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猫が急に吐いてしまったとき、考えられる原因と飼い主が取るべき行動は?

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猫が急に吐いてしまったとき、考えられる原因と飼い主が取るべき行動は?(Ph/AFLO)
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飼っている猫が急に嘔吐――。考えられる原因にはどういうものがあり、それらをどう見分けるといいのでしょうか。ペットの健康問題について、プロである獣医師に教えてもらうシリーズ。今回は、猫が吐いてしまったときの原因や対処方法を、獣医師の山本昌彦さんに聞きました。

毛玉を吐くだけなら問題なし、心配な場合はケアを

猫が毛球(自分の抜け毛の塊)を吐くことはよく知られていると思います。猫は自分で自分の身体を舐めて毛づくろいするので、胃に毛が溜まってくると吐き戻すことがあります。特に長毛種の場合にはよくあることで、1週間に1回ほどの頻度で吐く猫もいます。

山本さんは「私も自宅で長毛種のラグドールを飼っていますが、たまにケポッという感じで吐くところを見かけます。毛球による吐きの場合は、吐いたあとにぐったりすることもなく、ご飯を与えれば普通に食べるので、そうした場合はあまり心配しなくて大丈夫です」と言います。

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毛球を吐かない猫も(Ph/AFLO)
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緊急手術になるケースも

一方、毛球を吐かない猫もいます。毛づくろいをして抜け毛などを飲み込んでしまっても、それが便として順調に排泄されるなら、嘔吐はしません。しかし、普段は毛球を吐く猫がうまく吐き出せなくなったときには、対処が必要です。

「吐きたそうにえずいたりしているのに、何も出てこないで苦しんでいるときは、消化器官に抜け毛が溜まって塊になっていると思われるので、動物病院で処置してもらってください。症状が軽度の場合には、毛球が流れやすくなるような薬剤(毛球除去剤)を投与したりしますが、腸閉塞などを起こしている場合は緊急手術で詰まった毛球を取り除かなければいけないこともあります。内視鏡による胃内の毛球の摘出や、胃切開や腸切開による摘出などを実施します」

長毛種で抜け毛も多くて心配だという場合には、こまめに人手でブラッシングし、抜けた毛は猫が舐めないように取り除くと、猫が飲み込む毛の量を減らせます。毛球を吐くときに食道が傷ついて出血することもあるので、頻繁に吐かずに済むように、可能な範囲でケアすることは大切です。

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人の手でかわいい猫たちの苦しみを防げる(Ph/AFLO)
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「先ほどお伝えした毛球除去剤を定期的に投与したり、毛球ケア用のキャットフードもあるので、獣医師に相談して取り入れるといいでしょう。食物繊維を配合して、繊維で毛球を絡め取って便として排出しやすくするという仕組みですね。猫草などを使用してもいいかもしれません。また、大事なポイントとして、そもそも猫が過度に毛づくろいをしないように、ストレスを軽減することも重要です」

胃腸炎は嘔吐のメジャーな要因

猫が吐いたとき、毛球以外で考えられる要因は、やはり消化器官のトラブルだといいます。

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胃腸炎は嘔吐のメジャーな要因(Ph/AFLO)
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「急性の胃炎や腸炎などが考えられますね。急性の膵炎(すいえん)や肝炎でも嘔吐することがあります。慢性の場合は他の症状も出ていることも多いので、『急に吐いてどうしたんだろう』ということにはならないかもしれません。

こうした消化器系の病気の場合は、吐くだけでなく食欲がなくなったり、ぐったりしたり、お腹を触ると痛がったりします。吐き方にしても水を飲んだだけでそれが刺激になって嘔吐したりするので、腸閉塞などを伴わない単純な毛球による嘔吐とは明らかに様子が異なります。そんなときは必ず動物病院へ連れて行ってあげてください。消化器系の腫瘍などでも嘔吐することがあります」

また、病気を未然に防ぐためには、健康診断を怠らず、健康状態を定期的に確認することが大切だということです。特に、中高年の猫の場合には注視する必要があります。

腎不全や甲状腺機能亢進症も嘔吐の症状が出る

さらには、腎不全や尿毒症など、腎臓の病気も猫が吐く原因になりえます。猫は人や犬に比べて腎臓疾患のリスクが高い動物です。

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定期的に検査を(Ph/AFLO)
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「腎臓が悪くなって慢性化してくると、諸症状が出てきます。嘔吐もその一つですね。ただ、病態が進行して吐くようになるので、半年に1回など定期的に、検査をしていれば、症状が出る前に異常が発見できると思います」

高齢の猫では、甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)によって吐くこともあります。甲状腺は喉元にあって、体の代謝を活発にするホルモンを分泌していますが、このホルモンが過剰に分泌されて攻撃的になったり多飲多尿になったりするのが甲状腺機能亢進症です。

「この病気の場合は、嘔吐しますが食欲は増してきます。10歳を超えた猫で最近やけに食欲が増しているものの、食べたあとに吐いてしまうというときは、この病気の可能性もあります」

ストレスや空腹で吐くことも

他には、ストレスがたまった場合や異物を飲み込んだ場合、空腹が続いた場合などにも猫は嘔吐することがあるそうです。

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ストレスの影響も(Ph/AFLO)
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「空腹で吐くのは、胃の中に消化すべき食べ物がないのに胃酸が出てきて刺激されるからですね。

異物は犬に比べると、起きる頻度は高くないと思いますが、緊急の場合もあるので注意が必要です。飼い主さんが料理をしている間に、猫がキッチンへ入ってきて、ネギなど猫が食べると毒になるようなものを口にすることはあるかと思います。そんなときは、吐いたあとはもうケロッとしていたりしますが、すぐに動物病院に連絡したほうがよいです。その他、小さいおもちゃなどを飲み込んでしまい、胃や腸に詰まってしまうこともあります」

嘔吐が続くようなら早急に診察を

飼い主さんが取るべき行動とまとめると、毛球や空腹で吐いた場合はひとまず様子を見る、それ以外の場合は病院受診を検討するということになります。

「特に、嘔吐が続く(さっきも吐いたのに、すぐに吐く)、嘔吐以外の症状がある(食欲不振、ぐったりしているなど)場合は、早急に獣医師の診察を受けましょう。その際、どのように吐いているかなど動画を撮影したり、吐いたものを持参するなどすれば、診断の助けになることもあります」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師・山本昌彦さん
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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