健康・医療

「チョコレート=太る」ではなかった?医師が語る痩せたい人こそ高カカオチョコレートを食べるべき理由

チョコレートを食べる人
ダイエットしたい人が高カカオチョコレートを食べたほうがいい理由とは?(Ph/photoAC)
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「チョコレート=太る」というイメージ、実は間違っている? ダイエットをしたい人ほど高カカオチョコレートを食べるべきだと語るのは、『医師が教える 最強の間食術』(アスコム)の著者で医師の鈴木幹啓さん。そこで、高カカオチョコレートがなぜダイエットに効果的なのか、教えてもらいました。

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ダイエットの成功に欠かせない、適度な糖質

甘いものを我慢しすぎてダイエットに失敗する人は少なくありませんし、一度は痩せても、結局その後ドカ食いしてリバウンド……という経験をお持ちのかたもいらっしゃるのではないでしょうか。それはやる気の問題だけではなく、脳内のセロトニンが不足していることが原因になっていることも多いです。

落ち込む女性
甘いものを絶って、セロトニンが不足することがダイエット失敗の原因にも…(Ph/photoAC)
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ダイエットの失敗を招くセロトニン不足

甘いものを食べると、人は幸福感を覚えます。それは、脳内から幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されるからです。逆に甘いものを断ってセロトニンが不足すると、脳は不安でいっぱいになり、ストレスにも弱くなります。結果、ドカ食いに走るなど、ダイエットに失敗しやすい悪循環につながります。また、極度な食事制限で栄養のバランスが崩れることも、必要なホルモンを作れなくなり、セロトニン不足になる危険性もあるんです。

つまり、ダイエット成功の近道として心を安定させるために、適度に甘いものを摂ることは必要と言えます。

高カカオチョコレートは低GI食品

高カカオチョコレート(カカオ72%)100gあたりに含まれる糖質は32.0g。例えば、ショートケーキ(100gあたりの糖質41.8g)やつぶあんのどら焼き(100gあたりの糖質56.0g)などと比べて低い数字です(糖質の量は日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉などをもとに算出)。また、肥満の原因となる食後血糖値の急上昇がしにくいとされる低GI食品にも分類されています。GI値55以下が低GI食品の基準ですが、バナナがGI値51なのに対し、高カカオチョコートはカカオ72%で29、カカオ86%のものだと18とかなり低いのです。

高カカオチョコレート
高カカオチョコートのGI値は低く、太りづらい食品と言える(Ph/photoAC)
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さらに、「カカオポリフェノール」にはセロトニンの分泌を増やす効果もあるので、高カカオチョコレートで適度な糖質を取るのは、賢い選択です。

太りにくく体にいい、良質な脂肪酸

チョコレートは太るという誤解の原因の1つは、カロリーが高いこと。カカオ72%の高カカオチョコレートで100gあたり560kcalもあります。チョコレートの原料であるカカオ豆に最も多く含まれる栄養素が脂肪なので、どうしてもカロリーは高くなります。

でも、カカオ豆に含まれる脂肪は他の脂肪と比べて「体内に吸収されにくい」性質のものです。

体脂肪になりづらいステアリン酸

カカオ豆に含まれる脂肪は、おもに「パルミチン酸」「ステアリン酸」「オレイン酸」の3つの脂肪酸で構成されています。カカオ豆はとくに、ステアリン酸が他の食品より多く含まれています。ステアリン酸は体内に吸収されにくく、体脂肪になりづらい性質があります。

酸化しにくいパルミチン酸、ステアリン酸

またステアリン酸、パルミチン酸は、変質しにくく、酸化しにくい飽和脂肪酸です。つまり、カカオ豆に含まれる脂肪は体脂肪になりにくい=太りにくいうえ、酸化による悪影響を与えない、体にとって質のよい脂肪といえます。

食物繊維は血管や腸の健康に効果的

高カカオチョコレートには、食物繊維が豊富なさつまいもと比べても約4倍、ごぼうの約2.6倍もの食物繊維が含まれています(カカオ成分86%の場合/出典:日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉)。

食品に含まれる食物繊維量の比較グラフ
高カカオチョコレートに含まれる食物繊維量は圧倒的に多い(Ph/『医師が教える 最強の間食術』(アスコム)より)
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食物繊維は1日に成人女性で18g、成人男性で20g以上を摂ることを推奨されていますが(18から64歳の場合。厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準」2020年版より)、現代の日本人は1日平均6g程度足りていないといわれます。

私が推奨している、1日25g分の72%の高カカオチョコレートから摂れる食物繊維は約3g(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉などをもとに算出)。1日の不足分の半分もの量を補えるのです。

血糖値の上昇を防ぎ、血中コレステロール濃度も下げる

カカオの食物繊維として多く含まれている「リグニン」は不溶性食物繊維の一種。糖質の吸収をゆるやかにする作用があるので、食後血糖値が上昇しづらくなります。また、食物繊維は胃や腸内をゆっくり移動しながら、コレステロールや中性脂肪を包み込んで体外へ排出するので、血中のコレステロール濃度を下げる効果もあります。

整腸作用で腸内環境が良好に

食物繊維には整腸作用があり、便通もよくします。腸内には6000兆個以上もの腸内細菌が住みつき、「腸内フローラ」という集団を形成しています。この中で善玉菌は胃で消化されず腸まで届く食物繊維をエサにして発酵・分解しながら生きています。

その時に作られる「短鎖脂肪酸」などの酸が悪玉菌の増殖を抑制したり、腸のぜん動運動をうながして便通を助けたりします。えさを与えられた善玉菌はどんどん増えて悪玉菌を減らすので、腸内環境が整っていくというわけです。

腸内環境が整うイメージ
整腸作用で痩せやすい腸内環境を作ってくれる(Ph/IllustAC)
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また脂肪の蓄積を抑制する、脂肪の燃焼を助ける、小腸からインクレチンと言う食欲を抑制するホルモンを出すなど、短鎖脂肪酸にはダイエットにうれしい効果も期待できます。

腸内の善玉菌を増やすカカオプロテイン

食物繊維のほかにもう1つ、腸内環境を整える優秀な成分がカカオプロテインです。難消化性たんぱく質であるカカオプロテインは、食物繊維同様にその多くが大腸まで届き、善玉菌のえさとなって善玉菌を増やします。

短鎖脂肪酸を大量に作る善玉菌が増える

さらに、カカオプロテインを摂取すると短鎖脂肪酸を大量に作り出す働きがある「フィーカリバクテリウム」という善玉菌が増えることもわかっています。これは、長寿の人の腸に多く存在することから「長寿菌」とも呼ばれています。

便秘解消で代謝アップも期待

ストレスや不規則な食事や生活、食物繊維の不足などによって便秘に悩む日本人は増え続けています。

カカオプロテインには、便のカサを増し、便量を増やすため、便秘を改善する作用もあります。便秘が解消されることで、健康的な体が目指せるのはもちろん、腸内の老廃物を排出することは新陳代謝アップにつながり、脂肪燃焼にも貢献します。

セロトニンの働きを助けるテオブロミン

さらに、高カカオチョコレートからは、限られた植物のみに含まれている「テオブロミン」という成分を摂ることができます。

テオブロミンは、集中力や記憶力を高めるなど脳を活性化させるほか、自律神経を調整して脳や体をリラックスさせます。加えて、糖分を摂ることで分泌されると紹介した幸せホルモンのセロトニンの働きを助ける作用もあるので、イライラや緊張を感じたときに食べると脳が落ち着く効果があります。

◆教えてくれたのは:医師・鈴木幹啓さん

医師の鈴木幹啓さん
医師の鈴木幹啓さん
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すずき・みきひろ。日本小児科学会認定小児科専門医。すずきこどもクリニック院長。株式会社やさしさ代表取締役。株式会社オンラインドクター.com代表取締役。2010年、自治医科大学卒業から9年で、現在のクリニックを開業。1日200人近く診察し、日本一忙しい小児科医と称される。診察に従事する傍ら「親・子・孫の三世代が集まれるような地域づくりをしたい」という思いから、2016年に、介護サービス付き高齢者住宅や子どもが遊べる公園、商業施設がそろった「海賊公園スクエア」をオープン。https://www.suzukikodomo.jp/

●健康を保つために医師が「間食に高カカオチョコレート」をすすめる理由

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