
女性の多くが抱える「冷え」の悩み。体の冷えが起こす悪循環を放置するのは危険です。著書『お医者さんが教える 老けない習慣』(三空出版)が話題の医師・糸井由里恵先生さんに、冷えが引き起こす不調のメカニズムについて話を聞きました。
冷えが起こす不調のメカニズム
「『冷え=血液の循環がよくない』ということです。循環が悪ければ、酸素や栄養が体の隅々に行きわたらず、老廃物の回収も滞ります。これが不眠や免疫低下など、さまざまな悪循環のきっかけになります。
肌も同じで、血行が悪くなれば表皮は栄養不足に陥ります。また、血行不良は肌をくすませる原因にもなります」(糸井さん・以下同)
さらに詳しく、冷えが体に及ぼすさまざまな影響について解説してもらいます。
基礎代謝が落ち太る
「人間の体は、体温が37℃前後で最適に活動できるようになっています。つまり、冷えると基礎代謝が落ち、体温を維持するための熱の産生がうまくいきません。しかも、体温が1℃下がると基礎代謝が12%落ちるといわれています。代謝が落ちればエネルギー消費(カロリー消費)が少なくなり、結果的に太ります」

便秘や下痢の原因にも
「また、冷えると血管が縮んで血液の流れが悪くなり、リンパの流れも滞って水分の排出がうまくいきません。腸の動きも弱くなり、食べたものをうまく消化できずに脂肪として蓄えてしまうだけでなく、便秘や下痢の原因にもなります」
体が冷える原因は1年を通じてたくさんあります。秋冬の感染症の流行期には、常時窓を開けて換気をすることが重要ですが、冷たい空気を感じた場合は、カーディガンを羽織るなどの対策をするようにしましょう。
体を冷やさない工夫
「冷え予防には、体内部の温めケアを」と糸井さんは推奨します。体を冷やさない工夫とは、どのようなものでしょうか。
体を冷やす飲み物、食べ物をとりすぎない
「レタス、キャベツ、きゅうり、トマト、すいか、白砂糖など体を冷やす食べものをとりすぎないよう注意しましょう。
ホットコーヒーや温かい緑茶などカフェインを多く含むものは、利尿作用によって体から熱を奪ってしまうので飲み過ぎには注意してください。製造過程で発酵させたお茶(紅茶、ほうじ茶、烏龍茶、プーアル茶など)は、体を温める効果が期待できます」

服装の工夫
「季節を問わず、冷暖房が効いている場所が多いので、外出中は着脱しやすい羽織りものや、ストールなどを持ち歩くようにしましょう。冷え性の人は、体の中心部をあたためる腹巻を常用するのがおすすめです。重ね着と腹巻で体を冷やさないようにしましょう」
タバコはNG
「冷えと老化を促進させるタバコはやめましょう。喫煙は急激に血管を収縮させるので、血液の流れが悪くなります。
また、冷えだけでなく、口まわりの老化の進行が早まったり、顔色も緑がかった特有のくすみが出てきてしまいます。若見えを意識するうえでも、喫煙はおすすめできません」

毎日湯船に浸かる
「入浴をシャワーで済ませるのではなく、毎日湯船につかるようにしましょう。お湯に浸かると水圧で末梢血管が圧迫され、お風呂から上がると戻ります。その変化が血行を促進させ、冷え解消に繋がります。
おすすめの入浴法は、40℃前後のお湯に15分程度つかることです。就寝の1時間前に入浴すると、寝つきが良くなります。また、熱すぎるお湯や長風呂は体に負担をかけるためやめましょう。湯上がりはボディクリームで全身の保湿ケアも忘れずに行ってください。とくに皮脂腺が少ないひじ、ひざ、かかとは念入りにケアしましょう」
朝晩と日中の気温差が大きい時期は、特に体調を崩しやすい季節でもあります。気温の変化にも上手に対応し、体の冷え対策をしっかり行いたいものです。
◆教えてくれたのは:医師・糸井由里恵さん

埼玉県生まれ。日本医科大学を卒業後、同大学付属病院形成外科で勤務。皮膚科・麻酔科・救命救急・訪問診療など多彩な分野で経験を積み、形成外科専門医を取得。現在は都内美容クリニックで多くの女性の悩みに日々向き合う。一般的な顔の美容整形手術のほか、美容婦人科系の治療も得意とする。今年7月、老化のスピードをゆるやかにして楽しく美しく年齢を重ねる「スローエイジング」の考え方を取り入れた『お医者さんが教える老けない習慣』(三空出版)を出版。