
8月は台風シーズンのピーク。気象庁のデータによると、2020年までの30年間の平均では、8月、9月、7月の順に台風が多く、昨年の8月と9月には4つずつ台風が襲来しています。台風に備えておきたいことは数多くありますが、そのひとつが、エアコン。家電ライターの田中真紀子さんが、解説します。
台風襲来時は屋外の室外機に注意!
エアコン関連でもっともダメージを受けやすいのが、屋外に設置した室外機。

「強風の中でエアコンを運転し続けると、ファンが逆回転したり、停止したりすることで高い負荷がかかり、破損するケースがあります。室外機は風速30mまで耐えられる設計になっていますが、それ以上の強風にさらされると故障する可能性も。
さらに強風により、室外機がずれたり倒れたりすることで、配管が割れて冷媒が漏れるなど、漏電の危険も。万一、2階以上に設置したエアコンが落下すると、エアコンだけでなく人的被害が及ぶ可能性もあるので注意が必要です。
また室外機は基本的に雨がはいりにくい構造にはなっていますが、横殴りの雨や浸水などで内部に水がはいると、漏電や発煙、発火を引き起こす可能性もあります」(田中さん・以下同)
強風で動かないよう土のうで囲うなどの対策を
では、エアコンの室外機を強風から守るために、今からできる対策は何があるのでしょうか。
「前述の被害に備えて、室外機が強風で動かないように固定しましょう。防振マットや転倒防止用の金具を使用したり、急いでいる場合は周囲を土のうで囲んでしまうのもいいと思います。また2階や屋根に設置してある場合は、設置状況の確認を。ハザードマップで浸水の可能性があるエリアなら、室外機は脚付き高台(高脚置台)に設置したほうが安心です。さらに室外機にカバーをかけておくと、飛来物からも守れます」
今はAmazonなどのオンラインショッップで、室外機用の防振マットや、水で膨らむ簡易タイプの土のうが数千円で入手できます。いざというときに、今から備えておくとよいでしょう。
「台風のときはエアコンを使わない方がいい」って本当?
ところで、「台風や大雨のときはエアコンを使わない方がいい」という説もありますが、実際はどうなのでしょう?
「前述の通り、強風により室外機のファンが破損する恐れがあるため、熱中症のリスクがなければ使わないほうが安心です。また大雨により浸水したり、内部に水がはいり込むと、泥水が室内機内部にはいり込み、漏電や発煙、発火のリスクが高まります。漏電するとブレーカーが落ちますので、その際はエアコンは使用せず、専門業者に点検を依頼しましょう」
「ポコポコ」という音の正体は?
なお、台風襲来時、エアコンの室内機から「ポコポコ」という音が聞こえることがあります。この正体は?
「室内機の『ポコポコ』音の原因は、ドレンホース(室外に結露水を排出する排水管)に外気が逆流し、ドレンパン(結露水を溜める皿)に当たることで発生する音です。台風や強風のときに起こりやすく、故障ではありません。気になる場合は、外気の侵入を防ぐ市販の逆流防止弁を購入し、ドレンホースにつけると防げます。
また、ドレンホースが詰まっていて排水がスムーズにできていない場合にも発生しますので、定期的に掃除するようにしましょう。ドレンホースの出口から割りばしや歯ブラシを入れてゴミをかき出したり、掃除機で吸い取ると簡単にお手入れできます」
とはいえ、真夏にエアコン控えをするのはつらいですよね。熱中症のリスクもあります。もし余裕があるなら、下記のような室外機がないポータブルクーラーを用意しておくのも一つの方法です。
【1】シロカ『除湿機能付きポータブルクーラー SY-D151』

こちらは除湿機能つきのポータブルクーラー。部屋全体は冷やせないため、スポットエアコンとして使います。
周囲の温度より7℃低い冷風を吹き出す(※1)スポットエアコン。除湿も可能
※1:室温27℃、湿度60%の場合。

「周囲の温度より7℃低い冷風を吹き出すスポットエアコンに、1日4.4L除湿できる除湿機能をプラス。冷風、除湿、送風と3つのモードが使え、室内干し時にも活躍します。
注意したいのが、背面から温風が出るため、閉め切った部屋で運転すると、排熱によって部屋の温度が上がること。夏の暑い日に使う場合は、付属の排気用ダクトを使えば、排熱を遠くに逃がし、室温の上昇を抑えることができます。風量は3段階から選択が可能。重量6.5kgは業界最軽量クラス(※2)。少々重いですが、部屋間の移動も可能です」

※2:[調査方法]2022年2月時点で発売されている一般家庭向けポータブルクーラー(コンプレッサー式)として(自社調べ)
【2】アイリスオーヤマ『ポータブルクーラー(IPA-2203G)』

こちらも部屋全体は冷やせませんが、設置工事不要で、どこにでも移動して使えるのが魅力。
背面から出る熱を屋外に逃がせるポータブルクーラー

「冷風運転時、背面から出る熱を屋外に逃したいときは、ドライバーなしで設置できるスライド式の窓パネルを使えば、窓を開けた状態でも外気や雨、虫の侵入を防ぎます。さらに除湿・送風運転もでき、じめじめした夏に大活躍。質量22kgと重さがありますが、キャスター付きのため、室内を移動して使用も可能です。冷風適用畳数は4.5~7畳」
以上、どちらも電源コードを差し込んで使うため、停電時には使用不可能ですが、普段はお風呂上がりの脱衣所などエアコンのない部屋で重宝しそうです。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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