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“犬の脱け毛”は病気が原因のことも 獣医師が解説する「注意すべき抜け方」

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“犬の脱け毛”は病気が原因のことも(Ph/イメージマート)
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犬を飼っていると、抜け毛が気になることもあるでしょう。夏時期は抜け毛が増え、寄せ集めるとその犬1頭分ぐらいのかさになったりして驚かされることも。そこで、獣医師の山本昌彦さんに犬の抜け毛問題について聞きました。

トイ・プードルやヨークシャー・テリアには換毛期がない

犬の抜け毛は、室内飼いの場合は毛の存在自体が気になりますし、そうでなくとも抜け方によっては飼い主さんにとって心配なもの。どのような抜け方だと注意が必要で、どのような抜け方なら安心していいのでしょうか。

山本さんは「換毛期(毛が抜け替わる時期)がある犬種で、その時期にたくさん抜ける分には、あまり気にしなくて大丈夫」といいます。

犬の被毛にはトップコートとアンダーコートの2種類

犬の被毛には、皮膚を保護する役割の硬い上毛(トップコート)と、体温調節や保湿の役割を持つふわふわの下毛(アンダーコート)の2種類があります。

「この上毛と下毛が二重構造になっている犬種には、下毛が抜け替わる換毛期があります。通常は5~7月頃と9~11月頃に、それぞれ夏用、冬用の下毛に抜け替わっていくのです。一方、下毛がない犬もいて、こちらには換毛期もありません」(山本さん・以下同)

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ヨークシャー・テリアは換毛期のない犬種(Ph/イメージマート)
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一般に、柴犬やポメラニアン、ミニチュア・シュナウザー、フレンチ・ブルドッグ、シー・ズーなどは換毛期があり、トイ・プードルやヨークシャー・テリアは換毛期のない犬種です。チワワの場合は、下毛があって換毛期があるタイプと、下毛がなく換毛期がないタイプが混在します。

下毛は今より寒い環境に対応するものだった?

換毛期に毛が抜けるのは自然なこととはいえ、ブラッシングしないで長く放置するのは厳禁。皮膚の上で抜けた毛がダマのようになって取れにくくなることもあります。

「ブラシやコームで、抜け毛やゴミ、ホコリなどを取って、皮膚を清潔に保ちましょう。例えば、柴犬などは、日本の寒冷な地域を含めたさまざまな場所の気候に合わせて下毛が発達したのだと考えられます。そんな厚い下毛を換毛期が来ても放っておくと、蒸れて皮膚疾患を引き起こしたり、熱中症のリスクが高まったりする可能性があります」

換毛期のない犬種でも、また換毛期ではないときも、ブラッシングは皮膚疾患の予防や早期発見、ノミ・ダニの発見などに有効です。犬の皮膚が人間の1/3程度の薄さだということを頭に置いて、犬が痛くないように、毛の流れに沿って優しくブラッシングしましょう。適切な強さでブラッシングすると、血行がよくなる効果も期待できます。

抜け毛は気が付いたときにすぐ片付けて

また、とかしてブラシについた抜け毛や、床に落ちている抜け毛は、気が付いたときにすぐ片付けるのがベストです。

「そのままにしておくと不衛生ですし、アレルギー体質の子は反応が表れることもあるので、なるべく早く片付けてあげてください」

併せて、月に1~2回を目安に、犬用シャンプーで体を洗ってあげるのも皮膚トラブルを防ぐのに有効。洗ったあとはタオルでよく拭いて、ドライヤーを冷風または弱風で使って、生乾き状態を避けましょう。一方で、空気が乾燥する季節には、加湿器などを使って保湿をし、皮膚のバリア機能を補うことも大切です。

皮膚疾患だけじゃない、脱毛症状のある病気

換毛期のような、基本的には問題のない抜け毛と違って、注意が必要な抜け毛もあります。

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注意が必要な抜け毛もあるという(Ph/イメージマート)
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「1か所に集中して毛がごそっと抜ける場合や、毛が抜けたあとの皮膚が赤くなったりかさぶたができたりしている場合、かゆそうにしたりフケが多く出たりしている場合は皮膚疾患の可能性が高いです」

犬の皮膚疾患は、アトピー、アレルギー性のものや、ノミ、ダニといった寄生虫によるもの、細菌や真菌、酵母(マラセチア)の感染による炎症、心因性のものなど、種類はさまざま。脱毛が気になるときは、動物病院で疾患を突き止めて、原因に合わせた適切な治療を行うことが大切です。

「病院で脱毛の原因を解明する際には、飼い主さんの問診も重要な手がかりとなります。犬の年齢や性別などの属性情報に加えて、普段の食事やおやつの内容、使用している食器、飼育環境や散歩のコース、病歴や疾患と関係がありそうな最近の出来事、犬の様子からうかがえるかゆみのレベルなどを獣医師に伝えられるといいでしょう」

内臓疾患の影響が皮膚に出て脱毛が起きることも

皮膚疾患ではなく、内臓疾患の影響が皮膚に出て脱毛が起きることもあります。この場合は、皮膚以外にもなんらかの異常が見られることが多く、例えば、食欲や体重が大きく増えたり減ったり、水を大量に飲んだり、興奮したり、逆に元気がなかったりといった変化が見られます。

「そうなると、動物病院で血液検査などをして原因を調べることになります。副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、性ホルモン疾患、糖尿病、亜鉛欠乏症などで脱毛の症状が出ることがありますね」

毛づやも、やはり犬の健康度を表すバロメーターの1つ。ブラッシングしながら、毛や皮膚の状態を日頃から観察して、愛犬に末永く元気でいてもらいましょう。

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

山本
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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