
暗い場所でものが見づらい、目がよく乾いて痛くなる、といった疲れ目は、放置すると慢性化する可能性があります。疲れ目対策には目薬やサプリメントだけでなく、食事などの生活習慣を見直すのが有効だと、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは言います。そこで、疲れ目をセルフケアする方法と取り入れたい食材、効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。
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目がかすむ、ドライアイ…疲れ目の原因
疲れ目は、目のピントを合わせるために働く筋肉の疲労や、血行不良などによって起こります。具体的な症状は、目がかすむ、目の奥が痛い、ドライアイ、まぶたがピクピクするなどです。
ただし、疲れ目は一時的な疲労による症状なので、休養の時間をとったり、一晩眠ったりすれば自然と解消されます。ただし、放置すると、慢性化して眼精疲労に発展する可能性があります。

眼精疲労とは、疲れ目の症状にくわえて、頭痛や肩こり、全身の重だるさを感じ、休養してもなかなか解消されず、繰り返し不快な症状を感じる状態です。とくに、50代からは加齢の影響もあり、疲れ目や眼精疲労を起こしやすくなる人が多いようです。
短時間でできる疲れ目のセルフケア法
疲れ目を慢性化させないためには、生活のなかに目のセルフケアを取り入れるのがおすすめです。道具を使わず短時間でできる方法を2つご紹介します。
目を温める
まず、両手を約10秒間こすり合わせて、手を温めましょう。手をカップ状にし、閉じた目の上にそっとのせます。優しい温かさがじんわりと伝わり、筋肉の緊張がほぐれて血流を促します。
遠くと近くを交互に見る
手元ばかり見ていると目のピントが近くに固定され、目の周りの筋肉が筋疲労を起こしやすくなります。

1時間に1回程度、遠くと近くを交互に10秒ずつ見るのを10回繰り返してみてください。目の周りの筋肉がストレッチされ、血行促進も期待できます。
血流を促すのがカギ!疲れ目におすすめの食材・栄養素
疲れ目対策に取り入れたい、おすすめの栄養素はビタミンEです。ビタミンEには、血管を拡張して血流を促す働きがあり、目の周りの筋肉の老廃物の回収や栄養補給に役立ちます。
そこで、ビタミンEを多く含む食材から秋に旬を迎える今の季節にぴったりのものを3つご紹介します。
メカジキ

魚介類のなかでもメカジキはビタミンEを多く含みます。メカジキは冷凍や輸入物が多く、通年で手に入れやすい食材ですが、秋から冬にかけては日本近海で獲れた生のものが出回ります。
秋から冬のメカジキは、ほかの季節のものに比べて脂がのっているためとくに美味しく、皮もなく身崩れしづらいので、調理しやすい食材です。
落花生

落花生に多く含まれるビタミンEは熱に強く、加熱しても減らないのが特徴です。炒った落花生は通年で食べられますが、生の落花生が手に入るのは10~11月。この時期だけ楽しめる、採れたての落花生の塩ゆでもおすすめです。
西洋かぼちゃ
かぼちゃには、西洋かぼちゃと日本かぼちゃがありますが、ビタミンEが豊富に含まれているのは西洋かぼちゃです。

表面の凹凸が少なく、全体的に丸みを帯びているのが特徴です。収穫のピークは真夏から初秋ですが、一定期間保管され追熟することで甘味が増すため、秋から冬にかけてがとくにおいしい季節といえます。
疲れ目には漢方もおすすめ
手間をかけずに疲れ目対策をしたいのであれば、漢方薬をのむという方法もあります。
漢方薬は、疲れ目の根本改善を目的としているため、繰り返す目の疲れで悩む人にはとくにおすすめです。漢方薬は医薬品として効果が認められており、眼科での治療にも応用されています。

疲れ目の原因となる、ストレスや過労による筋肉疲労や血行不良、目の乾燥などを改善するため、「血流をよくして目の周りの筋肉をゆるめる」「目に栄養を届けて疲れを軽減する」「水分の循環をよくしてドライアイを改善する」「自律神経のバランスを整え、ストレスが原因の目の疲れを軽減する」などの作用をもつ漢方薬が選ばれます。
さらに、疲れ目だけでなく「目がかすむ」「視力が低下した」などの症状に効果が認められている漢方薬もあります。
疲れ目におすすめの漢方薬2つ
・四物湯(しもつとう)
血液の元となる栄養を補い、肝の働きを助ける漢方薬です。肌や爪にツヤがなく、集中力が続かない人に用いられます。
・杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
腎の働きを高め、かすみ目や疲れ目に働きかける漢方薬です。疲れやすく、ときに手足のほてりや口渇がある人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。