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ベルリン映画祭で銀熊賞『偶然と想像』、魅力的な俳優陣と突出した演出力が化学反応

『偶然と想像』劇中写真
濱口竜介監督による最新作『偶然と想像』(C)2021 NEOPA / fictive
写真9枚

濱口竜介監督(43歳)による最新作『偶然と想像』が12月17日より公開中です。昨年開催されたベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した本作は、タイトルにあるとおり「偶然」をテーマとした3つの異なる物語を描いたもの。古川琴音(25歳)や渋川清彦(47歳)ら話題のキャストが各ストーリーを彩り、観客を魅了する珠玉の短編集となっています。本作の見どころについて、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

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「いつまでも観ていたい」洗練された作品

本作は、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された映画『寝ても覚めても』で商業デビューを果たし、西島秀俊(50歳)主演作『ドライブ・マイ・カー』で2021年カンヌ国際映画祭にて4冠を獲得、さらにはゴールデングローブ賞で非英語映画賞を受賞した濱口竜介監督による初のオムニバス作品です。『魔法(よりもっと不確か)』『扉は開けたままで』『もう一度』と題されたそれぞれの短編作では、「偶然」というテーマが一貫して描かれています。

『偶然と想像』劇中写真
(C)2021 NEOPA / fictive
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「偶然」をテーマに上品な3つの短編が展開

各作品の概要は次のようなもの。1作目『魔法(よりもっと不確か)』では、タクシーで帰路につくモデルの芽衣子と、仲の良いヘアメイクのつぐみの“恋バナ”が展開。つぐみから「最近出会った気になる男性」との惚気話を聞かされた芽衣子の、ある “選択と行動”が描かれます。

『偶然と想像』劇中写真
(C)2021 NEOPA / fictive
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2作目の『扉は開けたままで』は、単位取得が認められず就職内定も取り消しとなった男子大学生が教授を逆恨みし、同級生の奈緒に色仕掛けの共謀をもちかけるという企みの顛末を描いたもの。そして3作目の『もう一度』は、仙台駅のエスカレーターで20年ぶりの再会を果たした2人の女性による、驚きの会話劇が展開します。

3つの作品は、「偶然」がテーマであること以外、それぞれに関連があるわけではありません。しかしいずれも、「いつまでも観ていたい」と思わずにはいられないものとなっています。どこかにありそうな日常を描いた(恐らく)低予算の作品ながらも、物語の構成やセリフが非常に洗練されている上品な作品です。

そして、俳優たちにできるだけ感情を抜いた状態で演技することを求める濱口監督ならではの演出によって、各俳優が新たな顔を見せているのではないかと思います。優れた俳優陣と突出した演出力は化学反応を起こし、多くの観客に驚きと、至福の時間をもたらしてくれることでしょう。

気鋭の若手から濱口組常連まで魅力的なキャストが出演

本作は“名匠”とも言われる濱口作品とあって、気鋭の若手俳優から濱口組の常連まで、魅力的な布陣で成り立っています。『魔法(よりもっと不確か)』には、古川琴音、中島歩(33歳)、玄理(35歳)らが登場。話題作への出演が相次ぐ古川が主演を務め、先輩俳優2人を相手に、ウィットに富んだ会話劇を繰り広げます。

古川の演じる芽衣子は非常に弁の立つ女性であり、次から次へと出てくる言葉の連弾は、さながらマシンガンのよう。本作を観た方は、古川のポテンシャルの高さを知ることとなるでしょう。

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(C)2021 NEOPA / fictive
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俳優たちの演技を堪能できる

続く『扉は開けたままで』に主に登場するのは、渋川清彦、森郁月(33歳)、甲斐翔真(24歳)ら3人の俳優。少し風変わりな教授に自分の将来を潰されたと逆恨みする青年に甲斐が扮し、仕方なく彼の復讐に色仕掛けで協力しようとする同級生を森が演じています。

そして彼らのターゲットとなる教授を演じているのが渋川。これまでにも濱口作品への出演経験のある彼が、本作における濱口監督の挑戦を後押ししている印象です。基本的に誰もが感情を抑えた演技をしているため、物語がどう転んでいくのかがより分からない、非常にスリリングな作品です。

最後の『もう一度』は、占部房子(43歳)と河井青葉(40歳)という、これまでの濱口作品を支えてきた2人の女性俳優の“対話劇”。思いがけないところで20年ぶりに再会した女性2人の他愛の無い会話が、次第に切実さを帯びた話に変わり、やがてこの「偶然」という言葉を冠したオムニバス映画の最後を飾るに相応しいクライマックスへと辿りつきます。いずれの作品も、“俳優の演技を堪能する”という側面が強くあるのではないかと思います。

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