛びついてみたわけ。

 22才からこの年まで私はライター歴47年だけど、生まれながらの労働者でもある。初めてのアルバイトは7才で、隣に住むおじさんのたばこを買いに行くお使いを毎日していた。小学生のときは、子守に農作業。高校進学後は商店に住み込みで働いて、授業料を稼ぎながら高校に通っていた。

 ライターになってからも、あれやこれや。数えたらなんと、34種のアルバイトをしていた。ここ7年は衆議院議員の事務所でお茶くみや国会議事堂のガイド役を務めたりして、「いよいよバイトの天下を取った?」と友達にからかわれたりするけど、実際は国会議事堂の広大な敷地を歩きまわる肉体労働だ。

 さて、タイミー初日。集合場所に行くと、すでに40才くらいの女性リーダーと60代の女性が待っていて、私が挨拶をするとリーダーが「荷詰めはやったことあんスか?」と微妙な敬語で聞いてきた。「いえ、初めてです」と答えると、ま、正直な人なんだね。「チッ!」と小さく舌打ちをしたの。

 それからだ。3人揃って依頼主の家のチャイムを鳴らすと、ドアを開けた奥様は「えっ?」と驚いている。依頼主と引っ越し業者間で作業日の食い違いがあったようで、いきなり2時間の待機になった。私たち3人はマンションのロビーのソファで待つしかない。「時給は保証されるから」とリーダーは言うけれど、その日はあいにくの台風。この仕事がなければ、気象病の私は布団にくるまっていたよね。

 それにしても、見知らぬ者同士の待機は気づまりだ。そういえば、「引っ越しの荷詰めは初めて」と言ったけれど、友人の引っ越し作業を私ひとりでしたことはある。荷造りは私ひとりでして、荷運びは業者のお兄さん3人が手際よくこなしてくれた。重いものは持たなかったし、当時の私は50代前半。思えば、いまより20才くらい若かったんだね。

お茶を飲もうと立ち上がったらクラッと立ちくらみ

 そして11時。いよいよ作業がスタートした。リーダーは依頼主から新居のどこに何を運ぶかを聞き、メモして家具に貼り付けていく。もうひとり、私より3才年下の女性が、段ボールを組み立てて荷詰めをしながら私にやり方を教えてくれるんだけど、私ののみ込みが悪いせいか、やるべきことの全体像がつかめない。

 たとえば、大きさの違う本をどうやって箱に収めたらいいのか? 考えていたら、「ボーッとしてないで、手、動かしてもらっていいですかッ!」と、いつの間にか私の背後に立っていたリーダーから指導が入った。「段ボール、もっときれいに積んでもらっていいですかッ!」とも。(……いや、怒らないで、初心者の私がすべきことを冷静に説明した方が効率よくないっスか?)と思うが、声には出さず。

段ボールを組み立てて荷詰めをする(写真/イメージマート)
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 それにしても暑い。どうしたことか窓は閉め切られていて、顔から吹き出す汗でフェイスタオルが1時間足らずで濡れ雑巾になった。キツいのは段ボールにつかまって立ち上がるとき。それを順々に積み上げるとき。あれは3時間が過ぎた頃か、依頼主の奥様からいただいたお茶を飲もうと立ち上がったらクラッと立ちくらみがした。4時間、5時間。やっと10分ほどの休憩をいただく。そして、さらに2時間。もう、こうなると欲も得もない。とにかく終わらせて帰りたい。

 そして後半になるにつれて、私はリーダーを尊敬の念で見ている自分に気づいたの。なんだかんだ言いながら最後の最後までぺースを落とさず動いていたのは彼女だけなんだよね。

 で、実働7時間で、稼いだお金は1万2066円。これを「安すぎ!」と言うのはカンタンだけど、一方で思うんだわ。「この金額でヨシと思える体の持ち主だけが働く資格がある現場なんだ」と。

 帰り道、区営の銭湯へ行って、660円を投じて高級マッサージ器に横たわるというケアをしても、翌日と翌々日、布団から出られなかった69才の私は、再び肉体労動にカムバックできるのか。あれから1週間。朝夕、自分の体と相談をしている。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2026年7月30日・8月6日号

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