
暖かくなると下痢をすることが多くなる、という人は春特有の気候や生活環境の変化の影響を受けているのかもしれません。そこで、なぜ春に下痢症状が起こりやすくなるのか、また、症状を改善する食べ物について、あんしん漢方の管理栄養士・小玉奈津実さんに教えてもらいました。
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自律神経の乱れや生活習慣が不調の原因に
春は、1年のなかで最も寒暖差があるといわれています。また、新しい環境に身を置くことが増える季節でもあるため、知らず知らずのうちに自律神経が影響を受けている場合も考えられます。下痢に悩んでいる人は原因に心当たりがないかチェックしてみてください。

自律神経の乱れ
寒暖差に対応するために交感神経が活発に働くことで緊張状態が続き、自律神経の乱れを引き起こします。それが腸の状態の乱れにつながり、下痢の原因にもなっている可能性があります。
体温調整がしづらい
また、薄着で外出したら意外と寒かったり、花見や宴会などで冷たいアルコールを飲んでしまったりと、春は何かとお腹が冷える機会が多い時期です。お腹が冷えると、食べ物が消化されにくくなり、下痢の原因になります。
生活環境の変化

春は転居や部署異動など、人間関係や生活環境が変わりやすい季節です。環境の変化は無意識のうちに精神的なストレスにつながりやすく、ストレスにさらされ続けると腸の運動が不自然に高まりやすいといわれています。
腸の運動が異常に高まると、便の通過スピードが速くなり、水分の吸収がうまく行われないため、便がゆるい状態で排出される原因になります。
春の下痢症状を改善する食材
春の下痢症状を改善するには、自律神経を整える効果が期待できる食材や腸に優しい食べ物を食事に取り入れることが効果的です。
味噌

発酵食品である味噌には整腸作用があり、春の下痢症状を改善することが期待できます。また、味噌に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンは、自律神経を整えるセロトニンの材料となるため、自律神経の乱れが原因の下痢に効果があると考えられています。
下痢のときは体内の水分が不足するため、水分補給も大切ですし、お腹が冷えてしまいがちな春先は特に、味噌汁のような温かい汁物を意識して食べるといいでしょう。
りんご

りんごには、下痢症状を改善するのに役立つペクチンが豊富に含まれています。ペクチンは水溶性食物繊維の一種で粘性があるため、胃腸内の食物の滞留時間を延ばし便形状を整え、下痢を改善する効果が期待できます。
ペクチンはりんごの皮と実の間に多く含まれているため、皮ごとすりおろすといいでしょう。すりおろして食べると消化もよく効果的です。
白米

米にはトリプトファンが含まれているため、下痢の原因である自律神経の乱れにも効果的です。
下痢になると体力を消耗しやすくなります。おかゆを食べれば、胃腸に負担をかけず効率よくエネルギー補給ができるため、症状の回復に役立ちます。
下痢しやすい体質の人には漢方薬もおすすめ
老廃物を排泄するために起こるので、下痢止めなどで無理に止めるのはよくない場合も多々あります。
一方で、漢方薬は腸のはたらきをうながしたり、血流をよくしたりすることで、根本からの改善をめざします。また、漢方薬は心と体の全体的なバランスの乱れを回復させるため、冷えや自律神経の乱れによる下痢症状への対処、ストレスに負けない体づくりに適しています。

下痢症状に悩む人におすすめの漢方薬2つ
・人参湯(にんじんとう)
冷えがあり、胃腸のはたらきが低下している人に向いています。気を補い、胃腸のはたらきを高めることで、下痢を改善します。
・五苓散(ごれいさん)
のどが乾き、尿量が少ないという人に向いています。胃腸のはたらきを高め、胃の余分な水分を取り除くことで下痢を改善します。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は、繰り返す不調に対して根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・小玉奈津実さん

管理栄養士資格取得から食に関する職務に携わってきて15年目。サプリメントの商品開発・外食のメニュー開発・高齢者施設の栄養価計算や献立作成などに従事。現在はサプリメントの監修や食に関する記事の執筆、オンライン栄養指導などフリーの管理栄養士として活動中。さらに、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)で情報発信もしている。