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犬の耳がにおったら要注意!外耳炎の可能性も 予防のための耳そうじのやり方

耳をチェックされる犬
犬の耳がにおったら要注意!外耳炎の可能性も(Ph/イメージマート)
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ペットのニオイは飼い主さんの悩みのもとですが、体臭や口臭、便臭、肛門臭など、発生源別に対策するとかなり軽減でき、ペットの健康管理にも役立ちます。今回は犬の耳が臭うときの対応について、獣医師の山本昌彦さんに話を聞きました。

耳の病気、犬は猫よりリスク高い?

犬の耳は普段から独特のニオイがしますが、それがツンとした刺激臭や悪臭に変わった場合は、やはり病気のサインであることが多いようです。

山本さんによれば、「耳の悪臭は、外耳炎を発症しているケースが多いです。耳の入り口(耳介)から鼓膜までの外耳道に炎症が起きる病気です。犬の外耳道は垂直部分と水平部分からなるL字形で、人間の外耳道より通気性が悪いので、病気になりやすいんです」とのことです。

耳からの悪臭以外にも、耳の痒みや痛み、違和感などのため、気にして頭を振ったり、後ろ足で耳を掻いたりする仕草が増える、飼い主が頭や顔を触ると嫌がる、(外耳道だけでなく)耳介にも赤みや耳垢などが見られるといった兆候があるので、異変を見つけたときはすぐに獣医師に診てもらいましょう。

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異変を見つけたときはすぐに獣医師に診てもらうのが肝心(Ph/イメージマート)
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消化器疾患、皮膚疾患に次いで耳の疾患が多い

アニコム損保の調べによると、犬が動物病院を受診するケースでは、消化器疾患、皮膚疾患に次いで多いのが耳の疾患。例年、保険に加入している犬の15%以上が耳の病気で来院するといいます。猫では5%以下の割合ですから、犬に多い病気といえるでしょう。

垂れ耳やアレルギー体質だと外耳炎のリスク

外耳炎の原因は、細菌や真菌(マラセチア)といった微生物の増殖、耳ダニの寄生、アトピーや食物アレルギー、異物が耳に入ったことによる物理的な刺激などがあります。

外耳炎のリスクが高い犬種は、パグやフレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバー、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエル、シー・ズー、ラブラドール・レトリーバー、マルチーズ、トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、柴犬など。ただし、他のどんな犬種でも外耳炎になる可能性はあるので要注意です。

「垂れ耳だったり、外耳道が狭かったり、耳の中にも毛が密集して生えていたりすると、耳の中の湿度が高くなりやすく、細菌の発生などを招きやすいんです。垂れ耳の子は、梅雨どきから夏にかけて、特に外耳炎になりやすいですから、普段以上に気を付けてあげてください。柴犬やシー・ズーの場合はアレルギーが原因のことが多いですね」(山本さん・以下同)

家庭での耳そうじは“拭くだけ”にとどめて

予防策として有効なのは、やはり耳を清潔に保つこと。

「ニオイ対策という意味でも、健康管理の意味でも、耳そうじは定期的にしたほうがいいですね。普段は月に1回ぐらい。トリミングに通われているなら、サロンに一緒にお願いするといいと思います。そのとき、耳の中の毛を抜いたりカットしたりしてもらうと外耳炎のリスクをさらに下げられます。夏場はトリミングとトリミングの間に自宅でも1回やって、耳そうじの頻度を2週に1回程度に上げると安心ですね」

耳そうじの正しいやり方は?

もちろん、外から耳垢が見えた場合などには、周期にこだわらずにケアしましょう。では、自宅での耳そうじは、どのようにするといいのでしょうか。

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ウェットティッシュを使って、耳の入り口を拭いて(Ph/イメージマート)
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「アルコールフリーの犬用ウェットティッシュを使って、耳の入り口を拭くのが、自宅での耳そうじです。耳をそっと持ち上げて、目に見える範囲、指で触れられる範囲を拭いてあげてください」

仕上げにイヤーローションを使ったり、細かいところの汚れを拭くのに綿棒を使ったりしても構わないといいます。ただし、綿棒でぬぐう範囲にはご注意を。

「綿棒で拭くのも耳介(じかい、耳のもっとも外側の部分)の溝までにしてください。耳の奥まで綿棒を入れると、かえって耳垢を押し込んでしまったり、耳の中を傷つけてしまったりする恐れがあります。耳の中が傷つくと、それが原因で外耳炎になったりもします。犬も嫌がる子が多いはず。あとから気にしてしつこく掻いてしまって、耳が傷つくこともあります」

耳そうじを嫌がる犬には段階を踏んで

そもそも耳そうじを嫌がる犬も多いはず。まずは飼い主さんが抱っこしたり背中などを撫でたりしながら耳に触ることから始めると、うまくいきやすいようです。

「耳に触ることが当たり前になったら、次は耳の外側を軽く拭いて犬用ウェットティッシュに慣れてもらいましょう。耳を拭かれる感覚に慣れてきたら、いよいよ耳そうじを。このように段階を踏むと犬も受け入れやすいはずです。耳そうじの直後におやつをあげたりして、うれしいこととセットにするのも犬には効果的ですよ」

猫も耳そうじは必要?

ちなみに、猫は立ち耳の種類がほとんどですが、耳そうじの必要があるのでしょうか。

「猫も犬より確率はずっと低いですが、耳ダニが寄生したり外耳炎になったりすることがあります。耳そうじは、できるならしてあげたほうがいいですね。ただ、猫は犬のようにはなかなか耳そうじをさせてくれないと思いますし、そっと拭く程度で大丈夫です」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師・山本昌彦さん
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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