おいしいものが続々と市場に出回る秋。食欲のおもむくままに食べていたら、体重増加や胃腸の不調などを招きかねません。しかし、「食べたい」という気持ちを抑えるのはなかなか難しいもの。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、生活習慣を見直すことで、食欲のコントロールがしやすくなるそうです。そこで、意識したいことや食事に取り入れたい食材、食べ過ぎを防ぐ効果が期待できる漢方薬を教えてもらいました。
* * *
秋に食欲が増す理由
夏から秋にかけて気温、湿度ともに下がり胃腸の働きが活発になること、気温の低下により基礎代謝が上がりエネルギー要求量が増えること、多くの食材が収穫の時期を迎え視覚的刺激が増えることなどから、秋は食欲旺盛になると考えられています。
また、秋に限らず、気候の変化に順応できない、ストレスが大きい、睡眠不足などの要因で自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが乱れていると、食欲が増す場合があります。
秋の食欲を抑えるコツ
食欲をコントロールするには、「食べたい」という気持ちを抑えるよりも、食欲が乱れないように生活習慣を見直すことが大切です。そこで、食欲を安定させるためにすぐ実行できることを3つ紹介します。
咀嚼(そしゃく)
20~30分ほど咀嚼をすると脳の満腹中枢に刺激が入り、必要以上に食べる前に満腹を感じることができます。しかし、咀嚼することに意識を集中しすぎると、交感神経が優位になって胃腸の働きが弱まり、消化吸収力が低下することもあります。
そこで、何回噛むのかを意識するよりも、ゆっくりと味わって、口の中の食べ物が固形からペースト状に変化するのを観察するようなイメージで食事をするのがおすすめです。
ストレスをためない
大きすぎるストレスは、交感神経を優位にさせます。交感神経が優位な状況では胃腸の働きが抑えられる反面、エネルギー消費量が増えるため、摂食欲求が高まります。そうすると、「たいしてお腹は空いていないのに食べたい」という状況が起こりやすくなるのです。
また、脳は長期間ストレスにさらされると情報伝達機能が低下するため、食べない方がいいと分かっていても食べてしまう、十分に食べたのにもっと食べたい、という状況も起こりやすくなります。ストレスはため込み過ぎないように、こまめに解消しましょう。
十分な睡眠
睡眠不足の状態では、食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌が減少し、食欲を高めるホルモンのグレリンの分泌が増加します。つまり必要以上に「食べたい」と感じるようになり、より多く食べないと満足できない状態になるのです。
食欲を安定させるためには、朝、目覚ましなしで気持ちよく起きられるくらいの睡眠時間を確保できるといいでしょう。
食欲のコントロールにおすすめの食材と栄養素
食欲をコントロールするためには、咀嚼ができる食材やストレス緩和のサポートになる食材を選びましょう。また、食べ過ぎてしまったときには余分なものを速やかに排出する効果のある食材を摂ることも有効です。それではどんなものを食べるのがよいのでしょうか。
米
8月から11月は店頭に新米が多く並ぶ時期です。米は、主食のなかでもパンや麺に比べて咀嚼しやすい食材です。また、ストレスの緩和や質のいい睡眠に過かせないホルモンである「セロトニン」の材料になるトリプトファン、マグネシウム、ビタミンB6、糖質のすべてを含みます。
しいたけ
原木栽培のしいたけの旬は春と秋で、秋は9月から11月ごろに多く出回ります。一年中手に入る菌床栽培のしいたけに比べて、原木栽培のものは食物繊維の量が多いという特徴があります。食物繊維は腸内で老廃物や毒素などを吸着して体外に排出する働きがあり、食べ過ぎた後のデトックスを助けてくれる成分です。
また、しいたけはほどよい噛みごたえがあるため、汁物や煮込み料理などの柔らかい料理にくわえることで、咀嚼の回数を増やせます。
ココア
食物繊維が豊富なココア。さらに、ココアに含まれるテオブロミンには血行を促す、緊張を緩和する、自律神経のバランスを整えるなどの効果があり、ストレス緩和や睡眠の質の確保に役立ちます。温かいココアを飲んで、ホッと緊張が緩まるのを体感したことがある人もいるでしょう。