主婦の「引け目」を捨てよう
さて、男性脳のゴール指向、まだあります。他者の行動を把握するときも、ゴール指向型なのです。
妻が出かけるとなったら、「どこに行く?」「何時に帰る?」を気にしますよね。あれも、ゴール確認なのです。妻が向かう先という第1のゴールと、帰宅という第2のゴール。この2つを定めないと、「妻の外出」という現象をうまくつかめないのです。
このセンスは、仕事の現場では不可欠です。あらゆる工程のゴールを把握して、無駄のないコントロールをするために。昔々、狩りをしていた頃の男たちも、獲物という目標に向かって、全員で邁進していたはず。「目標を見定めて、成果を挙げる」という何万年の癖が男性脳の本能となっているのです。
「どこに行くんだ? 何時に帰る?」は、主婦の脈拍数が跳ね上がる質問と言われています。妻にしてみれば、「主婦がなに出歩いてるんだ」という威嚇に聞こえるから。でもね、これ、決して妻の外出を責めているわけじゃないのです。単なるゴール確認。男たちの、せつなる本能なのです。
というわけで、「どこに行くんだ? 何時に帰る?」と聞かれても、ムカつかなくて大丈夫。「デパート。夕方には、おいしいもの買って帰るね」と明るく言えばいいだけです。
「外出するのは気が引ける」と思う必要はない
ついでに、「外出するのは気が引ける」という気持ちも捨てましょう。人生100年時代、定年退職後、まだ40年もある…! 気が引けるなんて言ってたら、やってられないでしょう。十分に年老いた日々のことを考えたら、妻が元気に外出できるなんて、祝福してもらっていいくらいですものね!
わが家は、夫が家にいるので、宅配便は受け取ってもらえるし、ちょっとした用事が頼めるし、洗濯は完璧だしで、本当に安心。気持ちよく外出できて、感謝しかありません。
男性脳は、単なる確認をしているだけなのに、妻のほうが夫のことばを裏読みして、勝手に引け目に思ってるってこと、脳科学の光を当ててみると、案外あるんです。
女は、無邪気なほうが勝ち。たとえ、向こうに多少の悪意があっても、妻が無邪気に振る舞えば、「ま、いいか」となるのが、多くの日本男児たちです。自分の夫を信頼して、無邪気に、出かけてみましょうよ。
◆教えてくれたのは:脳科学・人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さん
株式会社 感性リサーチ代表取締役社長。人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員。人工知能(自然言語解析、ブレイン・サイバネティクス)、コミュニケーション・サイエンス、ネーミング分析が専門。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳と言葉の研究を始める。1991年には、当時の大型機では世界初と言われたコンピューターの日本語対話に成功。このとき、対話文脈に男女の違いがあることを発見。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。2018年には『妻のトリセツ』(講談社)がベストセラーに。以後、『夫のトリセツ』(講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)、『息子のトリセツ』(扶桑社)など数多くのトリセツシリーズを出版。http://ihoko.com/
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