女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第12回は、寧々さんお気に入りの「おむすび」について。
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私はおむすびが大好きだ。今までに忘れられないおむすびが三つある。
一つは、友達と旅行に行った時。朝早い待ち合わせだったので、バタバタしながらもお互い寝坊せずに無事に会えたのだが、彼女が鞄の中を何やらごそごそしだした。
どうしたのかな? 忘れ物でもしたかしら? と思っていたら、彼女が出したのは、なんとおむすびだった。びっくりした! なんという心遣い。さすがです。しかもそのおむすびは玄米のまあるい可愛らしいおむすびだった。そのおいしいこと! 彼女が作る料理はなんでもすごく美味しいのだが、おむすびも絶品だった。おむすびもだが、彼女の優しい気持ちに心がすごくあたたかくなった。
もう一つは、子供が小学生の頃、保護者も参加する学校の授業で5月か6月に群馬で田植えをした時。子供達が生き生きした表情で田植えをさせてもらっていた光景が忘れられない。
そして秋になり稲刈りをさせていただいた時、地元の方達が、炊きたてほやほやの塩むすびをたくさん作ってくださった。一粒一粒つやつやして美しいお米。びっくりするくらい美味しかった。何個でも食べられそうだ。体中が喜んでいると感じるおむすびだった。子供達も大人も笑顔と笑い声にあふれていた。
幸せな気持ちになれる沖縄のおむすび
そしてもう一つは、沖縄の「めぇみち」というお店の、博美さんが握ってくれるおむすびだ。色んな種類のおむすびがあり、何を頼もうかワクワクしていつも迷う。あれも食べたいこれも食べたいと。
そして、彼女が心を込めておむすびを丁寧に握ってくれる姿を見るのが、私は大好きだ。窓から風がさわさわと心地よく、ゆったりした時間がながれる。座って、博美さんの手の動きをみていると、ほんわかした気持ちになり癒される。
そして海苔にまかれたころんとしたおむすびが最高だ。一口、一口ほおばるごとに、自然と嬉しくてにやあ~としてしまう。ふと隣に座っている息子をみたら、同じようににやあ~としていた。その横の母をみると、これまた同じようににやあ~としていた。親子三世代、同じ反応だ! 面白い!
おむすびと一緒に頂くカチュー湯(お湯にかつおぶしをいれたもの)やスーチカー(塩豚)や彩り綺麗な野菜。幸せだなあ~と心から思う。博美さんのおむすびは、体の内側から力がわいてきて、よし!エネルギー満タンになりました!ありがとうございます!という感じだ。博美さんのご主人が作ってくれるデザートも最高に美味しくて感動です!
博美さんのおむすびを握る姿をみてから、自分のおむすびの握りかたも変わった気がする。それまではパッパッと握っていた感じだったが、そんな自分を反省して、家族に作るおむすびも心を込めて丁寧に、ゆっくりとにぎるようになった。博美さんのおむすびから、色々な事を教えてもらった気がする。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。