見ているだけでイライラするときには「実況中継」
夫の洋服が脱ぎっぱなしだったり、使った食器を片付けもせずにテレビを見ていたり、見ているだけでイライラしてしまうときにも対策があります。和田さんは、相手の行動を観察し、心の中で実況中継することをすすめています。
「たとえば、朝、夫が起きてきました。さわやかな朝なのに疲れた顔をしています。『そんなに忙しくもないのに、仕事疲れのような顔をして、かわいそうな人だな』そんなふうに冷めた目で観察してみましょう。心の中で実況中継してみましょう」
実況中継のアナウンサーのように冷静に観察して、言語化していると、自分の怒りがどう膨らんでいくのかも客観視できるそうです。
「こんな見方をしていると、怒りが怒りでなくなってしまうものです。怒りを笑いに変えることすらできる大技だといえます。怒りが収まらないというのは、怒りに振り回されてしまっているからです」
客観視することには、怒りに振り回されて深みにはまってしまうのを防ぐ効果もあるそうです。
「客観的に自分を見ることを、心理学の専門用語で『メタ認知』といいます。『メタ』というのは『高次の』という意味です。つまり、高いところから自分を見ている自分がいるというイメージです。ちょっとむずかしい表現なら『俯瞰』とか『鳥瞰』の視線を持つことです。こういう視線を持てれば、怒りの熱は3秒で引いていきます」
一緒にいる時間が長いから夫婦だからこそ、怒りを抱えるシーンがいろいろとあるはずです。その場その場にあった方法を試してみてください。
◆教えてくれた人:精神科医・和田秀樹さん
わだ・ひでき。精神科医。「和田秀樹こころと体のクリニック」院長。1960年、大阪府生まれ。85年に東京大学医学部を卒業。東京大学医学部附属精神神経科助手、アメリカのカールメニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在は国際医療福祉大学特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師を務める。著書に『ついイラッときても感情的に反応しない方法を一冊にまとめてみた』(アスコム)など。https://hidekiwada.com/