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【64歳オバ記者 介護のリアル】要介護5の93歳母ちゃんが1か月半で歩けるまでに。回復のきっかけとなった「食」

ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、“アラ還”で感じたニュースな日々を綴る。

オバ記者
1か月半前から茨城の実家で自宅介護を続けるオバ記者
写真7枚

1か月半前から、茨城の実家で93歳「母ちゃん」の介護を開始。寝たきり状態で病院を退院してきた要介護5の母ちゃんは、今では外を歩けるまで回復しました。回復の大きなきっかけは「食」でした。オバ記者が振り返ります。

* * *

栄養ドリンクも薬ものもうとしなかった

退院した日、自宅のベッドで静かに寝ていた母ちゃんが突然「おかあちゃ~ん」と声を出した! 母親は母ちゃんが13歳の時に亡くなっているし、私の知る限り「お梅さん」と呼んでいた。誰だよ、おかあちゃんって!

オバ記者の母
退院したときの母ちゃん
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退院させて自宅介護をすると言ったものの、母ちゃんの認知度はどのくらいなのか、まったくわからない。病院ではうわごとをいうか、寝たきりかでほとんど会話は成立しなかったとT看護師さん。

「自宅介護がムリだと思ったらいつでも言ってくださいね」と言ってくれたのは地元の地域医療センターのU医師だけど、医療チーム全員が不安そうな視線を私に向けていたっけ。

翌朝、病院から支給された栄養ドリンクのストローを歯に当てたら、どうにか口に加えたけど吸わない。薬は錠剤も液剤もかたく口を結んでのまないんだわ。

「何が食べたい?」と聞くと、「ところてん」ってそればっかり。

とはいえ、病院からは栄養価の高いものを食べさせてください」と言われているので、レトルトの卵おかゆにいただき物の刻みうなぎを混ぜて口に運ぶと、二口、三口。

「うどんが食いて―な」で完食

食欲が上向くきっかけは退院1週間目に親戚のIおばさんさんが看護師のお嬢さんを連れて来てくれた日だ。

うどん
うどんを完食
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Iおばさんと会えたことをとても喜んだ、とこの日の介護当番だった弟は言うけれど、母ちゃんのほうを見るとほぼほぼ眉間にシワを寄せっぱなしだからピンと来ない。

だけど、その夜は「うどんが食いてーな」と言うので作ったら完食したんだわ。「甘くてやだ」と残していた粉薬も水に混ぜてのみ干したの。

「これをのまねーと点滴だかんな」と言うと、放棄しようとしかけたのを目をつぶってのむの。その姿がおかしくて、かわいくてね。私もやる気スイッチが入ったんだわ。

小皿料理に目がキラリと光った

黄色のランチョンマットに小皿料理を並べてだしたときの母ちゃんの反応は思った以上だったね。目がキラリと光って黙ってフォークをとって、黙々と口に運びだしたのよ。何も言わなくても、「生きる気満々」と体中から発信していて、作った私も幸せな気持ちになったのよ。

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夜中、寝たら「オシッコ!」と起こされること3回、4回、というのが何日も続くと、もう何でもいいや、どうにでもなれと投げやりない気持ちになるけど、小さな好転を目の当たりにすると、ま、いいかなって。

母ちゃんに生涯いちばんのご飯を!

“介護娘”の何よりの励みは母ちゃんの笑顔、なんてこと、私が言うか?

この婆さんの顔を見れば、どうやってお金をくすねてやるかしか考えてなかった私。しかもそれが20年も続いたんだから、まあ、どこをどうしてもほめられた娘じゃないって。

オバ記者が母に作ったご飯
この日も小皿料理を並べた
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原因はギャンブル依存症。その話をするとややこしくなるからここでは書かないけれど、母ちゃんからの“寸借詐欺”をやめようと思った瞬間だけは昨日のように覚えている。

母ちゃんと会う約束をした東京の親戚の家へひと足早く行ったら、ついうとうと寝ちゃったんだわ。ガタンとドアが開く音がして目を覚ますと、「ヒロコ、来てたのか」と満面の笑みなのよ。

まいったねー。こんなバカを娘だからというだけで“騙され”続けてくれてたかと思うと、いたたまれなくなったわさ。若い過ち? いやいや50直前だよ。

そんなわけで母ちゃんに、いまこそ生涯いちばんのご飯を食べさせてやろうと奮起しているのは、これぐらいのことをしないとバチがあたりそうだからよ。

こうして自宅介護1月目が過ぎ、地元の地域医療センターへ5日間の短期入院。私をサポートしてくれる弟夫婦もひと休みできることになったの。

でも母ちゃんにしてみたら指折り数えて退院を待っていたのよね。ご褒美に弟が母ちゃんの好きな餃子と酢豚ほかいろいろを家のテーブルに並べたら、一心不乱。「ヒロコも食えな」と言った時は、あらかた酢豚の肉はなくなっていたの。

オバ記者の母親
自宅の近くを歩く母ちゃん
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そんなことで、母ちゃんはいまや地域医療センターでは「奇跡の患者」よ。それはもちろんものすごくうれしいことだけど、最近、母ちゃんに声を荒らげることが増えてきてしまったんだわ。その話はまた改めて。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。

●【266】寝たきりだった93歳母ちゃんが、自宅介護1か月半で外を歩けるまで劇的回復したワケ

●【265】「水谷豊、いい男だなぁ」、要介護5の93歳母ちゃんがさらに回復

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