
食後、シンクに山のように積み重なった汚れた食器を見て、思わずため息が出る…。そんな経験、誰もがあるでしょう。食器洗いは常に「やりたくない家事」の上位に挙げられるほど面倒な作業です。それも毎日、日によっては1日3回、4回も。今やそんな私たちにとってなくてはならない存在が、食器洗い洗浄機(以下、食洗機)です。そこで、家電ライターの田中真紀子さんに最近の食洗機事情をうかがいました。
徐々に普及し、進化してきている日本の食洗機
「共働き家庭が増えている昨今、食洗機はロボット掃除機、洗濯乾燥機と並んで『新・三種の神器』と言われています。とはいえ、欧米ではすでに7割程度の家庭に普及しているのに対し、日本の家庭では2020年3月末時点で34.8%(内閣府「消費動向調査」2021年3月実施調査結果)しか導入されていません。大きな理由は、ずばり日本のキッチンが狭く置き場所がないから。それ以外にも潜在的な理由として、日本人は家事の手間を省くことに対する罪悪感が根強いから、という考えもあります」(田中さん・以下同)
ただし近年は新築やリフォーム後のシステムキッチンに取り付けられるビルトイン式の食洗機が普及したり、家事分担が進み食洗機を受け入れやすくなったりと、ハード面でも意識の面でも食洗機は身近になってきています。ビルトイン式を組み込めないキッチンや賃貸物件でも、しかり。
コンパクトなものや上に開くタイプも登場
「ビルトイン式以外では、シンク周りに後付けで設置する『卓上式』がありますが、これも数年前に比べて大きく進化しています。例えば、従来の食洗機は扉が前開き式だったため、シンクの脇に置くと扉を開けた時に蛇口や水栓に当たって水道が使いづらい、シンクとガスコンロの間の調理スペースに置くと食材を切ったり置いたりする場所が狭くなる――という課題がありました。
そこで食洗機のメーカーは、幅30cm程度の狭いシンク脇にも設置できる省スペースタイプや、扉が前面に開くのではなく上にリフトアップするタイプのモデルを発売。長年の“使いづらい”問題を見事解消しました。
さらには水栓とつながなくても使える『タンク式』なども登場し、各家庭の条件に合わせて選べるようになってきています」
ビルトイン式、卓上式、タンク式。それぞれのメリット・デメリットは?
食洗機を選ぶ際は、自宅のキッチンに、卓上式、タンク式、ビルトイン式のどのタイプの食洗機が取り付けられるか、確認することから始まります。

「卓上式とタンク式は後付けタイプのため、まずは設置スペースの確保が必要になります。特に卓上式は分岐水栓とつなぐ必要があるため、キッチンのシンク周りに設置することが絶対条件に。一方で、自動で給水されるので手間が要らないのが卓上式の大きなメリットです。また容量が大きめのものも用意されているため、2人程度の少人数家庭はもちろん、4人家族などファミリー世帯にも最適です。
タンク式は、電源さえあればシンク付近に限らずダイニングテーブルの方などどこにでも置けるため、工事不要で買ったその日から使えます。ただしコンパクトタイプが多いため、キッチンに置くスペースが少ない1~2人暮らしにおすすめです。
ビルトイン式は、作業スペースの下やシンクの下など、作業に支障をきたさない場所に置くことができるためサッと片付けを済ませたい人に理想的。ですが、取り付けられるのは主に新築時やキッチンのリフォーム時に制限され、賃貸物件など自由にリフォームできない物件には導入できないのが難点です」
さて、今回は今のキッチンに後付けできる「卓上式」、それも場所を取らないスリムタイプをご紹介。田中さんが選んだのは、下記の2つです。
【1】パナソニック『食器洗い乾燥機 スリム食洗機 NP-TSK1』
日本の食洗機業界を常にリードし、一時期は「パナソニック一択」というほど食洗機を生産し続けてきたパナソニック。性能ももちろん進化しています。

除菌も可能&上開き式ドアのスリムタイプ
「2021年11月に発売した新製品は、今まで以上にスリムなタイプ。シンク脇の狭い場所にも設置できるよう、業界最薄(※)の本体奥行約29cmを実現。ドアも前開きではなく上に上がるリフトアップ式なので、シンクの蛇口に当たりにくく、台所仕事の妨げになりません。設置スペースは、奥行き36.7cm以上、開いた時の空間は奥行きが43.8cm以上確保できればOKです」

もちろん、機能も使い勝手も申し分なし。
「薄型ながら約4人分の食器が一度にはいるファミリーサイズで、50℃以上の高温水流で洗うため除菌も可能。狭い設置スペースしかないけれど、十分な容量としっかりした洗い上がりを求めている人におすすめです」
※パナソニック調べ:国内卓上食器洗い乾燥機において。2021年9月8日現在
【2】アクア『食器洗い機(送風乾燥機能付き)ADW-GM3』
アクアの食洗機には強化ガラスを採用した業界最大サイズのクリアウインドウを採用。

スリムながら、鍋やまな板も洗える大容量サイズ
「縦型洗濯機のように洗浄中の様子が見えるため、きれいに洗ってくれている安心感が味わえます。本体は奥行き39cmですが、脚があるため設置する台自体の奥行きは32.5cmあればOK。またドアは上開きなので、ドアを開いたときの空間は47cmあれば設置できます」

実際洗い終わった食器を見れば、その仕上がりにも満足するはず。
「下段ノズルが360度回転しながら高圧水流を噴射し、食器を隅々まできれいに洗い上げ、高温除菌もしてくれます。鍋やまな板も洗える大容量サイズなので、大物洗いも食洗機で済ませたい人にも喜ばれるでしょう」

また、食洗機の庫内は汚れやキズに強いステンレス製。庫内の黄ばみはもちろん、キズにつく汚れからの雑菌の繁殖を防げ、衛生面が気になる人にもおすすめです。
食洗機は、手洗いより節水効果や除菌効果も高いといったメリットもあり、家事の時短だけでなく総合的に満足度の高い家電です。そのため、「一度使ったら手放せない」との声が絶えません。新年度を機に、導入を考えてみてはいかがでしょうか。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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