
ダイエットにはたんぱく質が重要と言われますが、実は摂り方によってはダイエット成功への道のりから遠ざかってしまうケースもあるといいます。今回は、体重78kgから1年間で24kgのダイエットに成功、その後、トータルダイエットカウンセラーとして活動し現在ヘルスフードサイエンス研究家として活動中の大西ひとみさんが、ダイエット成功のために知っておきたいたんぱく質の重要性と正しい摂り方について教えてくれました。

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たんぱく質はどうしてダイエットに欠かせないのか
たんぱく質は三大栄養素の一つで、生きていくために大切な栄養素です。たんぱく質はアミノ酸で構成されていて、そのアミノ酸は筋肉を作るのに必要です。そのため、たんぱく質をしっかり摂取することが筋肉を作ることにつながり基礎代謝量も上昇。つまり健康的なダイエットにはたんぱく質が不可欠なのです。
たんぱく質は大きく分けて野菜類から摂取する植物性たんぱく質とお肉やお魚から摂取する動物性たんぱく質がありますが、これらの摂取バランスもダイエットを成功させるためにカギとなります。では、次から詳しく見ていきましょう。
植物性たんぱく質と動物性たんぱく質の違い
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の大きな違いは、必須アミノ酸のバランスと吸収率と吸収の速度といわれています。

動物性たんぱく質は必須アミノ酸の含有量が多くそのバランスもよいとされているのに対し、植物性のたんぱく質は動物性たんぱく質に比べると必須アミノ酸が不足しがちな食材が多く、1gに含まれるたんぱく質量も少ない傾向にあります。また、体内へ吸収されるスピードも動物性たんぱく質のほうが早く、吸収率も動物性たんぱく質は約97%なのに対し、植物性たんぱく質は約84%と若干低くなります。
必須アミノ酸は、一番少ない必須アミノ酸のレベルに合わせて体内で働きます。多くの動物性たんぱく質は必須アミノ酸を全て含んでいるものが多く、たんぱく質が体内でうまく活用されやすいので、同じたんぱく質量を摂取したとしても動物性たんぱく質の方が体内でうまく使われるメリットがあるのです。
その反面、植物性たんぱく質に比べカロリーが高くなりがち。摂取しすぎるとカロリーオーバーになりやすいという面も。また、大量に摂り過ぎると胃腸での分解と吸収が完全にしきれず、腸内で腐敗して大量の“毒素”を作り出してしまい、解毒するために、肝臓や腸内でたくさんの酵素が消費されてしまうというデメリットもあります。
植物性たんぱく質は“質”という面では動物性たんぱく質に劣る点が多いですが、一方で、脂肪量が少なくカロリーも低く、ナトリウムやカリウムが豊富というメリットがあります。ナトリウムとカリウムは体内の細胞の内側と外側の水分量をバランスよく保つために共に働いています。
ダイエットの成功には植物性と動物性をバランスよく摂取
前述のようにダイエットを成功させるためには、植物性と動物性のたんぱく質をバランスよく摂ることが重要です。普段からカロリーばかりを意識しすぎて野菜ばかりからたんぱく質を摂取したり、動物性たんぱく質の摂取が少なすぎたりすると必須アミノ酸が不足し、筋肉量が減ることに。その結果、基礎代謝量が低下し、太りやすく痩せにくい体質になってしまいます。

私は植物性たんぱく質のみからたんぱく質を摂取する方法でダイエットを効率的に成功させることは難しいと考えています。必要量のたんぱく質を植物性たんぱく質から摂取しようとすると現実的には難しいほど量が多くなってしまうだけでなく、バイオロジカルバリュー(摂取したたんぱく質が、体内においてどの程度の割合で有効利用されるのかという数値のこと)が動物性たんぱく質に比べると低い食材が多いからです。
だからと言って動物性たんぱく質が多い食材ばかりを食べて植物性たんぱく質を一切摂取しないのも健康上の理由を含めダイエットに効率的な手段だとは思いませんが、ダイエットをする上では動物性たんぱく質の摂取をより意識することが望ましいと考えています。
肉や魚は野菜に比べるとカロリーが高くなります。摂取しすぎはもちろんカロリーオーバーになりますし、身体の負担にもなります。動物性たんぱく質の摂取を意識すると同時にその質や、カロリーに目を向けるのも忘れないようにしましょう。
専門家がすすめる優秀たんぱく質食材はゆで卵
以上のことを踏まえて、私が最もおすすめしたい食材は、動物性たんぱく質が豊富なゆで卵です。私自身、毎日2個は摂取しています。卵はバイオロジカルバリューが非常に高い食べ物なのに、カロリーは卵1個約91kcalしかありません。

脂質もリノール酸、オレイン酸、レシチンなどが含まれています。ビタミンはたんぱく質の代謝に重要なビタミンB2、B12を含んでいますし、骨や歯を丈夫にするビタミンD、抗酸化作用で免疫力を高めるビタミンAやビタミンEなど、ミネラルは、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなどを多く含んでいます。
たんぱく質の吸収を考えるならスクランブルエッグよりもゆで卵
生やスクランブルエッグなどではなく、ゆで卵にこだわる理由は、同じカロリーでもゆで卵の方がたんぱく質の吸収率がはるかに高いからです。
卵に含まれるオボムコイドという成分はたんぱく質の吸収を阻害するのですが、オボムコイドは熱を加えると分解されてたんぱく質の吸収をほぼ阻害しなくなります。また黄身に多く含まれるビオチンと白身に多く含まれるアビジンという成分が混ざるとたんぱく質の吸収効率が下がってしまいます。ゆで卵なら黄身と白身が混ざり合わない状態で摂取できるのです。
ゆで卵などを活用しつつ、植物性たんぱく質を含む食材もバランスよくとりながら、無理なくダイエットを進めていきましょう。
◆教えてくれたのは:ヘルスフードサイエンス研究家・大西ひとみさん

9年間、米ロサンゼルスでパーソナルトレーナーとして活動後帰国。トータルダイエットカウンセラーとして7冊の本を出版、ダイエット商品・食品の商品開発の監修などをはじめさまざまなメディアで活動。2017年に自身のギルトフリースイーツブランド「h+diet(エイチプラスダイエット)」(https://h-plusdiet.com/)を立ち上げ、現在は東京・武蔵小山で『h+diet laboratory』をオープン。野菜を使い、甘味料・人工甘味料不使用、グルテンフリーの「栄養学から考えるオーガニックスイーツ」を販売、他社の商品監修などに携わるなどヘルスフードサイエンス研究家としても活動。