抱えずに分担する、発散することで”心の健康“に
最後に、仕事と家事・育児・介護などを両立する方法や、藤崎さん自身が今よりも少し先の未来にチャレンジしてみたいことについても、話を聞いた。
「私は息子が中学3年生のときに働き始めたので、育児と両立したというほどのことはなかったと思います。夫の介護と仕事は時期が重なりましたが、正直に言えば、私は『介護があるのに仕事もあって大変だ』という感覚ではなく、たとえ睡眠時間が減ろうとも、仕事があって救われていました。『彼がどうしてこんなつらい目に』と思うと悲しくて見ていられなかったので、仕事に集中して、一瞬でもそのことが頭から離れるのはありがたかったんです」
2005年に心筋梗塞で倒れた夫は一時回復したが、2009年脳梗塞を患い、自宅で療養しなければならなくなった。2016年12月に亡くなるまで、藤崎さんは「SHIBUYA109」のショップ店員、居酒屋オーナーなどを続けながら夫を介護する日々を7年以上続けたのだった。
「事情は人それぞれですが、皆さんも家のことと仕事を『両立しなくてはならない』と考えるより、自分は『別のページを開くことができる』と捉えるのはどうでしょうか。専業主婦で介護をしているかたは、例えば週に1回、趣味の教室に通われるのもアリだと思います。
古い感覚の人がひょっとして『家族の具合が悪いのに遊びに出ていいのかしら』と言ったりするかもしれませんが、そんなことは気にしなくていい。心の健康のために必要なことは堂々と、自由に、やってほしいと思います」
自分に完璧を求めずに、弱みを隠さないで、時には周りに協力をあおぐことも、遠慮なくすべきと藤崎さんは考える。
「全てを完璧にこなせるわけがないので、できないことは『できない』『手伝って』と言ってしまっていいと思います。私は仕事をしながら夫と息子の朝食や息子のお弁当を作っていましたが、息子の夕食は母に助けてもらっていました。夫の昼食、夕食の介助もヘルパーさんにお願いしていました。
息子も中学3年生から洗濯など身の回りのことは自分でしていましたね。夜になって洗濯機を回したはいいけど、親子そろって疲れて乾燥をし忘れ、朝になって悲鳴を上げたことも一度や二度ではありません。そういうとき、息子は学校にハンガーを持って行っていました。教室の窓辺で野球のユニホームがはためいていたそうです(笑い)。
私は家のことに限らず、困りごとやストレスは人に言って解消するほうかもしれません。メディアに取り上げていただくことが増えると、SNSにあることないこと書き込まれて悔しい思いもするじゃないですか。そういうときは出社して『ひどすぎる~!』『自分がやってみればいいのに!』ってワーワー言ってみんなに聞いてもらってスッキリします(笑い)」