女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第49回は、寧々さんが行う「畑作業」について。
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山の家の庭に小さな畑を作った。どうしたらいいのかさっぱりわからず、農業を営むお隣さんに教えていただく。まず土壌改良しなければいけないみたいだ。まず石灰を撒いて土をアルカリ性にするらしい。
知らなかった~。無知な私は、そのまま野菜の種を蒔けばいいと思っていた。
近くのホームセンターに行き、石灰を買おうと思ったのだが、種類が多すぎてどれを選んでいいかさっぱりわからない。お店の方の説明を聞くと、白石灰は熱を持つので、撒いてからしばらくはそのままにするらしい。黒石灰はどうやら数日で種とかを撒いても大丈夫だそうだ。悩んで黒石灰を一つ買った。小さい畑なのでそれぐらいで大丈夫らしい。
家に帰り、黒石灰を撒こうと思ったが、お隣さんにちょっと聞いてみようと思った。私が買って来た石灰を見て「これ一つ~!」と笑っていた。全然足りないらしい。お隣さんは畑のプロだ!
「すぐにもうちょっと買って来ます!」と言うと、残ってるのがあるからそれを使えばいいと言ってくださる。いつもながら、本当に優しい。
畑にした場所は動物達の通り道だった…
お言葉に甘えて、使わせていただく。小型の手で押す耕運機も持って来てくださり、土を掘り起こしてくださる。私は慌てて「やります! やります!」と言い、使い方を教わってやってみる。おお~すごい! 手で押して耕すのは大変だけど、力強く耕してくれる。感動だ! しかし、お隣さんがやってくださった所は綺麗に真っ直ぐの道が出来ているが、私がやったところは斜めになったりして線がヨレヨレしている。微妙にバックギアに入れるのと、方向を変える時が難しい。車のマニュアル運転を思い出す。
力加減も絶妙で、「もうちょっと力をいれて~」と教わる。そして、肥料も撒く。あとは、一ヶ月か二ヶ月くらいしたら種を蒔いていいらしい。楽しみだ~。何を植えようかとワクワクする。
ただ一つ、心配な事がある。どうやら私が畑にした場所は、動物達の通り道になっているようで、畑に綺麗に足跡がついていた。しかも、日を追うごとにどんどん増えているような気がする。そういえば、近くの方達は、庭の畑を柵で囲んでいるなあ~じゃがいもとか、土の中にできる物なら大丈夫なのでは!と思ったら、「綺麗に掘り起こして食べていくわよ~」とお隣の奥さんが言っていた。
おそるべし、土の中を掘り起こすなんて…。「美味しい物ちゃんと知ってるのね~」と奥さんは優しい顔で笑っていた。とにかく、やってみよう! 楽しみだ。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。出演映画『Dr.コトー診療所現在』が公開中。