バツイチ独身のライター・オバ記者こと野原広子(64歳)が、“アラ還”で感じたニュースな日々を綴る人気連載。
258回目となる今回は、コロナ禍でも減らない繁華街の人たちについて。
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2度めのワクチンから3週間
毎日、夕方にスマホを開くと、東京都の感染者数が1000人超えたという通知が送られてくる。なのに、数日前から私の住んでいる秋葉原の駅前は、日を追うごとに人が集まってきているんだわ。昼もそうだけど、夜はもっと。
さすがに地元で”ひとり昼酒”をする気にはならないけど、2度目のワクチンを打ってから3週間過ぎている私。日曜日になると御徒町駅前のスーパー『吉池』へウォーキングがてら買い出しに出かけているの。
片道25分のルートで、歩くにはちょうどいいのよ。で、日曜日の昭和通りは人気もまばらで、左に折れて宝石の問屋街を突っ切ってもほとんど人けはない。それが御徒町駅前に近付くに連れて、強烈な食べ物のにおいが漂ってくるんだわ。
焼肉、から揚げ、魚を焼いているにおい。ほどよく動かした体に空腹が加わると店に吸い込まれそうになるよ。実際、コロナ禍前は、酒好きな女友達といっしょだと、あ、うんの呼吸。「行く?」「うん」で決まり。で、気がつくと午後3時から飲み始めて、夜10時過ぎまで7時間飲み続け、なんてことになる。ひとりだとその「行く?」もいらない。
一軒の海鮮居酒屋の前で足が止まった。黒看板にいい感じの手書きでメニューが書かれていて、店をのぞくと、30歳から50歳くらいの女性が何人か、ぽつりぽつりとひとり飲みしている。午後4時前でまだ日は高い。ああ、キンキンに冷えたレモンハイか~。
「えいっ!」
すんでのところで踏みとどまって、当初の予定通り、『吉池』へ。
アメ横は人と人の肩が触れ合うような密集
「ウソッ!」
御徒町駅前に着いてアメ横の方を見たら、いきなりの黒山の人だかりに、思わず口をついて出てきたわよ。さすがに昔ながらの「らっしゃい、らっしゃああ~い!」というダミ声はないけれど、道が狭いせいか人と人の肩が触れ合うような密集だ。コロナ禍って、どこの世界の話?
『吉池』で新鮮な魚と野菜を買って、さあ、元の道を帰ろうとしたんだけど、足はアメ横の2本裏通りを通って、上野駅前の丸井へ。ここの『ココス』で買いたいものがある、と言うのは半分ウソで、『丸井』までの途中にある昼からやっている居酒屋を覗きたくて仕方がなかったのよ。時間は午後4時半ごろ。買い物をした後だから、入ることはないけど、見るだけ見たい。
「やっぱりね~」
外までテーブル出している店は例外なく満席。見たところ、年齢層は30代中心で若さが爆発している。おばちゃん、お呼びでない? ほんの30分前、御徒町駅の向こうでひっそりと(?)営業している店の前で、あと2秒考えたら入っていたけど、繁盛店だと居場所がない。酒飲みって猫と一緒で、いつける場所とそうでない場所は、瞬時に判断できるのよね。
中高年の家飲み、昼飲みが増えた?
そういえばコロナ感染者の数は、当初、感染しやすいと言われた高齢者はあっと言う間に激減。優先接種したワクチン接種のおかげもあると思うけど、外飲みをしないもの。てか、こう暑いと外にも出やしない。
その反面、今まで「お酒はお付き合い程度」と言っていた中高年の家飲み、昼飲みがヤバいことになっている気がして仕方がないんだわ。
自分の体験からいうと、依存症って自分に対するいい感じの言い訳と、ちょっとしたきっかけがあるとすぐに小さな道が出来る。その道が太くなるのはあっという間なんだわ。
だって日が高いうちに飲むお酒はおいしいもの。たいがいのことがどうでも良くなって、あとは野となれ山となれ。コロナ感染者はワクチン接種で減るだろうけど、外飲み禁止でアルコール依存症がひそかにもっと怖えていくような気がしている。
ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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