健康・医療

「内臓の冷え」は不調の原因に 「サラダ」「野菜ジュース」「朝ヨーグルト」は実はNG食習慣だった?

サラダを食べる女性
体のためにやっていることが実はNG習慣の可能性も…(Ph/photoAC)
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冷えについて約30年間研究し、『内臓を温めるという提案 代謝アップ×免疫力アップ× 血流アップ』(アスコム、監修:内科医・井上宏一さん)を上梓した、理学博士で全国冷え症研究所の所長・山口勝利さんは、体にいいと思ってやっていることが実は内臓の温度を下げ、不調を招く原因になっている可能性があると指摘します。そこで、勘違いしている人が多い、冷えにつながる食習慣について紹介します。

生野菜中心の食生活より温めた野菜、体を温める野菜を

山口さんによると、内臓が冷えると、体を健康に保つ司令塔の役割を担っている自律神経に負担がかかり、乱れやすくなるそうです。さらに、温度の低下によって、内臓そのものの動きも鈍くなって代謝が落ち、免疫細胞の働きが弱ってしまい、痩せにくくなったり、疲れが抜けにくくなったりといったことが起こるといいます。では、どのような食習慣が実はNGなのでしょうか?

最低限の必要な栄養素を摂って健康的に痩せたいと思い、カロリーの低いサラダだけで食事を済ませている人も多いでしょう。これは内臓を温めるという観点でいえばNGなのだそうです。

体を冷やす野菜ばかりだと、痩せにくい体質に

「トマトやレタス、きゅうり、なす、南国でとれる野菜や果物など、夏が旬だったり、暑いところで収穫されるものは、水分が多く体を冷やす作用があります。少し食べる程度なら問題ありませんが、摂りすぎると、内臓温度をどんどん下げることになります。

サラダ
体を冷やす野菜に要注意!(Ph/photoAC)
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さらに、過度な食事制限をしてしまうと、それがストレスになり、自律神経が乱れてしまいます。こうしてさらなる内臓温度の低下を招くのです」(山口さん・以下同)

さまざまなダイエットを試しても効果がなく、なにかいいダイエットはないかと悩んでいる人にこそ、内臓が冷えていて、基礎代謝が低いケースが多く見受けられるそうです。

痩せない悩みには根菜類で内臓温度アップ

代謝が悪くなり、痩せづらくなるという負のスパイラルから抜け出したいのなら、内臓を温める食べ方をするべきなのだと山口さんは話します。

「決して野菜を食べるなと言っているわけではなく、体を冷やす野菜や果物を食べるときは、せめて温めてから食べてほしいということです。極端に食べすぎることも控えましょう。

根菜そば
体を温める野菜を選んで(Ph/photoAC)
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また、野菜を食べるときは、体を温めるといわれているものを積極的に選ぶといいですよ。地下にできるにんじん、ごぼう、れんこん、いも類などの根菜類には、体を温める力が備わっています」

ヨーグルトは体温が低い朝を避け、昼か夜に

腸内環境を整える食材として注目されるヨーグルト。1日が始まる朝に食べて、体調を整えているという人も多いでしょう。しかし、この朝のヨーグルトが、内臓を冷やす危険性があるのだそうです。

ヨーグルトは、体を冷やす作用があるといわれる牛乳が原材料。ヨーグルトを食べると腸内の善玉菌が増えるといわれているのは事実ですが、食べ過ぎは注意が必要で、特に食べるタイミングは気をつけるべきだそうです。

ヨーグルトとスプーン
ヨーグルトは食べるタイミングがカギ(Ph/photoAC)
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「朝にヨーグルトを食べるのは、タイミングがNGです。朝は1日のうちで一番体温が低い時間帯です。体温だけでなく内臓も冷えている時間帯に、ヨーグルトを食べてさらに冷やすのはよくありません。

ヨーグルトに含まれる乳酸菌の効果は、昼に食べても、夜に食べても同じ。どうしても朝にヨーグルトを食べたいならば、ヨーグルトを食べたあとに体を温める食べ物や飲み物を摂取して、内臓を冷やさないようにしましょう」

野菜ジュースやスポーツドリンクは適量を

てっとりばやく栄養補給ができるからと、野菜ジュースやスポーツドリンクを重宝しがちな人は要注意。体によいというイメージから、飲みすぎてしまうのはNGなのだそうです。

糖質過多が内臓の冷えを引き起こす

「野菜ジュースの中でもおいしいと感じるものには甘い味わいが多いですが、本当に野菜をしぼっただけでは、あんなに甘いはずがありません。飲みやすさを考えて、多くの市販の野菜ジュースやスポーツドリンクには果汁が入っています。この果汁の中にたくさんあるのが糖分です」

野菜ジュースを飲む人
野菜ジュースの糖分に注意(Ph/photoAC)
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果物で食物繊維や酵素なども一緒に摂れば、糖質の吸収を穏やかにしてくれますが、食物繊維が少ないジュースの場合は糖分がすぐに体に吸収されてしまうのだそうです。

糖分を摂りすぎると、血液がドロドロになって、熱が運ばれにくくなります。さらに、冷たいものを大量に飲むと、内臓を冷やすことにもつながってしまいます。

大量摂取によって起こった高熱の例

「とある格闘家の男性が、高熱が下がらないと相談に来たことがありました。体温は高いのに、内臓の温度を測ってみたら、35℃台前半。健康な人は、内臓の温度(深部体温)が体の表面温度より1〜2℃高く、37.2〜38℃程度が理想ですから、2℃近く温度が低いのです。

緑と赤の野菜ジュース
野菜ジュースやスポーツドリンクの飲み過ぎで内臓温度が低下した例も(Ph/photoAC)
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男性は、野菜ジュースやスポーツドリンクをそれぞれ毎日1リットルは飲んでいました。ただちにやめてもらい、食生活を変えたところ、高熱が下がり、逆に内臓温度は上がっていったのです。内臓温度が下がり免疫力が低下したことで、熱が下がらなくなっていたことがわかりました」

このように、体によいからと野菜ジュースやスポーツドリンクをたくさん摂取するのは、内臓温度が下がり、体調不良を招く危険性があります。飲む量はほどほどにしましょう。

◆教えてくれたのは:理学博士、柔道整復師、鍼灸師、全国冷え症研究所所長・山口勝利さん

山口勝利さん
理学博士、柔道整復師、鍼灸師、全国冷え症研究所所長の山口勝利さん
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冷えを改善しながらやせる形状記憶ボディメイクサロン・シェイプロック銀座代表。30歳のときに構えた鍼灸の治療院で多くの患者を施術するなかで、体の冷えがあらゆる不調の原因となっていることに気づき、「全国冷え症研究所」を1998年に開所。今では、全国に400の分室を持ち、冷えに関する6万人のデータを持つ。「冷え」の怖さ、対処法を広めるべく、TVや雑誌などにも多数出演し、「冷え症」治療の第一人者として注目されている。https://www.ogino-hs.com/hiesyou/index.html

◆内科医・井上宏一さん

日本内科学会認定内科医、日本抗加齢医学会専門医、南砂町おだやかクリニック院長。2000年3月順天堂大学医学部卒業後は、一つの臓器だけを専門にするのではなく、人間の体全体を診ることができる医師を目標に、小児科医、内科医として、さまざまな病院で研さんを積む。現在、南砂町おだやかクリニック院長を務め「『健康=幸せ』の実現をサポートする医療」を掲げ、西洋医学にとらわれず、代替医療も取り入れた総合医療を目指している。

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