更年期になると、セックスの時に痛みを感じることが増えてきます。人に相談しにくいことなので、我慢している人も多いようです。
そこで、婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんに、更年期の性交痛の原因と対処法を教えてもらいました。
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原因は?更年期に起こる性器の変化
更年期世代の性の悩みで最も多いのが、性交痛です。挿入時に以前はなかった違和感があったり、ヒリつくような痛みを感じたり、激痛で挿入自体が難しかったりと、痛みの程度はさまざま。
半数以上の女性が経験する症状
今までスムーズにできていた行為がうまくいかなくなると不安になりますよね。ですが、性交痛は更年期の女性の半数以上が経験する症状なので、特別なことではありません。心配しなくても大丈夫です。
女性ホルモンの減少が性交痛の原因
性交痛は、女性ホルモンが減少することで起こります。更年期は体全体が乾燥していく時期でもありますが、腟も分泌物が減って乾きやすくなり、粘膜そのものも薄くなっていきます。そのため、ちょっとした刺激にも傷ついて痛みが出やすくなるのです。下着がこすれて痛い、尿がしみる、かゆみがあるといった症状なども、腟や外陰部の乾燥が原因です。
閉経後の腟粘膜萎縮
さらに閉経後は腟粘膜が萎縮することにより、性交痛が強くなる傾向があります。困ったことに、痛いからとセックスをしなくなると腟の萎縮が進んで、ますます痛みが強くなる可能性もあります。ここでお伝えしたいのは、「痛みを我慢しないでください」ということ。少しでも違和感や痛みがあるときは、恥ずかしいなどと思わずに、婦人科で相談することをおすすめします。
ホルモン錠剤など性交痛の対策
性交痛の症状をやわらげる方法は、いくつかあります。
潤滑剤を利用する
中でも、手軽に試せるのがゼリーなどの潤滑剤でしょう。たっぷりと潤いを補うことで、乾燥による痛みが緩和されます。挿入時に男性器、女性器の両方に塗布しても構いません。ドラッグストアやネットショップで購入できるのも便利です。
女性ホルモンの腟錠
腟に挿入し、粘膜から吸収されるホルモン錠剤です。1日1錠入れることで粘膜が柔らかくなり、性交痛が緩和されます。ホルモン補充療法のように、全身に作用するわけではありません。保険も利きますし、性行痛に悩むかたの中には利用されるかたも多いですよ。
HRTなど性交痛に有効な治療法
治療するというのも選択肢の1つです。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)とは、その名の通り、少なくなった女性ホルモンを薬で補う治療法です。女性ホルモンを補うことで、腟乾燥や腟萎縮といった症状を根本から改善することが可能になります。ホットフラッシュなど、他に更年期症状がある場合におすすめです。
女性ホルモンが全身に作用する治療ですが、各種検査をしてから始めるので安心です。
それぞれの価値観を大切に
性交痛は年齢とともに、誰にでも起こること。積極的に治療して、いくつになってもセックスを楽しむのもいいですし、挿入を伴わないスキンシップで愛情を表現するのも素敵です。性は必要不可欠なものではないので、更年期以降はそれぞれの価値観やパートナーとの関係性の中で、ご自分に合ったセックスライフを選ぶとよいでしょう。
教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん
まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/
構成/森冬生