「セカ活」という言葉を耳にしたことはありますか? セカ活とは子育てや家事などが一段落した40~60代の女性たちがセカンドライフにおいて、何をして生きていくと幸せかを考える活動のことです。
平均寿命が伸び、“人生100年時代”といわれるいま、折り返し地点で立ち止まって考えることはその後の人生を豊かにするために大切なこと。
40代以降の女性が今後やりたいことを探し、選び、行動するまでを支援するサービスを提供している「セカミ―」代表の増田早希さんに、セカ活をはじめるコツを教えてもらいました。
一段落した女性が感じる「心にぽっかり空いた穴」
これまで多くのアラフィフ以上の女性たちと向き合い、セカンドライフに関する聞き取りを行ってきた増田さんは、子育てや家事が一段落した女性は、家庭を持ち、自由な時間が増えたにもかかわらず、心に穴が空いたような孤独感を持っているケースが少なくないと話します。
「進行管理能力が高い、繊細な感情のくみ取りが得意、仕事と子育ての両立で時間の使い方がうまいなど、皆さん多彩な経験をしています。にも関わらず、それが自信につながっておらず『私なんか……』と謙遜する人が非常に多い印象です。
時代的な背景もあるかもしれませんが、奥ゆかしいことが美徳という価値観もあるでしょう。また、結婚や出産と同時に仕事をやめて家族のために生きるのが“普通”の時代を過ごしてきている世代の女性にとっては、社会とのつながりが希薄で、肩書きとなるものが少ないということも関係していると思います。
仕事や子育てがひと段落すると、お弁当作りやフルタイムでの出勤など“やらなければならないこと“が激減します。自分のために生きようと切り替えができる人もいますが、多くの人は言いようのないモヤモヤを抱え、心にぽっかり穴があいたような気持ちになりながら、人生の折り返し地点を過ごします」(増田さん・以下同)
うつ病を発症するケースも
こうした「心の穴」は体にも影響が及ぶリスクがあることも否定できないでしょう。実際、厚生労働省の「うつ病・躁うつ病(男女年齢別総患者数)」2017年の患者調査によると、40代女性、60代女性、50代女性の順に罹患率も高くなっています。
「仕事や家事、介護など誰かのために一生懸命に生きてきた女性たちが、社会の中で居場所をなくし、本人たちすら自分の力を信じきれなくなっている現状があると思います」
趣味を始めたり生き方を変えたりすることでもOK
こうしたモヤモヤを解消してくれるのが、自分のために、やりたいことを探すセカ活です。
「やりたいことが見つかったかたの多くが、生き生きとした表情で新たなステージに立ち、活躍しています。身近な体験や趣味が仕事につながるケースも少なくなく、例えば実家のたんすに眠っていたたくさんの着物を見て“今からでもひとりで着られるようになりたい”と着付け教室に通い始めた女性は、講師として活動するようになりました。
50代後半で引っ越しをした際にその大変さが身に染みて、コツを学ぼうと片付けマイスターの資格を取ったことでそれを生かしたセミナーの仕事が入ってきたという人も」
仕事だけでなく、趣味を見つけたり生き方を変えたりすることも「セカ活」だと増田さんは話します。
「セカ活の目的は、働くことだけではありません。人生が充実することが重要なので、自分にとって心が動くものや、好きなことを見つけることを第一に考えてください。学んでみたい分野がある人は大学に行ったり留学したり、DIYが好きだという人は古民家を改造してセカンドハウスにしてみたいというのでもいいでしょう。
実際に、ひとり暮らしを始めたり50代で移住して縁もゆかりもない土地で暮らし始めたり、生活に大きな変化があった人も多いですよ」
セカ活の始め方とポイント
「好きなことを探そう」そう言われてもこれまで忙しく働いてきた日々を振り返っても、すぐに浮かばない人も多いでしょう。悩んでしまった人は、「関心シート」への記入から取り組んでみてはいかがでしょうか。
「このシートは、臨床心理士とともにセカミーで作成しました。いくつかの項目があり、関心があるものに◎、○、△、×で関心の度合いをつけていきます。あまり深く考えすぎずに、感覚的に記入していくのがコツです。記入後分析シートと照らし合わせることで、関心のあることはどんな項目が多いのかが見えてきます」
興味関心のあるものを探っていくなかで、今まで自分が積み上げてきたスキルや経験、知識がつながってくることも少なくないそうです。
シートに取り組みながら、毎日の生活の中で、自分のために時間を使うことを意識するのもいいでしょう。
1日30分でも自分の時間を作る
「毎日の生活がルーティーン化している人は、1日の中で30分でもいいので、自分のための時間を作ってみてはどうでしょうか。例えばパートの帰りにカフェに寄ったり、図書館に足を運んだりと、新しいことに出会えそうな場所に一歩足を踏み入れてみてください」
自分と向き合いながら、心惹かれるものや、気になることが出てきたら、一歩踏み出してみましょう。
合わなければやめていい
「興味のわくものが出てきたり、やってみたいことが出てきたりしたら、躊躇せずに行動してみてください。先生が教えるだけでなく、交流できるようなコミュニティがついた習い事に行ってみたり、講座を受けてみたりいろいろチャレンジしてみてください。
無料で文学からファッションまでさまざまな学びの場所を提供してくれる『シブヤ大学』や趣味でつながって仲間ができる大人世代のSNSである『趣味人倶楽部』など、手軽に始められるサービスが最近充実してきているので、ぜひ活用してみてください。
コツは“合わなければやめていい”と自分に言い聞かせることです。なんとなく手探り状態のときは、いろいろな場に顔を出してみて、たくさん経験をして、合わないなと思ったらすぐに撤退しましょう。辞めることは決して失敗ではありません。合わないということを知ったという経験になります」
興味のある分野の資格を取ってみることもあなたの背中を押してくれることにつながります。
「世の中にはたくさん資格があります。好きなことを始める前に、自分を勇気づけるための資格取得という考え方もいいと思います。資格をとるために勉強し、時間を使ったという、このやり切った経験が、人生の次へのステップに向けて、自信につながって後押しをしてくれるはずです」
50代はまだまだ人生の折り返し地点です。いきいきとした充実感のある毎日を過ごしたいけれど、動けなくて迷っている方は、ぜひセカ活を始めてみませんか。
◆教えてくれたのは:株式会社セカミー代表取締役・増田早希さん
40代以降の女性向け”セカ活”コミュニティサービスを運営する「セカミー」代表。現在、セカ活支援の一環として40代以上の女性に向けた「わたし目線の文章スクール」https://note.com/secomeを開催中。