
顔の「たるみ」は、実年齢よりも老けた印象を与える原因のひとつです。「加齢による変化はしかたがない」とあきらめてしまいがちですが、実は、顔のたるみの原因は加齢だけでなく、生活習慣の影響も大きいといわれています。「そのため、何歳からでも改善が期待できます」と語る漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんに、顔のたるみの原因や若々しいフェイスラインを保つためのセルフケア、改善のためによいとされる食材や漢方薬について教えてもらいました。
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老け顔の大きな原因は「たるみ」
老け顔には、シワやシミ、くすみといったいくつかの原因があります。
なかでも、顔の印象を大きく左右するのが、たるみです。目元のたるみは目のまわりを暗く見せ、口元のたるみは口角が下がっているように見せます。また、頬のたるみはほうれい線が目立ち、より老けた印象を与えます。

「たるみ」は加齢だけが原因ではない
顔のたるみが起こるのは、肌の弾力を支えている真皮層のコラーゲン・ヒアルロン酸の量や質の低下が原因のひとつといわれています。これは、加齢だけでなく、食生活の乱れや血行不良による栄養不足、紫外線やストレスなどによって発生した活性酸素によるダメージで起こります。
また、顔の筋肉が衰え、肌全体を支えるのが難しくなると、たるみが生じます。表情が乏しかったり、咀嚼(そしゃく)の少ない柔らかい食べ物を中心とした食生活をしたりしていると筋肉が衰えやすくなり、たるみを加速させてしまいます。
血行不良によるむくみも、肌に老廃物がたまりやすくなり、たるみの原因になります。
若々しいフェイスラインを保つ秘訣
生活習慣を見直し、肌や筋肉の機能を回復することで、老化のスピードを遅らせて若々しく見せることは可能です。今すぐできる、若々しいフェイスラインを保つコツを紹介します。
スキンケアで血行促進
スキンケアは、適度に圧力を加えマッサージをするように行い、副交感神経が活性化するようにリラックスを心がけてください。
オイルやクリームを顔全体になじませ、顎先・口角の横・小鼻の横からそれぞれこめかみに向かって、らせんを描くように頬を引き上げます。頬はたるみやすいので、痛くない程度にやや力を入れるのがポイントです。筋肉のコリがほぐれると、血行やリンパの流れが促進され、むくみの防止になります。

また、「心地よい」と感じるだけで、自律神経の副交感神経が活性化します。毛細血管を広げる働きがある副交感神経が活性化すると、肌のすみずみまで血液が届き、肌にたまった老廃物が回収されます。
咀嚼筋を鍛える
特別なエクササイズをしなくても、食事中の咀嚼を増やすだけで、側頭筋、表情筋、斜角筋、胸鎖乳突筋といった首から上の筋肉を鍛えることができます。
ポイントは、咀嚼筋の1つである「咬筋(こうきん)」をしっかりと使うことです。奥歯を噛みしめたときに顎の外側で動くのが咬筋です。耳の下に手を当てながら奥歯を噛みしめると動いているのがわかるでしょう。

その咬筋を正しく使うことで、それに連動している顔や頭、首の筋肉に刺激を与えます。咬筋を正しく使うには、よい姿勢を心がけ、片方の歯だけで咀嚼せず、両方の歯を均等に使うことが大切です。
咀嚼回数の目標を決めたり、ひと口ごとに箸を置いたりして早食いを防止するなど、よく噛むための工夫をしてみましょう。
顔のたるみ改善に役立つ春の食材はサワラ
顔のたるみにおすすめの食材は、3〜5月に獲れ、柔らかく淡白な味わいが特徴の「サワラ」です。

サワラに豊富に含まれるたんぱく質は真皮や筋肉の材料になるため、肌のハリには欠かせません。さらに、サワラに含まれるDHAには、血管の弾力や赤血球の柔軟を高めて毛細血管の血流を促進する働きがあり、肌のすみずみに栄養を届ける手助けをします。
厚生労働省は、18歳以上の女性のDHA摂取目標量を1日あたり1g以上としています(厚生労働省「脂質」(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf)。サワラの切り身1切れ(90g)に含まれるDHAは1g(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)のため、1切れ食べることで1日の目標量をまかなえます。

DHAは水や油に流れ出やすい性質があるため、刺身で食べるのが望ましいですが、加熱調理をする場合は、焼き物がおすすめです。煮物や汁物にする場合は薄味にして、DHAが流れ出た煮汁ごと食べるようにするといいでしょう。
美しさ・若さを保つには漢方薬で原因にアプローチ
顔のたるみの原因は、血行不良や乾燥、ホルモンバランスの乱れ、紫外線による肌へのダメージなどが考えられています。
そんなたるみの原因に漢方薬でアプローチする場合、血行をよくして肌に栄養をいきわたらせる、肌の新陳代謝をよくして紫外線によるダメージを回復する、水分の循環をよくして肌に潤いを与える、ホルモンバランスの乱れを整えるといった働きのものを体質に合わせて選びます。

漢方薬は医薬品としての効果が認められており、美容皮膚科では自然由来の治療薬としても処方されています。たるみが起こる原因を根本から改善することは、肌の健康にもつながるので、シミやシワなどの改善も期待できるでしょう。
たるみに悩む人におすすめの漢方薬2つ
・桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
水分代謝を促すことで、肌の表面に滞った老廃物の排出を促す漢方薬です。肩こり、頭重、めまい、冷えのぼせなどの症状がある人に用います。
・当帰飲子(とうきいんし)
「血(けつ)」(栄養)を補って、肌に潤いを与える漢方薬です。冷えを感じている人に用います。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。