「最大2~3合炊きの炊飯器」と聞くと、どんな炊飯器を思い浮かべるでしょうか? ひとり暮らしを始めたばかりの若い学生や新社会人、新婚夫婦をターゲットにした、リーズナブルで性能もシンプルな炊飯器ではないでしょうか。
ところが今、炊飯容量が最大3合前後の小型炊飯器に、新しい風が吹いています。家電ライターの田中真紀子さんに、小容量炊飯器のトレンドを教えてもらいました。
小容量タイプの米のおいしさはグレードアップ
「少し前では、確かに若い人向けのシンプルな機能の炊飯器がメインでした。それが今はシニア層の人口も増え、高機能タイプを使ってきた層から、『子供も巣立ち、ご飯を炊く量も減ってきた。ご飯のおいしさはそのままにコンパクトな炊飯器が欲しい』といったニーズが増えています。
こうした声を受け、近年は最上位モデルに近い機能を備えた約3合サイズのモデルが人気になっているのです」(田中さん・以下同)
買うなら1万円以上する「IH式」か「圧力IH式」を
コンパクトでもおいしく炊ける炊飯器には、どのようなタイプがあるのでしょうか。
「多いのは、最上位モデルをそのまま小容量にしたような炊飯器で、7~8万円程度の高価格帯。もちろん味はお墨付きです」
一方、低価格帯の相場は数千円から1万円未満。田中さんは、おいしさを求めるなら低価格帯に多い「マイコン式」という炊飯タイプのモデルより、1万円以上する「IH式」あるいは高価格帯の「圧力IH式」のモデルをおすすめします。その理由は?
「昔ながらの『マイコン式』は、釜底のヒーターで底面だけ加熱するため熱ムラが起きやすい。それに対して、近年主流になってきている『IH式』は電磁誘導加熱を使って釜そのものを発熱させてお米を炊くため、高火力で芯までしっかり。全体的にムラなく炊飯できます。さらに圧力をかける『圧力IH式』では、100℃以上の高温で炊飯して、玄米でも柔らかくもっちりと炊いてくれます」
「IH式」「圧力IH式」の中でも特におすすめの小容量炊飯器を、田中さんに挙げてもらいました。
【1】象印マホービン『炎舞炊き NW-US07』
お米のおいしさを追求したい人は、圧力IH式で最大4合炊きが可能な、こちらがおすすめとのことです。
最上位モデルのおいしさを、4合炊きで実現
「『炎舞炊き』シリーズは同社の最上位モデル。かまどの炎のゆらぎを再現するため、底面のIHヒーターを4つのブロックに分け、対角線上の2つのヒーターで同時加熱。一般的な炊飯器では底面のIHヒーターが1つしかないのに対し、本製品は2つのヒーターでその4倍以上の火力で炊くので、出来栄えも格別。お米の甘みが引き出された、高級モデルならではの極上のご飯が炊けます」
また、幅23cm×奥行30.5 cm×高さ20.5 cmというコンパクトサイズでありながら、最大4合まで炊けるのも魅力です。
「『炊飯器をコンパクトにしたいけれど、3合まで減らすのは不安』という人にちょうどいい容量です」
【2】愛知ドビー『バーミキュラ ライスポットミニ RP19A』
炊飯はもちろん、調理鍋としても使いたい人は、1台2役を兼ねる『バーミキュラ ライスポットミニ』もおすすめです。炊飯は0.5合から最大3合まで、IH式でおいしく炊き上げます。
バーミキュラ自慢の「無水調理」もできる炊飯器
「鋳物ホーロー鍋として定評のある『バーミキュラ』シリーズから生まれた炊飯器です。おいしいご飯を炊けるだけでなく、密閉性と保温性に優れたバーミキュラならではの無水調理や低温調理、そして調理後の保温までできます。価格は安くないですが、『電気調理鍋もほしい!』と思っていた人にとっては、1台でおいしいご飯とおかずを作れるため、実はお得かもしれません」
鍋部分の直径は19cm、容量は2.1Lと、とってもコンパクト。炊飯器に見えない、スタイリッシュなデザインにも心が躍ります。
【3】日立グローバルライフソリューションズ『おひつ御膳 RZ-BS2M』
炊きたてご飯はついおかわりしちゃう! そんなニーズに合うのが、ひょいっと本体を外せ、手軽に食卓に持っていける『おひつ御膳』。
炊きたてご飯をダイニングテーブルでよそえる幸せ
「ちょっとユニークな発想で作られたのがこちら。熱源である下の台と、その上に載せているおひつ部分が簡単に分離するため、炊き上がったら、まさにおひつのようにそのままテーブルに持っていくことができ、席から立ち上がらずにおかわりもよそえます」
おひつとして分離した時の大きさは、幅も奥行きも21cm前後とコンパクトなため、ダイニングテーブルに置いても場所をとりません。また、「おひつ」という名だけあり、保温性も抜群。
「全周断熱構造なので、約2時間は約65℃をキープ。ただ、炊飯容量は2合まで。まとめて炊いて冷凍庫に保存するというよりは、炊きたてご飯を味わいたい時に使うなど、必要に応じて使い分けるのもいいかもしれません」
いかがでしょうか。今は小容量タイプでも、ご飯がおいしく炊けるのは当たり前。さらにプラスアルファの機能まで期待できるのです。目的に応じて選べるほどさまざまな炊飯器が出てきたのは、うれしいですね。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん
白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。https://ameblo.jp/makiko-tanaka89/
取材・文/桜田容子
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