【見どころ3】コロナ禍の今提示する、元気付けるメッセージ
これまでに3つのテレビシリーズを経て、映画館で観られることとなった本作ではありますが、ドラマを見たことのない一見さんでも問題なく楽しめる作品でもあります。先に述べたように、大勢の名優たちの姿を一度にスクリーンで見られるだけで楽しめますし、作品づくりの裏側や撮影に臨む俳優たちの日常のようなものが垣間見えることも興味深く感じるでしょう。
何より、終始エキサイティングなバイプレイヤーたちが織り成す物語にくぎ付けになること間違いなしです。
◆作品を通して感じる”心を一つに”の思い
新型コロナウイルスに翻弄される現在の環境下、私たちの誰もが自分のことで精一杯だと思います。それは映画やドラマの撮影に奮闘する俳優たちも同じこと。いま、映画界をはじめとするエンターテインメント業界の誰もが苦境に立たされています。
本作ではそのことが表立って描かれるわけではありませんが、難航する映画制作や「バイプレウッド」の危機などは、この社会情勢を暗に示しているものだとも感じました。
その意味で本作が提示するのは、“心を一つに”というシンプルなメッセージ。実現すべき目的があるのなら、守るべき何かがあるのなら、皆が一丸となるしかない。愛すべき「バイプレウッド」を思う気持ちは誰もが同じ。トラブル続きの映画づくりを通して、俳優たちがそう訴えかけて来るようでした。
100人が足並みを揃えることは簡単ではありません。けれども工夫することはいくらでもできる。やがて見えてくる本作の“まさか”のラストには、観る者を元気付ける、明るい希望が描かれているように感じました。
文筆家・折田侑駿さん
1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。折田さんTwitter