
3年に一度の「瀬戸内国際芸術祭2022」(通称・瀬戸芸)も、開催中の秋会期でフィナーレを迎えます(11月6日まで)。全国旅行割も始まり、芸術の秋とあって、旅先の候補にしているかたも多いのでは? でも「のんびり島旅~」と思って旅をするのはちょっと心配なことも。そして、「島によっては芸術祭が終わった閉幕後がねらい目です」と旅行ジャーナリストの村田和子さん。その理由や旅のヒントを紹介します。
* * *
今年はコロナもあり、春会期のスタート時には間に合わない作品もあったりと、スロースタートだった「瀬戸内国際芸術祭2022」。秋の行楽シーズンを迎え、全国旅行割の発表もあり、秋会期はいつも以上に賑わいそうです。


きままに旅をしたいところですが、実は瀬戸内国際芸術祭を旅するには、計画と情報収集がとても大切。知っておきたいポイントをご紹介します。
最初に:瀬戸内国際芸術祭のアプリは必携!充電も忘れずに
「瀬戸内国際芸術祭2022」を個人旅行で巡るなら、公式アプリのダウンロードは必ずしましょう。作品の場所や解説、島へのアクセスが検索できる他、休館や船の運休などのお知らせがタイムリーにきます。

夏会期は、コロナ感染で運転手が確保できずに長期間、高速艇が運休となったり、秋会期になってからも作品が荒天などでクローズや時間変更になったりという連絡が頻繁にあります。また、混雑予想もあるので、柔軟に旅の計画を変更するのにも便利です。ただしスマホの電池切れは命取りとなりますから、バッテリーを持参するのも忘れずに。さらに、紙のガイドブックも持っておくと安心。重たいので、アプリで不便を感じなければ大丈夫でしょう。

今、行くべき島は? 直島・豊島などは閉幕後がおすすめ?
実はアートな島として人気の直島や豊島は、美術館や屋外作品など常設の作品が多く、「瀬戸内国際芸術祭2022」の会期後も(一部作品を除いて)楽しめます。会期中は週末を中心に島へアクセスする高速艇やフェリー、あるいは島内でのバス、レンタサイクルなども混み合います。直島や豊島が目的なら、「瀬戸内国際芸術祭2022」が終了したのちに、ゆっくり周るのも一案です。

なお、直島は月曜日、豊島は火曜日が休島日となります。多くの施設やお店などもお休みとなるので計画の際は注意しましょう。その他、小豆島も屋外施設が多く、開催後も楽しめる島のひとつです。

反対に、秋会期開催の主に西側に位置する島々は、会期中のみの作品が多く、アクセスも通常は不便な地域なので、会期中に訪れたいところ。会期中なら高速艇やフェリーが増便され、周りやすいように特別な運航ルートもあります。なお高松港から近く人気の男木島、女木島は、屋外作品は通年楽しめる一方で、屋内作品は会期中のみ。
ハンセン病の島として長く閉ざされていた歴史のある大島は、筆者的には、ぜひ訪れてほしい島。2019年に高松から大島までの航路が一般に開放されたものの、コロナ禍になり上陸は許可を得た人のみ。「瀬戸内国際芸術祭2022」の期間中は、芸術鑑賞を目的に訪れることは可能ですが、大島までのフェリーは乗船整理券が必要です。

整理券の配布開始は、出発時刻の30分前が目安。日によっては配布前から行列ができるので、確実に行きたい場合は早めに整理券の配布場所に並ぶようにしましょう。その他の島についても、お目当ての作品の公開状況を確認して、訪れる時期は検討するといいでしょう。
高速艇に乗れない!?朝と夕方は定員オーバーになることも
「瀬戸内国際芸術祭2022」の舞台を結ぶ高速艇やフェリーは予約ができないところが多く、先着順(整理券配布)、島民優先となります。予定していた船に乗れないと次は数時間後というところもあり、旅の計画も変更を余儀なくされます。
特に朝一番に島へ向かう、そして公開終了後の夕方に高松や岡山の玉野などに戻る高速艇は注意が必要。フェリーと比較して乗船定員がもともと少ないうえ、芸術祭の運営を行うスタッフも乗船することから混みあいます。フェリーも一部航路については、特に夕方の便は混みあうことがあるので状況を確認しておくといいでしょう。

なお大きな島では島内の移動手段も確保を。レンタサイクルを利用する場合は、予約をしていきましょう。予約で埋まってしまい当日は借りられないことも週末を中心に発生しています。
【島内の移動手段の検討が必要な島】
直島:レンタサイクル、路線バス
豊島:レンタサイクル、原付バイク、三輪車バイク、路線バス
小豆島:レンタカー、自家用車、路線バス
本島:レンタサイクルorコミュニティバス(本数が限られる)
岡山から香川へ 瀬戸内海を移動する旅は荷物に注意
岡山県の宇野港から芸術祭の舞台の島を経由し、香川県の高松港へ(あるいはその逆)という瀬戸内海縦断ルートで旅を検討しているかたも多いのでは? その際、気を付けたいのが荷物。荷物預かりやコインロッカー等の数は、島では限られています。大きな島だと離発着で違う港を利用したいこともでてくるかもしれません。意外と荷物をどうするか?は大事なので心に留めておきましょう。

拠点を作ると安心。欲張らない&ツアー利用も検討を
初めてのかたなど慣れていない場合は、宇野港や高松港などの近隣にホテルを取り、そこを拠点に身軽に島へでかけるのがおすすめです。荷物は連泊ならお部屋に、チェックイン前後もホテルで預かってもらえますし、海外の旅行者も多かったこともあり、駅には大型のコインロッカーも豊富にあります。

また、つい予定を詰め込みがちですが、欲張らず1日1島などにすると無理がありません。宿泊施設は限られますが、お目当ての島に泊まるのも、朝夕の船の混雑を気にせずに鑑賞でき、晴れていれば星空なども楽しめます。
「複数の島を効率よく回りたい!」という場合は、オフィシャルのツアーという手もあります。ガイドが同行し、移動はチャーター船。面倒なことは、お任せでアートを心行くまで楽しみたいかたにおすすめです。


通常の旅に比べてケアも必要ですが、コロナ前は世界中から観光客が訪れた人気スポットであり、アートの祭典。好みで島や時期を選んで、ぜひお出かけください。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年よりNHKラジオ『Nらじ』月一レギュラー。トラベルナレッジ代表(https://www.travel-k.com/)。旅ブログも行っている(http://www.murata-kazuko.com/)。
●全国旅行割で秋の旅を楽しむ!「お得な利用法」と「穴場の旅プラン」を旅行ジャーナリストが解説