女性脳にとってゴール設定は残酷
ちなみに、お昼の2時間以上も前に、「お昼は何?」と聞かれるのは、女性脳にとってはとてもストレスですよね。毎日だったら、鬱になるかも。
理由は、女性のシンキングコストの高さにあります。女性脳は、「気にかかることが、ずっと忘れられない」のです。
例えば、お昼の15分前に、「チャーハン」と決めれば、目についたチャーシューの切れ端とレタスでささっと作ってしまうものを、3時間前に「チャーハン」と決めると、そのことが他の家事をしている間も頭のすみにあって、「エビも解凍して使おうか」「ご飯、どれくらいあったかな」「あ~、半端なネギも使っちゃおう」と思い付き、なんなら、何度かキッチンに行く羽目に。
男性には、わからない苦しさです。
主婦歴が長いと「気付きの数」が半端なく多い
よく男性は、「妻が出がけに、あれもやっておこう、これもやっておこうと言い出して、なかなか出発できない。今やらなくてもいいことなのに」と言うのですが、これも、「気にかかっていることがずっと忘れられない」というストレスを避けるためなのです。「そうだ、あれを捨てなきゃ」なんて思いついたら、買い物している間中、それが気にかかることになる。捨ててから出かければ、ショッピングに集中できるから、そうしたいわけ。
主婦歴が長くなると、「気付きの数」が半端なく多いので、どんなに早く準備を始めても、結局、ぎりぎりまで「あれも、これも」とバタバタすることに。60歳を過ぎたら、はっきり言って出かけられないんじゃないか、という感じです。
そこで、私は、自分にメールをすることにしています。思いついたことをメールする。あるいはネットカレンダーに書き込む。そうして、忘れる努力をします。
「早々とご飯のメニューを聞かない」も定年夫婦の掟
そんな「やり遂げるまで、ずっと気にかかる女性脳」に、3時間も前からご飯のメニューを決めさせるなんて、あまりにも残酷な話ではありませんか?
というわけで、拙書『定年夫婦のトリセツ』には、「早々とご飯のメニューを聞かない」という掟が書いてあります。
とはいえ、男性脳には、「次のゴール」がないのも残酷。無趣味で、責務もない男性に、ご飯のメニューを聞くなというのも、あまりにもかわいそう。
というわけで、夫に趣味を推奨し、責務を与える必要があります。とはいえ、40歳を過ぎて無趣味の男性は、自分で趣味を探せないかも。最初は夫婦で、何か始めてもいいのでは? アクティブな趣味でなくてもいいと思います。
定年退職までに準備しておくべきこと
わが家の夫は、昔から革細工や木彫りが得意で、定年退職後、バッグを作るようになりました。彼のバッグインバッグ(化粧品などを立てて入れられる優れもの)は、今やよそ様から注文を受けるほど。先月、誕生祝にもらったトートバッグは、デパートに並んでいてもおかしくないほどの出来栄えでした。
私や息子のお嫁ちゃんや、友人たちが「こういうバッグが欲しい」とそれぞれに夢を語り、成果を評価してくれるので、彼は日夜研究に励んでいます。
体を動かしてほしかったので、定年退職と同時に、社交ダンスにも誘いました。こちらはタキシードを初期投資。形から入る男性脳を刺激してみました(微笑)。
さらに、わが家の洗濯リーダーに任命したら、洗剤から干し方まで、めちゃくちゃ探求して、彼なりの洗濯哲学を展開しています。
家事は「手伝ってね」ではなく、専門分野を決めて責任者になってもらうほうが喧嘩になりません。その代わり、口を出さないし、自分が洗濯するときは、リーダーに「洗濯機、使ってもいい?」と聞くほど尊重しています。
趣味が2つと、責務が1つ。彼の毎日は、それなりに目標に満ちているので、おかげさまで、今のところご飯のメニューも聞いてこないし、ぬれ落ち葉にもなっていません。
定年退職までに、準備しておくべきことだと思います。