健康・医療

健康寿命を左右する50代のダイエット「体重よりも大事なこと」を管理栄養士が解説

健康のためには「やせなくていい」

さらに森さんは、驚くべき提言をします。

「50代のダイエットは、実はやせなくていいです。これから行うべきダイエットは、あくまでも“健康”のため。健康に問題がなければ、無理してやせなくてもよいのです」

どういうことでしょうか。

ダイエットは「体重を減らすもの」と思いがち(Ph/photoAC)
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体重だけでは判断できない

「健康であれば、肥満の指標の一つとされるBMI[体重kg÷(身長m×身長m)]が25以上であっても、体脂肪率が基準範囲内(女性は20〜29%)でさえあれば、やせる必要はありません。本当に健康的かどうかは、体重の重さだけでは判断できないからです」

注意すべきは、内臓脂肪型のメタボリックシンドローム。肥満に加えて高血圧や高血糖、脂質異常などを併発したメタボの人では、脳卒中や心疾患を引き起こす動脈硬化がどんどん進んでしまいます。

体脂肪減で病気のリスクが下がる

「50代は体脂肪を減らすことによって、糖尿病をはじめとした生活習慣病、心疾患や脳卒中などの病気のリスクを確実に減らすことができます」

この先、健康に生活できる時間が健やかに伸びていくのかどうか。50代はその分岐点であると森さんは強調します。

「いつまでに◯kg減」の目標はNG

健康になるためのダイエットで大事な点はまだあります。

「中高年になったら、短期間で『〇kgやせる』という目標は決して立ててはいけません。50代からのダイエットの目標はあくまでも健康。落とすべきは体重ではなく、体脂肪率です」

食事を減らして体重が落ちても、体脂肪率が減るわけではありません。

体重よりも「体脂肪率」を減らすことが大事(Ph/photoAC)
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筋肉と水分が減るだけ

「実は、ダイエットですぐに落ちるのは水分。過度な食事制限では栄養状態が悪くなり、筋肉や骨の量も減ります。つまり、短期間で体重を落とすダイエットをしたところで、減るのは水分と筋肉だけで、体脂肪は全く減っていない可能性が高いのです」

食事制限に加えて激しい運動をすれば、エネルギーと栄養素が不足して、結果的に筋肉が減ってしまう可能性もあるといいます。

体脂肪減らしには時間がかかる

「つまり、体脂肪を減らすには、栄養のバランスが取れた食事をとり続けながら、適度に運動をし、ゆっくり時間をかけるほか、近道などないのです」

森さんによると、体重が60kgで体脂肪率30%の女性が仮に運動だけで体脂肪を減らすには、消費カロリーの計算式に当てはめると、「毎日32分、30日間歩き続けることで、ようやく1%減る」計算になるそうです。この場合、体脂肪率1%は重さ600g。

「あくまで計算上ですが、体脂肪はそう簡単には減らないということです。健康的な食事を続けながら、適度な運動もする習慣をつけることこそが、50代で行うべき、正しいダイエットのあり方なのです」

◆教えてくれたのは:管理栄養士、日本抗加齢医学会指導士・森由香子さん

管理栄養士、日本抗加齢医学会指導士の森由香子さん
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東京農業大学卒業、大妻女子大学大学院修士課程修了。医療機関での栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導、フレンチの三國清三シェフとともに病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを経験。抗加齢医学会指導士の立場からは〈食事からのアンチエイジング〉を提唱し、独自の食事法の普及に努めている。著書多数。2023年1月、『一生、元気でいたければ 50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』(青春出版社)を出版。https://moriyukako.com/

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