体調を崩しやすい季節こそ、「いっぱい食べて栄養をつける」という行動が当たり前でしたが、冷えやむくみについて詳しい医師・石原新菜さんはこの「いっぱい食べる」に対して警鐘を鳴らしています。では実際に、満腹はどんな不調を巻き起こしてしまうのでしょうか。理由を教えてもらいました。
満腹状態=血糖値が高い状態が続くと免疫力が低下!
冬は言うまでもなく寒い季節。防寒などが必須ですが、それでも「冷え」がつきまといます。そんな「冷え」は免疫力や代謝にも影響するそうですが、「いっぱい食べて病気を寄せ付けない」という考え方は間違っていると石原さんは言います。
「現代は好きなものを好きなだけ食べられる環境で、つい満腹まで食べてしまうという人も多いと思います。また、今はなにかと便利な時代になり、現代人は運動量が減っている状況。『3食食べている』と言うと健康的なようで、内容がファストフードだったりすると、カロリーは過多ですし、満腹の状態でいる時間が長くなります。
常に満腹状態が続くと、血糖値が高くなっているので、糖尿病などの生活習慣病のリスクも増加します。そして、そのような状態になると、免疫機能が十分働かずに、免疫力が低下してしまうのです」(石原さん・以下同)
女性は特に満腹に注意、子宮に血液が回らない!?
この満腹状態、特に女性が気をつけたい理由もあるそうです。
「満腹になるまで食べると、消化吸収がすごく大変になります。血液は活動しているところに集められ、その部分が活性化されます。つまり、いっぱい食べると、その食べたものを溶かして、溶かして、という作業になるので、胃腸を働かせるために胃腸に血液が集中してしまいます。
胃腸に血液が集中してしまうということは、女性なら子宮や卵巣に行く血液が減ってしまうということ。血液が回らない時間が多くなると、栄養も酸素も水分も不足して、細胞はきちんと働くことができずに老化します」
「腹八分目」でストップする習慣をつける
昔から「腹八分目に医者いらず」と言われるように、健康の秘訣はやはり「腹八分目」だと石原さんは言います。
「理想的なのは、お腹が空いた状態で食べること。なので、朝食と昼食の間は5時間以上あけ、寝る3時間前までに夕食を終えるようにしましょう。また、1回の食事で満腹になるまで食べるということは、栄養をいっぱい摂ることになり、そうすると老廃物も多く、血液がドロドロになります。つまり、体に負担がかかってしまう行為なのです。腹八分目の感覚としては、『もうちょっと食べたいな』でストップしましょう」
「食べすぎ」は細胞が元気になるチャンスを逃している、という事実
食べすぎていると、体が健康になろうとするチャンスまで逃しているそうです。
「よくテレビなどで見かけるフードファイターの多くは、1000食べて100吸収しているような状態です。胃腸の消化吸収の効率はあまりよくないんです。消化吸収のよし悪しは生まれ持ったものもあります。『1日3食しっかり食べる』が当たり前になっている人も多いと思いますが、これは間違い。1日3食は食べ過ぎだと考えます。
なぜなら、食べ物を消化し、体内に吸収することは、体にとってかなりのハードワークだから。この重労働を乗り切るために胃腸の細胞は血液をたくさん必要とします。食べたあとに眠くなるのは、血液が胃腸に回されてしまって、脳の血流が減ってしまった証拠です。
胃腸にもきちんと休憩時間を与えましょう。空腹の時間は、胃腸に血液を大量に回さなくていいので、血液が酸素や栄養素を体のすみずみまで運び、老廃物を回収できます。つまり、細胞が元気になるためにも空腹の時間が大事なのです」
◆教えてくれたのは:医師・石原新菜さん
イシハラクリニック副院長。父である石原結實氏のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書に『がんばらなくても2週間で-3kg 医者が教える奇跡の16時間断食』(宝島社)などがある。https://www.ninaishihara.com