骨粗しょう症のリスクが上がる
「やせすぎにより、女性ホルモンのエストロゲンが減少します。閉経後の女性において、エストロゲンの生成と分泌に大きな役割を果たしているのは、実は脂肪細胞なのです。そのため、閉経後に体脂肪が極端に減ると、エストロゲンが激減してしまいます。
その影響はさまざまありますが、特に注意が必要なのが、骨の健康。エストロゲンが減ると骨からカルシウムの流出が増え、骨粗しょう症になりやすくなります」
骨の健康を保つためにも、50代女性のやせすぎには注意が必要です。
糖質制限ダイエットの問題点
ごはんやパンなどの炭水化物を摂らないようにする「糖質制限ダイエット」にも注意すべき点があるといいます。
リバウンドしやすい
「すぐに体重が減りやすく、多くのかたに支持される糖質制限ダイエットですが、リバウンドしやすいという大きな欠点を持っています。
実践する間は血糖値が上がりにくいので満腹中枢が刺激されず、ストレスを感じやすいために長続きしにくいことが一つ。さらに、糖質制限をしばらく続けていた人が普通にご飯を食べはじめると、糖質がどんどん水の分子を取り込んでグリコーゲンになろうとするのでリバウンドしてしまうのです」
糖質不足は筋肉のたんぱく質代謝にも影響を及ぼすため、炭水化物をとらなくなると筋肉量が減り、基礎代謝が落ちることで、「太りやすく、やせにくい体」になってしまうそうです。
50代の心身に及ぼすリスク
50代以降は精神面でもリスクが大きいと森さんは指摘します。
「炭水化物を抜くと頭が働かなくなったり、イライラしたりします。主食を我慢することで精神状態が不安定になるため、更年期障害が重くなったり、睡眠の質が落ちたりもします。
炭水化物を我慢することで脂質が多いおかずの量が増え、中性脂肪やコレステロールが上昇しやすくなってしまいます。また、食物繊維も不足しがちで、便秘にもなりやすい。健康第一の50代のダイエットを考えたとき、リスクがあまりにも高いと言えます」
糖質制限ダイエットを実施する際には、管理栄養士やトレーナーなどの専門家の指導のもと、必要な栄養素やエネルギーを摂取して運動しながら行うことが肝心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士、日本抗加齢医学会指導士・森由香子さん
東京農業大学卒業、大妻女子大学大学院修士課程修了。医療機関での栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導、フレンチの三國清三シェフとともに病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを経験。抗加齢医学会指導士の立場からは〈食事からのアンチエイジング〉を提唱し、独自の食事法の普及に努めている。著書多数。2023年1月、『一生、元気でいたければ 50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』(青春出版社)を出版。https://moriyukako.com/