
春の彼岸が近づいてきましたが、墓参りのために帰省しているという人も多いのではないでしょうか? 生活コスト削減コンサルタントの生方正さんは「墓参りにかかる費用や時間、そして将来的にお墓が放置されてしまうリスクを踏まえて、自分もしくは親の代での墓じまいを前向きに検討しています」と話します。そこで、墓じまいのメリット・デメリットについて聞きました。
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心の安定をもたらす効果がある墓参り
墓参りには、お墓の前で先祖に感謝の気持ちを述べたり、直近の出来事を報告したりすることで、自分の気持ちを整理できるといった心の安定をもたらす効果があります。また、多くの成功者が先祖に感謝することで運気を高めていると聞きます。
時間もお金もかかって負担に感じる人も
その一方で、墓参りにかかる時間やお金を負担に感じている人もいます。

お墓が家から1時間程度の距離にあるのであれば大きな負担にはなりませんが、お墓が新幹線とローカル線を乗り継いで行くような距離にあると、墓参りは1日がかりのイベントとなり、家族で墓守をするために多くの時間と費用が必要になる家庭もあります。
仮に、お墓のメンテナンスだけであれば業者に頼むこともできますが、その場合も当然費用は発生します。また、費用や時間の負担からお墓がほったらかしになってしまうと、そのお墓の周辺のお墓の持ち主にも迷惑をかけることになってしまいます。
遺骨を守るのは誰のため?
お墓や仏壇に花を供える時、花は仏壇ではなく、手を合わせる人の方を向いています。これは、「私はいいので、あなたたちが愛でなさい」と言う意味です。先祖は本当に、子孫の負担になってでも遺骨を守ってほしいと考えているのでしょうか?

墓じまいを1つの選択肢に
墓参りの負担が大きいのであれば、墓じまいも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか? 墓じまいとは、今ある墓石を撤去して使用権を返還し、新しい場所に納骨することです。永代供養が可能な納骨先であれば、寺院などで永代にわたって供養していただくこともできます。
30年間のお墓の管理と墓じまいの費用に大差はない
コープの「家族葬ウィズハウス」(https://with-house.jp/)によれば、お墓の管理費用は年間2000円~1万5000円程度。仮に自分の代で30年管理するとすれば、管理費用だけで6~45万円ほどかかるそうです。さらにお花やお供え物の費用、墓石の修理費用、遠方に住んでいる場合は交通費や宿泊費なども加算されます。
一方、「お仏壇のはせがわ」(https://www.hasegawa.jp/)によると、墓じまいする場合の費用は30~300万円ほど(https://www.hasegawa.jp/blogs/ohaka/ohakajimai-price)。

納骨先や納骨方法によって費用が高くつくケースもありますが、お墓が遠方にある場合はお墓の管理費用と墓じまいの費用に大差はないと見ていいでしょう。
墓じまいには補助金制度も
墓じまいについては、補助金を出している自治体もあります。墓じまいの費用負担が気になっている方は、ぜひ一度ご自身の住む自治体やお墓のある自治体のHPをチェックしてみてください。
墓じまいは親族間で同意を得てから決定を!

墓守の負担を減らすことにつながる墓じまいですが、心理的な抵抗感を持つ人もいます。例えば、一人娘で実家のことを自分でやらなくてはいけないから…と周りに相談せずに墓じまいを決めてしまうと、親族トラブルの原因になることもあります。親族も交えて皆さんが納得できる形を選べるように、まずはお墓について話し合う機会を設けるところから始めることをおすすめします。
家庭の状況にあった供養方法の検討を
供養で大切なことは、遺骨が入ったお墓を守り続けることではなく、先祖に感謝をすることです。そもそも、立派なお墓に納骨して骨を敬う文化は日本独自のもので、日露戦争の戦死者の遺骨を遺族に渡したところから始まったと言われており、長い歴史があるものではありません。

現行の供養方法にこだわるのではなく、永代供養、樹木葬、散骨など、ご家庭の状況に合った供養方法を検討してみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は寝る前に、他界した身内の顔を思い浮かべて感謝することを続けています。立派なお墓を建てて、その管理を永遠に子供達に押し付けるより、一日数分でも故人を思い返したほうが喜ばれるような気がします。
◆教えてくれたのは:生活コスト削減コンサルタント・生方正さん

うぶかた・ただし。明治大学サービス創新研究所研究員。高校卒業後に海上自衛隊に入隊。勤務の傍ら節約術を駆使しながら、国内株式、金の現物買い、在日米軍に対する不動産投資などを行い、40代で2億円の資産を築いた。現在は生活コスト削減コンサルタントと南極講演家として、メディアで活躍中。著書に『高卒自衛官が実現した40代で資産2億円をつくる方法』(あさ出版)、『攻めの節約』(WAVE出版)など。
構成/新藤まつり