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「境界悪性腫瘍」65歳オバ記者が手術後4か月の検診をレポート 待ち時間に考えたのはすい臓がんで亡くなった親友のこと

オバ記者
手術後の検診へ。長い待ち時間中思い出したのは親友F子のことだった
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昨年は、入院と手術を経て境界悪性腫瘍であることがわかった、ライター歴30年を超えるベテランのオバ記者こと野原広子(65歳)。退院後4か月目の検診を受けに病院へ。待ち時間に思い出したのは昨年夏にすい臓がんで亡くなった親友のことだった――。

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血液検査とエコー検査を受けてきた

「子もち」「家庭もち」、「家もち」というのもある。その人の背景をいうときの言葉だけど都会の独居用マンションでひとり暮らしの私は、そのどれもない。それでも年を重ねると何かをもつんだね。私の場合、「病気もち」。

去年の夏の盛り、異様にお腹がふくらんできたのが気になって、いやいや区の婦人科検診に行ったところ、大学病院で精密検査をすることになり、あれやこれや1か月かけて検査をした結果、「卵巣がんの疑い」で入院、手術。卵巣と子宮を全摘出して顕微鏡レベルの検査をして「境界悪性腫瘍」という、良性と悪性の中間というなんともとりとめのない診断をいただいたの。

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6時間もの手術を受けたオバ記者
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手術直後、「がんでなくてよかったです」と言ったE女医の、掛け値なしの笑顔を思い出すと、いまでも涙腺がゆるむわよ。けどね、だからといってがんの心配がないわけではない。先日、退院後4か月目で血液検診とエコー検査を受けてきたの。

苦手な注射も「逃げる心持ち」を習得?

大学病院といえば、待ち時間の長さは覚悟の上。スマホはもちろん読みかけの単行本も仕込んできたわよ。で、受け付けをしたら、とりあえずは血液検査を受けてほしいとのこと。これが子供のころから苦手で、注射針が体に刺さり、そこから血を抜くなんて、あ、いま、書いただけで後頭部がうっすらしびれてきた!

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やたら待たせるのが大学病院
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だけど人間、なんでも慣れだね。血液検査が慣れることはないけれど、何回もやっているうに、いやなことから逃げる心の持ちようは身につけたのよ。要は考えない。順番待ちの間はこれから何をするか、考えない。順番がきたらスコンと腕を出して、クルリとあさってのほうを向いて、これから何が起きるか、考えない。

うふふ。今回はこれでうまくいったの。チクンと針が差した瞬間、「ううう~」と微かに唸ったけれど、看護師さんは私が血液検査恐怖症だと気づかなかったんじゃないかしら。

待ち時間には悪い想像ばかり…

しかし、慣れないこともあるんだよね。それは検査の結果待ちの時間。予約票には13時となっているけど、20分過ぎ、40分過ぎても呼び出し機はまったく反応しない。ウンでもスンでもない。女性科だから乳児もいて、ときどきその泣き声が聞こえたりするけれど、ほとんど無音なの。30代から70代ぐらいまでのあらゆる世代の女性は、スマホでゲームをしたり本を読んだりはしているけれど、みんな女に生まれた宿命を粛々と受け入れているのか、静か。

オバ記者
検査の結果待ちだけは慣れない…。入院中は景色を見ながら物思いにふけっていたな
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だから私もならって、鉄仮面をつくっているけれど、時計の針がすすむにつれて悪いことしか考えないわよ。

「そういえば前回、良性腫瘍でも腫瘍マーカーが上がるってE先生が言っていたけど、ここまで待たされるということは、何か悪いことが起きたのかな」とか。

「明日はきっといい日だ」というメールを残したF子

そんな時に思い出すのが、小学校からの友だち、F子のこと。昨年のお盆明け、区の検診で私の卵巣が12cmに腫れているとわかった直後、電話で「私、すい臓がんだって。ステージ? 聞いたけど医師は『う~ん』と首をかしげるんだよね」と爆弾発言。

F子とは美術館にもよく行った
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それから「作戦会議」と称して2回会い、それぞれが入院したあともお互いを励ますメールをしたり電話をかけたり。なのに私の退院した10日後にあっさりこの世を去るって、こんなのアリ?

彼女とは海外旅行も2度行っているし、都内の美術館、植物園、デパート、レストラン、日帰り温泉。F子が上京してから約30年の間、ありとあらゆるところに一緒に行っているから、どこに行っても顔が浮かぶんだよ。

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親友F子の事を思い出しながら西九州新幹線と記念撮影した時の一枚
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「担当医は『いますぐ深刻な状態になることはない』って言うんだよね」と言う彼女に、「医師はいい加減なことは言わないよ。大丈夫。よくなるよ」と私。

大学病院の談話室から見た風景と共に、彼女の声が突然よみがえってきて、そうなると体の動きがピタリと止まっちゃう。F子、「明日はきっといい日だ」というメールを残したけど、最晩年は何を考えていたのかな。

待ち時間、1時間を過ぎてようやく呼び出し機が震えだして、さらに診察室の前で待つこと約10分。

「はい、血液検査の数値は悪くないです。エコーも問題ないですね。次はまた3か月後に検診を受けていただき、そのときになにもなければ次は半年に一度の検診でよくなります」

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術後の検診は問題なし!
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E女医のテキパキとした声を聞いているうちに、目の前に立ち込めていた雲がスーッと晴れたよう。そうだよね。F子の分も頑張って前期高齢者として生きないとね。ガンバ、私!

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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