春はお子さんやご自身など、家族の新たな門出を迎えるかたも多いことでしょう。今回はそんな人生の節目にふさわしい旅の魅力や計画のヒントを、旅行ジャーナリストの村田和子さんが紹介します。
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卒業式や入学式などの行事、あるいは卒業旅行や送別会なども、以前のように華やかに盛大に開催するのが難しい状況が続いています。コロナ禍の生活は制限が多く、例えば学生さんなら、修学旅行や遠足が中止になったなど残念に思うことも多かったはず。こんなときだからこそ節目には、家族でしっかりと頑張りを認めて、次の目標へ歩むための「祝い旅」がおすすめです。
自分たちの頑張りをほめる、「祝い旅」のすすめ
コロナになり改めて、卒業式や入学式など節目の行事は「頑張った自分を認めてほめる機会」となり、「自己肯定感につながる」大切なものだと感じます。親も子どもの成長を前に、楽なことばかりではない子育てを振り返り、ここまで頑張った自分をいたわる機会になります。誕生日なども同様で、成長を祝うことで、自分の存在を前向きにとらえ生きる力へとつながります。
我が家の息子は、日本でコロナが蔓延し始めた2020年に高校を卒業、大学へ進学しました。卒業式は縮小され、親や在校生の参列はなく、入学式も中止に(※1年後に開催されましたが)。
春爛漫の中、進学先が決まりうれしいはずなのに、コロナによる先行きの不安が漂い、「うれしいことを素直に喜べない」……どこか気持ちに蓋をしているような感覚でした。そこで、合格&卒業のお祝いの旅を計画したのです。
宿に「合格祝い」で伺うと予約時に伝えたところ、たくさんのスタッフの方が「おめでとうございます」「よかったですね」と声をかけてくださります。その言葉に「本当によかったなぁ」「よく頑張った」という喜びを親子で改めて感じ、「これからも大変なことがあるかもしれないけれどがんばろう」と、先々への気力がわいてきたのを先日のように思い出します。
「言霊(ことだま)」というように、声に出していう、言葉として聞くことで、気持ちがポジティブになるのを実感した出来事でした。
平穏な世の中では、こういったことが普通にあったのだと感じます。コロナで人とのコミュニケーションが減り、ときに無力感を覚えることもある今、意識をして「うれしいことはしっかりとお祝いをする」「自分を褒めて認める(たまには甘やかしてOK)」という機会をつくることが大切。「自分はこれでいいんだ」「しっかり頑張っている」と、自己肯定感育むことが元気に日常を過ごすためにも重要だと感じます。
「祝い旅」の計画は主役と一緒に。サプライズの準備を
祝い旅の計画のポイントは3つあります。
1つ目は、「どこで何をするか」の旅の大枠は、お祝いの主役と相談しながら、あるいは希望を聞いて決めるのがスマート。よかれと思ってすべて内緒で進めると、好みが違ったり、想定外が起こることも少なくありません。
その分、旅の中でささやかでも「サプライズ」な演出を準備するといいでしょう。これが2つ目のポイントです。ユニークな記念日プランを設ける宿やサプライズな相談に乗ってくれる宿も昨今は多いので、活用するのも手です。コロナ禍というのもあって、「独り占め」など特別感のあるオプションプランも多いので、探してみるのもいいでしょう。
ホームページに特に明記がなくても、相談するとケーキや花束などの手配は対応をしてくれるところは多く、宿でできるプランを提案したり手伝ってくれることもあります。
シティホテルやリゾートホテル、旅館などでは、お祝い滞在には、「夕食のデザートにメッセージを入れてくれる」、「メッセージカードや、スタッフがおめでとうと声をかけてくれる」「乾杯のドリンクをプレゼントしてくれる」など、宿からのおもてなしがあるところも。
その他、部屋での飾りつけや自分で演出・準備できることもありますから、いろいろと工夫をされてみてはいかが? サプライズは、準備するほうもワクワクと楽しい気持ちになりますよ