女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第47回は、寧々さんが出会った「桜」について。
* * *
山の家の庭の桜が満開になった。この土地と出会ったとき、私達は桜の木があるのを知らなかった。たくさんの雑草に覆われていた雑木林だったから、こんなに大きい桜があるなんて思ってもみなかった。
一生懸命雑草を取り、野薔薇と格闘し、草刈りをしていったらいきなり幹が10本にわかれている大きな木に出会った。大きいなあ~と思っていたが、この時は季節が秋だったので、この木が桜だと気づかなかった。
季節は春になり、本当に驚いた。その存在感の大きさ、圧倒的な美しさに。幹が太いのでおそらく樹齢300年~500年くらいじゃないかということだ。すごい! 300年~500年も生きているんだ。御神木のようだ。桜の木の近くにいくと、何だか元気をもらえるような気がする。いつまででも眺めていられる。
鳥の声、さわさわと気持ちの良い風。幸せって、こういう事だなと意味もなく思う。自然と色々な事に感謝したくなる。
高齢の義父と母はあまり遠出したがらない…
義父や母にもこの満開の桜を見て欲しいなあ~と、夫と私は作戦を練った。なにしろ高齢だし、あまり遠出したがらない。義父は温泉好きだから、「近くに何ヶ所も温泉あるよ!」と言ってみよう。母も温泉も好きだけど、彼女は「蕗のとう」とか「たらの芽」とかを摘むのが好きだから、春だから「庭にたくさん生えてるよ!」と言って連れ出してみたらどうだろうかとあれやこれやと二人で作戦を練る。
あまり早くに言ってしまうと、今はいいや~と言われそうだし、さて、何日くらい前に言うのがいいのだろうかと悩む。早過ぎてもいけないし、遅過ぎてもいけない。うう~ん悩ましい。結果6日前くらいはどうだろうかという事になった。
成功しました!
二人とも無事に一緒に行く事が出来ました。「おお~すごいなあ~」と言い合っている義父と母を見ながら、夫と私は本当に良かったと思った。庭に椅子を出して、ず~っと楽しそうに眺めている。毎年一緒に見たいなあと、心から思った。
今年も秋になったら野薔薇や蔓や蔦が、桜の木に巻きつかないように、頑張って草刈りしようと静かに心に誓った。もちろん息子も一緒に見られたらよかったのですが、社会人になり忙しそうなので諦めました。いつか五人一緒に見られたら最高に嬉しい。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。出演映画『Dr.コトー診療所現在』が公開中。