要注意なのは起業と離婚
定年退職後のことを見越して、今こそ起業と思ったり、第二の人生のために1人に戻りたいと思ったりするかもしれません。けれど、それが経済的には逆効果になることもあります。これらのリスクも考えてみましょう。
起業は自身のお金で始めないで
先行き不安なご時世で、一流企業に新卒入社すれば一生安泰、ということもなくなりつつあります。『老後の資金がありません!』では、松重豊さん演じる主人公の夫・章も、突然会社が倒産するという不幸に見舞われていました。そこで、元気がある50代の今こそ、起業をしようと意気込む人もいるかもしれません。
開業をするときに気をつけるべきは、自分や身内のお金を使わないことです。自分だけの考えでは計画や見通しが甘く、短期で失敗してしまうという最悪のケースに陥りかねません。
そこで、日本政策金融公庫などを使って、他人に事業の内容を見てもらうことが必要です。第三者がお金を貸してあげてもいいなと思える事業計画が立てられるということは、ビジネスの成功率は高いということです。

熟年離婚はリスクが高い
長年の不満を抱えている夫婦が、熟年離婚するケースが増えています。厚生労働省が2018年に発表した「同居期間別に見た離婚件数の年次推移」によれば、結婚して20〜25年経ってから離婚する夫婦は非常に多いです。
長年の夫婦生活で耐えられないことがあるのもわかりますが、実際に離婚すると、その後の生活がかなり苦しいものになります。いわゆる「離婚分割」で、夫の年金を妻にも分けることができたとしても、夫婦合わせた年金額は平均的に20万円程度です。
2人で20万円だったらやっていけるかもしれませんが、1人あたり10万円ずつでそれぞれがアパートを借りて生活するのは至難の業。そうしたことを考えると、夫婦仲の改善は、老後の生活の安定には大切なことだといえるでしょう。『老後の資金がありません!』の主人公夫婦のように、なんでも話し合える関係で、仲良くやっていけるのが一番なんです。
◆教えてくれたのは:経済ジャーナリスト・荻原博子さん

おぎわら・ひろこ。1954年、長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。経済の仕組みを生活に根ざして解説する、家計経済のパイオニアとして活躍している。著書に『私たちはなぜこんなに貧しくなったのか』(文藝春秋)、『一生お金に困らない お金ベスト100』(ダイヤモンド社)など多数。10月30日公開の天海祐希主演映画『老後の資金がありません!』に本人役で出演。https://rougo-noshikin.jp/
構成/イワイユウ